言えないこと
今日も暇なので更新します
「ちょっと・・・いつまで手、乗っけてるのよ!」
「あ、あぁごめん」
いろりの頭を軽く撫でているうちに、それにハマってしまっていた。
もしいろりの頭のことが、事故とかではなく、異能の力なら俺の右手で・・・っていうのは冗談で、どこぞの主人公みたいにそんな力もない俺は、撫でてやることしかできなかった。
「だから、やめてってば!」
いろりは顔を赤らめながら、俺の手を振り払った。こんないろりをずっと見ていたい。なんとなくそう思う。
少し間が空き、このままでは何も話さず帰られると思った俺はとりあえず何か話そうと、話題を振った。
「な、なぁいろり、さっき俺のベットの下覗いてたけど、何してたんだ?」
「え、あぁ、それは・・・ヨコッチの部屋にエッチなものとかあるのかなぁと・・・」
「探したのか?」
「うん」
「で、見つけたか?」
「ううん、見つからなかった・・・ヨコッチ、エッチな物どこに隠してるの!?」
「はっはっはっ、残念ながらそんなものはない!」
「えっ!嘘!?」
「いや本当だから」
いろりは俺を見て、今までみせたことないくらいの驚きの表情をする。
「男だからって、エッチな物があるとかいうのは偏見だぞ」
「そっか、ヨコッチの部屋にはそういうのはないのか・・・」
なんかちょっと残念そうなのは気になるが、見つからなくて良かったー!
実はこういうこともあろうかと、日頃から目につかないところに隠している。無論そのありかを知っているのは俺だけだ。
「ねぇ、ヨコッチ」
「どした?」
「今日、泊まっていってもいい?」
「あぁ・・・」
「やったー」
いろりの嬉しそうな笑顔を見て、こちらも頬が緩んでしまう。
ってちょっと待て、なんとなくの流れで返事をしてしまったが、俺は一体なにを承諾した・・・やばい思い出せない。
目をつぶり、集中する。
俺の思考を5秒前の会話に戻した。
確かいろりは・・・「俺の家に泊まっていい?」って、そう言ったよな・・・ってことは俺かなりまずいことを承認してるじゃん!
「な、なぁいろり」
「ん?」
「俺さっき、何を承諾したっけ?」
ほんのわずかな可能性にかける。もしかしたら俺の聞き間違い、あるいは俺の記憶違いだ、と信じたい。
「何って・・・私が今日ヨコッチの家に泊まってもいいかって聞いたら、いいよ!ってヨコッチが返してくれたじゃん」
聞き間違いでも、記憶違いでもなかった。でも俺、いいよ!とは言ってないよね多分。
「で、でもさ年頃の男女が一つ屋根の下なんてさ、良くないっていうかなんというか・・・」
「大丈夫だって、明日土曜だし!」
いやそういうことじゃねぇよ!日にちとか、明日休日とか関係ないから!
「そういうことじゃなくてですね、いろりさん・・・もし俺が獣かしたらとか・・・」
「あっ!」
いろりは何かに気づいたように、胸とスカートを抑え、こちらを睨んだ。
「いや気づくの遅すぎだから」
「そ、そんなこと最初からわかってるし・・・そ、それにヨコッチ一人じゃないんでしょ?この家」
「え、あぁ、まぁね健一兄さんと聖奈がいるはず・・・」
「あれ、さっきの人は?」
「あぁ、あれは気にしなくていいから」
「・・・そ、そう」
いろりの顔が夕日より赤く染まっている。多分俺の顔も同じようになっているのだろう。考えると恥ずかしい。
「そ、それで本当に泊まるのか?」
「え、うん・・・泊まる、泊まりたい!」
「わ、わかったよ・・・」
ど、どうしよう・・・いろりとひとつ屋根の下で寝るなんて、そんなこと他の奴に知られでもしたら・・・。
トントン!
「健二にい、入りますよ?」
俺の返事を待たず、言いながら入ってきたのは聖奈である。
「ど、どうした?聖奈」
「いえ、先程お泊まりがどうとか聞こえた気がしたので」
「え、えっとそれはあれだよ・・・なぁいろり!」
とっさのことで何も思い浮かばず、いろりに任せてしまった。
いろりは動揺して、言葉が出てこない。
ようやくまとまったのか、いろりが口を開く。
「き、今日・・・この家に泊まっていこうかなと」
「はい?」
バカヤロー、なんで正直に話すんだよ!
俺は恐る恐る聖奈の顔を見る。
笑って誤魔化しているが、間違いなく怒っている。それもかなりヤバめで・・・。
「健二にい、それは本当ですか?」
聖奈の圧が凄すぎて、
「はい」
としか言うことができなかった。
「わかりました。では今日は泊まっていくんですね?」
あれっ?なんかあっさりオーケイがでた感じである。しかし、もう一度聖奈の顔を見たら多分俺の心がもたないので見るのはやめておいた。
「それじゃ私お風呂に入ってくるね!」
いろりは元気を取り戻したらしく、小学生のようにはしゃいでいる。
「お風呂に入ってくるね」
「2回も言わんでいいわ!やかましい」
いろりはムッとした顔で俺の部屋を出ていった。
まったく、お風呂に入ってくるね!ってお前はいつからここの住人になったんだ、お借りしますだろ普通は・・・でもあんなに主張するってことは一緒に入りたかったのかな・・・なんてな。
洗面所にいくといろりの制服が置いてある。
そして風呂場の中からシャワーの音が聞こえてくる。その音だけで、少し興奮してしまった俺をみんなどうか許してくれ!
だって仕方ないだろ、こういうの初めてなんだし・・・。
「なぁいろり」
俺は入浴中のいろりに話しかける。
きっと驚いたのだろう、ピシャッという音が聞こえた。
「な、なによ!」
このトーンは間違いなく怒である。だがそんなことは気にせず話を続ける。
「いや、顔が見えない方が話しやすいこともあるかなーと」
「・・・あっそう、で何の用?」
今返事が来るまでに5秒ほどあった。洗面所とお風呂は別の国なのかな?すごい時差なんですけど。
「大したことじゃないんだけど、ちょっと気になったことがあってな」
「・・・なによ?」
またもや時差がある返事をした。あのドアの向こうは本当に別の国なのかもしれない。
「いや お前のこと、その頭のこと、どうして他の奴には伝えないんだ?」
「・・・」
いろりの返事は聞こえない。代わりに聞こえるのはポタポタと落ちる水の音だった。
「悪い、今のは忘れてくれ」
そう言って立ち上がり、自分の部屋に戻ろうとした・・・とその時、いろりの声が聞こえた。
本当に時差があるのな・・・そんなことを思ってしまう俺を許してほしい。
俺はよく聞こえるようドアのすぐそばに座った。
決して、エッチな想像をしたいからとかじゃないからな!
「なんとなく・・・なんとなくだよ。ヨコッチには知って欲しかったし、他の人には知って欲しくなかった。それだけのこと・・・・」
「そっか・・・」
きっと何か言いたくないことがあるのだろう。いろりの言葉を聞いているとそんなことを思ってしまう。
するとドアの向こうで風呂から上がる音が聞こえた。
俺はスッと立ち上がりこのまま洗面所でラッキースケベでも狙ってやろうかとか考えたが、結局自分の部屋に戻った。
まだまだ続きます!よろしくお願いします。




