チーズケーキ
全くいつになったら先輩は私を見てくれるのでしょうか。
こんなに可愛い後輩に愛されているのに、本当に酷い人です。
でも私は諦めませんからね!佐倉さんも鮫島さんも他の女も蹴散らして先輩の一番になってみせますから!
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「先輩、先輩、先輩!大変です!」
「なんだよ、騒がしいな」
「本当に大変なんですって!」
「わかったから落ち着けって」
百合子は1度、2度深呼吸をし落ち着きを取り戻そうとする。
「でどうしたんだ?」
「それがですね、私料理できるようになったんですよ!」
「おーそれは大変だな」
「そうですよね!」
「あぁ大変だ」
あの超絶まずい料理を何度も作ってきた百合子が、料理ができるようになったなんて言っているのだ。それは間違いなく大変なことだ。その料理も百合子の頭も・・・。
「それでどんな料理が作れるようになったんだ?」
「なんだと思います?」
「カップ麺とか?」
「先輩、私をバカにしすぎです!カップ麺くらいは前から作れます!」
「おーすげーな」
「ムカッ!もう先輩には食べさせてあげませんからね!」
ムカッ!って口にしていうものなのか?それに百合子の料理を食べなくて済むのならそれで構わない。いくら上手くなったとはいっても百合子の料理だ。そんなリスクをおかしてまで食べる代物ではない。
「それでなんの料理だと思います?」
「それ、まだ続いてたのね」
「当然です」
「めんどくさいな」
「何言ってるんですか!当てるまで帰れませんからね!」
「いや、それはきつい」
「なら早く当ててください!」
「じゃあカレー」
「違います」
「もうわからんな」
「なんですかもう諦めるんですか、この根性なし!」
「はいはい、俺は根性なしですよ」
その通り俺は根性なしである。まぁどちらかというとではあるが、面倒ごとは嫌いだし人と関わるのも目立つのもめんどくさい。つまり百合子との関わりは俺にとって最悪なのだ。
「もういいです。 ケーキ・・・」
「ん!?」
「チーズケーキ作れるようになりました」
「腐ってないよな?」
「そんなわけないじゃないですか!」
「そっか、なら良かった」
「何が良かったのかよくわかりませんが、今日の放課後空いてますよね?」
なに俺が暇人みたいなことを言ってんだ!俺だってやることは色々と・・・意外とないな。
「空いてるよ」
「ならいつも通り正門で待ってますね!」
「はいはい」
百合子がなにを企んでいるのかこの時の俺は気づきもしなかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「先輩やっと来ましたか」
だからなんでお前はいつもそんなに早いんだよ!やっぱり授業サボってるな、間違いなくそうだ。先生に訴えてやる!
「それじゃ行きますよ!」
「行くってどこに?」
「決まってるじゃないですか!私の家ですよ!」
「は!!?なんでお前の家に行くんだよ!?」
「なぜってそりゃチーズケーキを食べてもらうためです」
「あーそういうこと」
「先輩、もしかして今エッチな想像とかしました?」
「そ、そんなわけないだろ!」
「焦るところが怪しいです」
「別に焦ってないし!」
「そうですか」
「あぁそうだ!」
百合子の家に行けることをラッキーだと思ってしまった俺を許してください神様!
俺も男だからそういう想像とかしちゃうし、しかも相手が女優となると余計に意識してしまう。
それに色々と心配でしょうがない。
これから家に向かうわけだが、俺が理性を保っていられるかどうか、そして百合子のチーズケーキを食べて生きて帰ってこれるかどうか。この2つが俺にとってめちゃめちゃ心配だ。特に後の方。
「なに考え事してるんですか!行きますよ!」
「お、おう」
そして百合子につれられ俺は歩き出す。いつもと違う道を百合子と2人で歩いていく。
緊張と不安と不安でいっぱいの俺の胸は今にも張り裂けそうだった。
「先輩着きましたよ!」
歩くこと10分弱。ようやく着いたようだ。
ずっと下を向いていた俺は顔を上げて驚いた。
「お前、もしかして一人暮らしか?」
「はい、そうですよ!」
「やっぱり・・・」
そこは俺の家の近くにあるアパート。
格安でよく噂になっていて年季が入っている。
まさか一人暮らしだとは思っていなかった。それに俺の家めちゃめちゃ近いし。
「先輩はやくー!」
すでにドアの前で俺を待つ百合子は、なぜか嬉しそうに笑い、手を振ってくるのであった。




