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自称インキャぼっちは悩みの数だけ彼女がいるようです  作者: 史本 会
自称インキャは後輩女優に翻弄されているようです
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本気

お待たせしました、久しぶりの更新です。


「先輩、私やっぱり先輩のこと好きです!」



目の前の彼女はそう言った。ずっと彼女の気持ちには気づいていたけど、改めて口に出されると恥ずかしい。



いろりが入院して寂しそうにしていた俺を、励ますようにずっとそばにいてくれた。そんな彼女は今、俺に告白をしている。



——————————————————




まさかの弁当から2日、最近は登校も下校も百合子と一緒だ。




「先輩、おはようございます!」



最近では聞きなれたこの声が、俺の学校行きたくない欲を高めていく。



「おはよう」




百合子は俺の横を並び、まるで彼女にでもなったかのような距離感で話を始める。


話の途中、何度も距離を取ろうとするがその度に百合子は体を寄せ、凄まじいハイプレスを見せる。



「先輩、やっぱり今日も元気ないですね」


「えっ、いやそんなことはないぞ」


「そんな強がっても私には分かりますよ!佐倉さんがいなくなってから先輩、ずっと元気ないじゃないですか!」


「い、いやそれは・・・」



そう、俺は元気がないわけじゃない。いろりが病室で言ったあの言葉が忘れられないだけ。あんな告白されたら誰だって考えるし、悩む。


俺はあいつとどうなりたいんだ・・・。




「先輩!また佐倉さんのこと考えましたよね!?全く、まだ私の彼氏なんですからね、忘れないでください!」


「ご、ごめん」



ちなみに彼氏というのは仮である。前の依頼の件で仮の彼氏になった俺は、現在もそれを続けている。




「なぁ百合子、いつまで仮の彼氏続けるんだ?」


「先輩、仮じゃなくて本物がいいんですか?私はいいですけど!」


「はいはい、そういうことじゃなくて、いつになったらこの依頼取り消すんだってこと」



百合子の本音を冗談として流す。百合子の気持ちは知っている。だからあえて距離を取ろうとしているのだが・・・。



百合子はムッとした顔でこちらを向いて、「バカ」と一言呟いた。




学校につけばもちろん学年が違うわけでクラスも違う。だから百合子と話すことはあまりない。それに百合子がいなくても隣には鮫島さんがいる!今の俺にはそれだけで十分だった。



「あら、後輩くん今日も元気ないようだけど、最近何かあったのかしら?」



唐突にそう尋ねてきたのは淵野先輩。ってか俺そんなに元気ないように見えるの!?



「い、いや元気はありますって」


「それじゃあ悩み事かしら?」


「あぁ、まぁそんな感じです」


「そう」



先輩であって先輩ではないこの女本当に鋭い。


感のいい留年生は嫌いだよ!




「それで、どんな悩みなのかしら、今は部活もなくて暇だから、少しくらいは相談してあげても良いのだけれど」




先輩のこの優しい言葉、本来なら甘えてもいいのかもしれない。だがよく考えて欲しい。このドSな先輩がこんな優しいわけがない。きっと裏がある。



「いえ、別に大丈夫ですよ、淵野先輩に相談するようなことでもないですし」


「なるほどそういうことね、後輩くんは誰かに告白したけど振られてしまったと、それでムカついた後輩くんはその相手をレ◯プしてしまった。ということね」


「いや今の俺の返事をどう解釈したらそうなるんですかね!」


「あら、違うの?」


「違います!」


「そう、つまらないわね」


「別に面白さ求めてません!」



この先輩の相手をするのはなかなかめんどくさい。でも久し振りにこんなツッコミを入れて、少しだけ気持ちが楽になった気がする。



そして淵野先輩は少し微笑んで自分の席に戻っていく。

まさかこの展開を狙ってわざとあんな事を?・・・そんなわけないか、俺の考えすぎだな。



「横田さん、私も相談とかのりますから遠慮とかしないでくださいね!」


「う、うんありがと!」



あぁ泣きたい、俺にこんな美少女で優しい彼女が・・・彼女ではないけど友達がいるなんて!





昼休み、俺の新たな日課、チャイムがなるとすぐに廊下に出る。そしていつもそこには百合子がいる。



なんで俺より先にいるんだよ!どう考えてもこいつ授業受けてないだろ!



「先輩、今日は卵焼きご飯作ってきました!どうぞ!」



そう言いながら、毒物を俺に渡す。あの日以来、毎日のように教室に来ては弁当を渡す。



もちろんこの弁当は毒物なので食べはしない。と言いたいところだが、それを分け合って食べてくれる男友達もいないので食べるしかない。


もしかして最近、元気がないって言われるけどこれのせいなんじゃ!と俺は百合子の弁当に元気抑制剤の効果があると考えた。



「あ、ありがと・・・いただくよ」



まぁでもこの弁当を渡す時の百合子の顔は悪くない。可愛いのは当たり前だが、なんかこう心が落ち着くような感じだ。




でも結局、どんなに百合子が可愛くても毒物は毒物で、弁当を食べるのに昼休みを丸々使ってしまう。



「これは、もういろりと同レベだな」



前にいろりが作った朝食を思い出し、懐かしさを覚える。あの時は食べなかったけど、多分百合子の弁当といい勝負だろうな・・・。


あぁ早く帰って聖奈のご飯が食べたい。

これが今の本音である。





最近の放課後はいろりがいないので部活はなく、すぐに帰宅する。なのにどうしてお前はいつも俺より早く正門にいるんだ!


そこに立っているのは言うまでもなく百合子である。


やっぱりこの女、授業サボってるな!

絶対そうだ、俺は確信した。




「先輩、帰りますよ!」


「はいはい」



しばらく隣を歩いていたが、今日はやけに静かだ。

珍しい。まぁこっちの方が俺的にはいいんだけど。



すると百合子は不意に立ち止まり、通りすがりの公園を指差した。



「ん?行きたいのか?」



百合子は何も言わずに頷く。

ここまで無言だとなんか変な感じだ。



「なら行くか」



そしてゆっくり歩き出す。




公園についても何も話してはこない。

そしてベンチに腰を下ろし、俺は口をひらく。



「なぁ、どうかしたのか?」



そう尋ねると、ギクッと体が反応した。

それからため息を一回こぼし、俺の顔を見る。そして百合子は



「先輩!」


「なんだ?」


「私、先輩に言っておきたいことがあります」


「お、おう」



えーっとこれはあれだな、告白ってやつだな。って待て待てそんな心の準備まだできてないぞ!



「あのですね・・・」


「な、なんだ?」


「私、実は料理苦手なんです!」


「は、はぁ」



あれ!?なんか思ってたのと違う!

ってかそんなこととっくに知ってるし、わざわざ公園に来て言うことでもないだろ!



「ごめんなさい、ずっと黙ってました」


「へーソウナノカ」


「なぜそんな棒読み」


「だって知ってたし」


「えっ!?」


「だってお前の弁当、なかなかあれだったからな」



これが俺の本音、ちょっとオブラートに包んだが百合子には伝わっているはず。


その予想は的中し、百合子はスッと立ち上がってから手を挙げた。


えっ!?なんで俺が叩かれるの!?



パシッ!


叩かれた音はしたのだが、俺の頬は痛みを感じていない。


そっと目を開ける。すると百合子は自分の頬を叩いていた。



「お、おい、どうしたんだよ」


「いえ、私最近先輩に甘え過ぎていたので、ちょっとカツを入れようと思いまして」


「そ、そうか」


「だから先輩、私明日から、全力で先輩にアプローチしますね!絶対先輩を落としてみせます!」


「え、あぁ頑張って下さい・・・」



そうして百合子は俺に満面の笑みを向ける。

夕日に照らされた彼女の顔は、とても美しく、ちょっと切ない気持ちにさせる。そんな表情だった。




そしてこの日を境に、百合子の本気のアプローチが幕を開けた。




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