佐倉いろり
更新遅くなりました。
「おい、嘘だろ・・・そんなわけないよな」
病室に入った俺は、いろりの姿を見て固まった。
言葉も涙も出てこない。もう何がどうなっているのか、俺には理解不能で頭がこんがらがって、そしてようやくいろりがいなくなってしまったことを理解した。
俺はいろりのそばまで行き、そっと腰を下ろす。
「バカやろ!なんで・・・勝手にいなくなってんだよ、お前はいつも勝手で・・・いなくなったら寂しくなるじゃねぇか」
そして、ようやく俺の目から雫がこぼれ落ちた。
拳に力が入る。辛い、悔しい、寂しい、そして悲しい・・・いろんな感情が俺を包み込んで離れない。
「いろり、俺 お前のこと好きだったのかもしれない・・・こんな感情始めてでさ、だから俺・・・」
そう言いながら頭に被せてあった三角巾を取った・・・ん!?
三角巾を取ると、少し涙目のいろりの顔が、そして普通に動いてる!?
「は!?えっ、いろり!?」
「ヨコッチ、ありがと・・・」
えっ!?ちょっと待って、あれ、どういうこと?もしかしてこれって俺の早とちり!?
「ごめんヨコッチ・・・ちょっとからかうつもりだったんだけど、まさかそこまで悲しむとは思わなくて・・・」
いろりは手で目を拭って、少し笑顔で微笑んだ。
なんだろうこの気持ち、なんか無性に腹が立つ!
俺はいろりを呆れた顔で見て、立ち上がった。
「じゃあ帰るわ」
「ちょっと待ってよ!」
いろりの引き止めを完全に無視して、病室から出ようとする。
「待って、お願い・・・」
その声で足を止めた。そんな悲しそうな声を出されたら誰だって足を止める。
「ねぇヨコッチ、私しばらく入院だって・・・言われちゃった」
俺は振り向き、もう一度いろりの顔を見た。
その顔は笑顔で、でも悲しそうだった。
そんな顔を見た俺はもう一度いろりのすぐ隣に座る。
「なぁいろり、大丈夫なのか?」
「え、うん大丈夫だよ」
「そっか・・・」
「・・・」
いろりに儚い笑顔を向けられ、俺は顔をそらした。多分そんな顔を見ているのが辛かったのだろう。
「そ、そういえばあの先輩はどうなったんだ?」
「あ、それは私もイマイチわからない。なにせ私も気を失ってたからね・・・」
「そ、そうなのか!?また頭打ったのか!?」
「ちょ、ちょっとヨコッチ近い!」
気がつくと俺は身を乗り出して、いろりの顔の前まで自分の顔を寄せていた。
「あっ、悪い・・・」
「ううん、別にいいけど・・・たまたまね、男の手が頭に当たって倒れちゃった」
いろりは笑って誤魔化した。あのいろりの行動がどれほど危険なものだったか、自分が一番わかっているはずなのに・・・。
「そっか・・・まぁ良かったよ、お前が無事で」
「・・・うん」
夕日に照らされているせいか、いろりの顔が赤く見える。
するといろりが口を開いた。
「ねぇヨコッチ」
「なんだ?」
「私のこと・・・好き?」
「な、なんだよいきなり」
「え、そのさっき言ってたじゃん、好きかもって・・・」
なっ、そんなとこ聞いてたのか。恥ずかしい!俺は顔をそらし、黙り込む。
「どうなのヨコッチ?」
「・・・」
「ねぇってば!」
これを伝えたら、なんとなく負けな気がする。けど今だから言えることもきっとある。だから俺は・・・
「さぁな、わからん」
「なにそれ!」
いろりの顔を見ると、微笑んでいた。いい笑顔だ。きっとこの笑顔が演技とかではない、いろりの素の笑顔なのだろう。
「ねぇヨコッチ」
「どうした?」
いろりが何かとんでもないことを言いそうな、そんな気がした。
そしてその予想は的中した。
「ヨコッチ、私の彼氏になってよ!」
佐倉いろり篇終了です
次の章もよろしくお願いします




