全力疾走
更新遅くなりすみません。
男は俺を殴った・・・と思ったが、俺は反射的に頭を伏せそれを見事にかわす。
「おい、なに避けてんだよ!」
「いや、反射的に体が動いたといいますか・・・」
誰もが経験したことがあるだろう。例えばドッヂボールしている時に強い奴がボールを投げる。キャッチが苦手な奴は大体しゃがんでかわそうとする。そんな感じで、俺は男の拳をかわしたのだ。
ゆっくり立ち上がる。・・・と今度は逆の手の拳が飛んできた。
今度は回避できず、もろに顔面に直撃した。
「痛ぇぇぇ」
そう言って顔を抑えると手に赤いものがついていた。
なんだこれ!
かなり動揺したが、一旦冷静になり
すぐにこれが鼻血だと理解する。
「ヨコッチ、大丈夫!?」
殴られた反動なのか、いろりと聖奈が影分身しているように見える。
それでもなんとか立ち上がった俺に男は腹パンをくらわせる。
俺は腹を抑えて倒れた。
何故だろうか、こんな状況なのに俺は冷静だった。
ぼやけた目で辺りを見渡すと、すでに多くの人がこちらに注目している。
指をさして警備員を呼んでいる人もいる。これで俺の、俺たちの勝ちかな・・・。
「ちょっと、ヨコッチしっかりして!」
いろりが駆け寄ってきて、何かを言っている。だが意識が朦朧としてその言葉を聞くことはできなかった。
そして、いろりは俺と男の間に立ち、男に何かを言っている。
「いろ、り・・・?」
俺は最後の力でいろりの名前を呼ぶ。だが、その声はいろりには届いていなかった。
話が終わったのか、男は笑みを浮かべこちらに寄ってくる。そして間に立っていた、いろりを突き飛ばした。
そして俺は力つき意識を失った。
目を覚ますと、いつも感じないベットの感触だった。
「ここは・・・?」
すると、俺の視界に聖奈が現れた。
「健二にい、よかったです。本当に良かった」
聖奈は涙を流していた。
俺はゆっくり起き上がる。まだ状況が全くつかめていない。
戸惑っている俺を見て聖奈がこう言った。
「健二にいのバカ!あんな危ない男に戦いを挑んで、しかも負けて勝手に倒れて・・・本当にバカです!」
泣きながらそう言った聖奈を見て、ようやく思い出した。
そうか、俺は男に殴られ、それで・・・。
「聖奈、いろりは!?いろりは無事なのか!?」
そう、俺の最後の記憶ではいろりはあの男に突き飛ばされたはずだ。
「それがですね健二にい・・・
・・・」
「嘘・・・だろ」
「残念ながら事実です」
俺は慌てて起き上がり、いろりの元へ向かおうとする。しかし、聖奈は俺を止めようと必死で俺を抑える。
「聖奈、頼むから行かせてくれ!」
「ダメです、こんな状態の健二にいを動かせるわけにはいきません!」
「頼む、頼むよ聖奈!お願いだから」
「ダメです、私の気持ちも考えてください!」
「聖奈、頼む。本当に頼むよ、一生のお願いってやつだ」
俺は泣きながら頼んだ。聖奈に泣きながら頼む日がくるとは思ってもいなかったが、この時は我を忘れていたのだろう。頭の中はいろりのことでいっぱいだった。
「ずるいです、健二にい・・・わかりました。なら、今度また付き合ってもらいますからね!」
「聖奈、ありがとう・・・」
俺は聖奈の両肩を掴み、おでこにキスをした。
「け、健二にい!?な、何をしてるんですか!?」
「いつものお礼だよ・・・」
俺は聖奈に笑顔を向けた。
「健二にい、やっぱりずるいです・・・ほら、早く行ってあげてください。でも無理はしないで下さいね!絶対ですよ」
「あぁ、わかってるよ。それに、隣の病院に行くだけなんだから、そんなに心配しなくても大丈夫だよ」
「まぁそうですけど・・・」
そうして俺は準備を済ませ病室から出た。
「健二にい、お気をつけて!」
「あぁ、ありがとう聖奈」
そして俺は走った。頭もまだ痛いし、腹も痛い。それにまだ少しクラクラもする。だが、急いで行かなきゃ!いろりが・・・。
慌てていた俺は、病院を出てすぐ、誰かとぶつかった。
「痛っ!」
「あっ!ごめん大丈夫?」
見ると、前にも廊下でぶつかったことがあるあの少女だった。
「あ、君は・・・」
「お久しぶりです先輩・・・」
先輩ということはこの子は1年生?前にも思ったのだが、どう見ても高校生には見えない。外見は間違いなく中学生である。まぁ小学生には見えないけど・・・。ってそうだ今急いでるんだ!
「そうだ、ごめん今急いでるから、また今度ちゃんと謝るから!」
「せ、先輩!?」
呼びかけてきた少女に手を振り、走った。とにかく1秒でも速く、病院につくために。
そして走ること、10分ほどで目的の病院に着いた。ここは前にも来たことがある。いろりが事故で倒れた時の病院だ。
受付に、いろりの部屋を尋ねる。
「あの佐倉、佐倉いろりの部屋はどこですか!?」
受付のナース、かなり可愛くてしかもいい体つきである。いつもならそんなことを考えるのだが、そんな余裕は今の俺には無かった。
「えっ、あ、はい305号室ですけど、お見舞いで・・・あ、ちょっと!」
「そうですか、分かりました」
受付の言葉を最後まで聞かずに、そこからいろりの部屋まで、また走り出した。
俺の体はもう限界だった。もう少しだけ、もう少しだけ頑張ってくれ俺の体!
病院で走っているからだろう。周りの視線が痛い。でも今はそんなことを考えている場合ではない。そして、部屋を探し305号室を見つけた。
「あった!ここだ」
そして名前を確認し、佐倉いろりの部屋だということを確信する。
そしてドアを開け・・・それを見て俺は絶望した。
「いろり・・・嘘だよな」
そこには、ベットで横になっているいろりが、そしてその頭には三角巾が被せられていた。
佐倉いろり篇、ラストスパートです。
この小説はまだまだ続きます。これからもよろしくお願いします、




