ファーストなんとか
「先輩ってチーズケーキ食べれますよね?」
「あぁ一応な」
百合子の言うチーズケーキが普通のものであれば問題なく食べることができる。
だが百合子にそんな普通が作れるわけもない。
俺は椅子に座りその普通のチーズケーキを待っている。
出されたお茶はすでに飲み干してしまい、緊張と不安を紛らすことさえできない。
あぁそうそう、このアパートの事。外見はちょっとぼろいんだが中は一変して普通に綺麗だし広い。2人で暮らしても問題ないレベルだ。別にここで暮らそうとか思ってないからなっ!勘違いするなよ!と暇なのでそんなことを説明しておく。誰に説明しているのやら・・・。
キッチンの音が響いている。あぁ間違いなく毒物になる。だって音がおかしいもん!
カンカンとかトントンじゃなくてバンバンとかガンガンいってるもん!絶対料理してる音じゃない!爆弾でも作ってるだろ!
「先輩もうすぐ出来ますから準備して下さいね!」
「あぁ」
百合子の言う準備は食べる準備だろうが俺にとっての準備は心の準備だ。
俺は深呼吸を何回かして、心を落ち着かせた。
よしっこい!俺の準備は万端だ!
「はい、できました!」
そう言って俺の前にチーズケーキが置かれた。
いつも通り見た目は問題ない。あとは味なのだが、一口目を口に入れる勇気がない。準備はしてもいざ目の前にくると手が勝手に躊躇してしまう。
例えるならお化け屋敷的なアレである。この先お化けがいるの分かってて歩かなくてはいけないアレである。
まずいのが分かっててどうして食べなきゃいけないんだ!?
だが百合子は早く食べてくれ!と言わんばかりの顔だった。
全くしょうがないな。俺は一口目を口にした・・・。
その後のことは聞かないでほしい。というより皆さんの想像に任せたい。
料理ができると口にした百合子のチーズケーキはもうアレだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
目を覚ますと頭の下に柔らかい感触がした。これは何だろう・・・。
寝返りをうとうとするが柔らかい壁にぶつかる。
あぁいい匂いだ。女の子の匂い。百合子の・・・ってこれ膝枕じゃねぇか!
すぐさま上体を起こし、振り返らずに距離を取る。
「先輩どうでした?私のひ・ざ・ま・く・ら!」
「・・・」
実際結構いい寝心地だったがそれを言ったら絶対調子に乗るからやめておく。
それにめっちゃ恥ずかしい。よく考えたら寝返りをうった時、百合子の体の方に・・・ってやめだやめ!考えるだけで気がもたない。
「先輩?」
「なんだよ」
俺はゆっくり振り返る。そこには予想通り正座をした百合子の姿があった。
「先輩顔赤くなってますよ。可愛いですね」
「なっ!べ、別に恥ずかしいとかそういうことじゃないからな!」
「じゃあどうして真っ赤になってるんですか?」
「そ、それは・・・だ、大体な年下の女の子になんかされたって俺はときめかないからな!」
「本当ですか?」
「本当だ」
「先輩、年下はお嫌いなんですか?」
あーやめてくれ!そんな可愛い顔しながら俺を誘惑しないでくれ!
別に年下が嫌いとかじゃないけどお前はダメなんだよ!その可愛さが反則なんだ!
「あぁ年下はダメだな」
「そうですか」
「あぁ」
百合子はゆっくりと立ち上がり、後ろを向いた。
あぁやっと諦めたか。これで少しは楽になりそうだな。
なんて考えている暇もなく、後ろを向いたはずの百合子は反転し俺に向かってダイブした。
「痛ぇ」
衝撃で床に体をぶつけた。結構痛い。
だが目の前にいる百合子が体の痛みを緩和させた。それくらいこの女は可愛いのだ!しかも俺押し倒されてるし!!こんな状況じゃ痛みも感じないわ!
「先輩油断しましたね!」
「そ、そうかもな」
「どうします先輩?」
「ど、どうって何が?」
「そりゃ決まってるじゃないですか。私は一人暮らしです。誰にも邪魔はされませんよ」
「お前、何言って・・・」
「こういうことです」
俺の言葉を遮るように唇に柔らかい感触を感じた。ついでにやけに百合子の顔が近い。自分が何をされているのか、それに気づくのに5秒ほどかかった。
そして混乱していた頭はこれがキスだと判断した。
すぐさま百合子を振り払い距離を取る。といきたいところだがこの女想像以上に力が強い。振り払うこともできなかった。
そしてゆっくりと柔らかい感触が消えていく。
「先輩、どうですか?」
「お、お前な!!」
「私のファーストキス先輩にあげました」
「なっ!」
「続きしますか?」
「す、するわけないだろ!バカ!」
「冗談ですよ」
百合子はすごく嬉しそうな笑顔でそう言った。この女の場合は冗談に聞こえないんだよ!それに今、現に俺のファ、ファースト・・・を勝手に奪いやがったし!
「続きがしたかったらいつでも言ってくださいね!私はいつでもオッケーですから」
「ふ、ふざけんな!」
「冗談ですって」
「なっ!」
俺の心は園田百合子に完全に弄ばれた。そのせいで体も心もクタクタだ。
「か、帰る!」
そう言ってダッシュで百合子のアパートを出た。そしてとにかく走った。さっきのことを忘れようと、今日のことはなかったことにしようと。
だが俺の唇にはあの柔らかい感触がしっかりと残っていた。
園田百合子やっぱりお前は危険な、いや超危険な女だ!!
あいつとはもう関わらない!そう心で決意した。
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