不運な再開
食事を済ませてから、1時間が過ぎ、俺と聖奈そしていろりはデパートに来ている。
このデパート、前に聖奈と来たことあったっけな。
「ヨコッチ、行くよ!」
「あ、ちょっと待てって」
俺の手を引っ張り、デパートに入る。その後ろから聖奈もついてきている。
「で、いろり何か欲しいものでもあるのか?」
「えっとね、新しい靴が欲しい!」
「靴?、どうしてまた」
「どうして?って、そりゃもうそろそろ体育祭だからに決まってるじゃん!」
「はぁ、そうですか」
体育祭、それはクラス対抗で行なわれる戦争である。みんなが好きな種目を選ぶ中、2人以上でやる競技に手を挙げると
「え、あいつやんのかよ」とか言われて、やりたくもない1人用の競技に無理やり参加させられる・・・まさしく戦争だ。
「どうしたの?なんか死んだ顔してるけど」
「あぁ、色々と思いだしちまってな・・・」
「そっか、ヨコッチってぼっちだったんだもんね、1500m走とかやらされてそうだし・・・」
「な!、どうしてそれを・・・!?」
やはりいろりは、エスパーである。
事実俺は、中学3年の体育祭(運動会)で1500m走をやっている。理由は簡単、ペアになる友達がいないため、複数人で行なわれる競技はできない。そして、不幸なことに俺は少し足が速かった。他にも理由はあると思うが、思い出すと悲しくなるのでやめておく。
「それで、ヨコッチどうだったの?」
「どうって、なにが?」
「だから順位とかさ・・・色々と」
「・・・はぁそうだな、順位は確か全15人中の7位だったな」
「微妙」
「聞いといて文句言うな!」
全く俺をバカにしやがって、お前もぼっちだったんだろ!ならもっとぼっちを大切に扱え!それに一応半分よりも上の順位だからな!
「他には何かないの?その時の話」
「あるぞ!」
「なになに!?」
いろりは積極的に食いついてきた。狙い通りだ、これで俺の武勇伝、いやぼっち伝が話せる。
「自慢じゃないが、俺が1500m走っている間、俺のクラスのやつらは昼食をとってたんだぞ!みんなで集まって楽しそうに。俺が一周するたびに目に入ってくるんだその光景が・・・」
「なにそれギャグじゃん!」
そう言っていろりは笑い出した。俺の後ろからも笑い声が聞こえる。振り向くと聖奈も笑っていた。
バカにされるのは悔しいが、今回ばかりは聖奈も笑ってくれたし、流すとしよう。そもそも俺の自虐ネタだしな。
靴売り場に着くと、いろりは走り出した。
「待てって!」
そう言っていろりを追いかけようとしたが、後ろの聖奈の元気がないことに気がついた。
「大丈夫か聖奈?」
「え、だ、大丈夫ですよ」
「そうか・・・ならあいつは放っておくか」
「え!?」
「当たり前だろ、何年お前と一緒にいると思ってんだ、お前が体調悪いことくらい見ればわかる」
「そ、そうですか・・・ごめんなさい健二にい」
「別に気にすることじゃないよ」
今すぐ帰って、聖奈の看病をしてやりたい。でもいろりとの時間も大切にしたい。どうすればいいんだか・・・。
その時、俺の肩に後ろから手をかけてきた人物がいた。
「よぉ、久しぶりだな横田」
耳元でそう呟いたその声には、聞き覚えがあった。
間違いない、奴だ!すぐさま手を振り払い、振り返った。
その顔は忘れてはいない、あんな思い出の中にこいつがいるのだから。
そいつの正体は俺と園田百合子を奪い合った、3年生の男子生徒である。確か2週間の停学だったはずなのだが、普通に外を出歩いているところを見ると、反省していないらしい。
「お元気そうで、なによりです先輩」
「相変わらずの挑発的な態度じゃねぇか!」
ここまでの会話で危険な人物と判断したのだろう。聖奈は俺の後ろに隠れた。
「・・・でその女は誰だよ」
「こいつは俺の妹だ、お前にはやらんぞ」
「ほぉう、いつかお前に復讐してやろうと思っていたが、ちょうどいい・・・その女俺によこせ」
「は!?お前、喧嘩売ってんか、殺すぞ!」
聖奈をもらってもいいかだと!?そんなこと言われたら、俺はブチキレるに決まってる。そして、俺はその男を睨みつけた。
「怖ぇ怖ぇ、喧嘩かうのかよ!?」
「あぁ、やってやるよ」
「健二にい、逃げましょう・・・健二にいじゃ勝てません」
そんなことは分かってる。こいつには多分勝てない。でも体調の悪い聖奈と逃げるのは難しい。それにもし逃げられたとしても、いろりとこいつが鉢合わせたりしたら、顔を見られてるいろりがどうなるか分からない。
だからちょっとでも騒ぎを大きくして、ほかの一般人の援護を待つ。それが俺に思いついた最善策だった。
「なら、決まりだな」
「いいのか?ここで騒ぎを起こしたらどうなるかわからないぞ」
「そんなもん知るか、ここでお前をやって、その女をいただいていく・・・10秒もかからねぇ」
「それはどうかな、お前に俺が倒せるか?」
これはハッタリだ、俺が勝てる確率はほぼゼロに近い。
でもやるしかない、と覚悟を決める。
そんな時だった。
「ヨコッチまだ?早くきてよ!」
このタイミングで戻ってきたか・・・最悪である。
「ヨコッチ!?・・・何してんの、ってそいつあの時の雑魚キャラじゃん!」
「雑魚キャラ!?」
この女、いろりはなんてことを言ってしまったんだ。火に油を注ぐようなことを言いやがって。
「おい横田、その女もお前の連れだよな!?」
「えっ!?違いますけど・・・」
「ちょっとヨコッチひどい!ここまで一緒に来たじゃん、それに今日は一緒に寝たじゃん!」
お前はなんてことを言ってんだよ!さらに油注いじまったよ!
「お前、園田百合子って彼女がいるのにその女と寝た、だと!?殺す、絶対殺す!」
その男の殺意は本物だ。やばいこれは間違いなく死ぬ。
「覚悟はいいな!?」
「えっ!?いやちょっと待って」
そうしてその男は俺を全力で殴った。




