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自称インキャぼっちは悩みの数だけ彼女がいるようです  作者: 史本 会
自称インキャはクラスメイトの副部長を放っておけないようです
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生徒指導

更新遅くなりすみません。

今後ともよろしくお願いします。


朝、目を覚ますと目覚ましが鳴っている。よく見ると俺の目覚まし時計は8時半を指していた。



「あぁ8時半か・・・って8時半だと!」



自分が寝坊したことに気づき、慌てて起き上がる。パジャマを脱ぎ捨て、制服と鞄だけ持ってリビングに向かった。



既に家を出たのだろう、聖奈と健一兄さんの姿はなく、俺の朝食が机の上に置いてあった。ここで俺は一旦動きを止め考え始める。

何を考えるかといえば、この朝食のことである。時間は既に8時半過ぎ、この朝食を食べずに家を出れば間に合うかもしれない。だが朝食を食べれば遅刻は確定である。だがこの朝食は聖奈が作ったもの、食べずに出ればきっと後で後悔する。そんなことを考えていると時計は既に8時40分を指していた。




「これは・・・遅刻だな」



そう判断した俺は聖奈の朝食をゆっくりいただくことにした。



朝食をとっている間、なにかを忘れているような気がした。だがそれがなんなのか全くわからない。



朝食を済ませ家を出る時、ようやく忘れていたものに気がついた。




そういえば霞姉さんはどうした?

家に居る気配はなかった。ということは、またどこかぶらついてんだな。正直、ここまでひどい社会人生活を送っていると、家族として悲しくなってくる。

霞姉さんも早く就職してほしいものだ。




学校に着くと正門に生徒指導担当の鬼島(きしま)がいた。あいつに見つかると面倒だ。そう考えた俺は裏に回り、塀をよじ登って着地した。




「おはよう」




着地した目の前に鬼島が立っている。どうしてバレたのか、それは分からない。




「お、おはようございます」




そう挨拶をいい、そっと通り過ぎようとしたが、制服を引っ張られ動きを止められた。




「よし、生徒指導行きだな、ついてこい」




なぜか嬉しそうな鬼島は俺の手を掴み、強引に生徒指導室まで連れて行った。




初めて入ったが、意外と綺麗で人が暮らせそうなくらい物が揃っていた。



鬼島は奥のイスを指でさし、座れ!と言わんばかりの目で訴えかけてくる。



俺はあえて指をさした隣のイスに座った。これには特に理由はない、なんとなくである。



鬼島は俺の正面に座った。ここから長い質問攻めの始まりである。




「とりあえず遅刻のことは後回しだ、なぜ正門から入ってこなかった?」




とりあえず、ということは遅刻のことも聞かれるのだろう。さっさと終わらせて欲しいんだが。



「えーっとそれは、塀を登りたい気分だったというか・・・」



「なぜ塀を登りたかったんだ?」




なぜ?ってそれは考えていなかった。しばらく黙り込んだ俺を見て鬼島は続けた。



「なぜ塀を登りたかった?」




いやいや、同じことを聞くんかい!

語尾の「んだ」をとっただけでなにも変わってないから!




「なぜ登りたかった?」



今度は主語がなくなった。次はなにが無くなるのだろうかと気になったが、この調子だと質問に答えなければ、次へは進まなそうなので少し考え、発言することにした。




「じ、実は、塀を登りたかったというのは嘘なんです」




「嘘・・・だと!」



急に鬼島の顔が険しいものになる。

さっきまでとは比べ物にならないオーラを放ち、威圧をかける。



「は、はい・・・その正門に鬼島先生がいたものですから、バレないようにと・・・」



俺は正直に述べた。全くの偽りもなく。




「そうか、正直に話したことは褒めてやる。だが、最初に嘘の発言をしたことは、許せることではない」



この鬼島という教師、話し方がバトルもので出てきそうな悪役の話し方が特徴でこの学校では有名人である。今回初めてそれを直接聞けたのは、ちょっぴりレアな気がした。



「聞いているのか!横田健二」




「なっ、なぜ俺の名前を・・・」




「それは当たり前であろう!なにせお前は横田健一の弟なのだから」




「くそ!やはりそういうことだったか」




なぜか分からんが、この人と話しているとこっちまで何かの役を演じているようだ。




そしてこの後も、この遅刻と関係あるのか分からない質問を多く受けるはめになり、鬼島はきっと誰かと話しがしたかったんだな・・・とか途中から思い始めて、結局長々と付き合ってしまった。

終わった頃には昼休みになっていて、指導室の外では生徒たちのにぎやかな声が聞こえる。




「これで指導は終わりだ、後で担任にも報告しておく、いいな?」




「は、はい・・・」




反省したフリを見せつつ、指導室をあとにした俺はゆっくりと教室に向かう。



周りの人を横目で見ながら誰にも注目されないように教室に行く。ミス・・・ションというやつだ。



無事教室の前には来たものの、やはり途中からというのは入りづらい。


その時、教室のドアが開き鉢合わせのような形で目があったのは鮫島さんだった。



「お、おはよう鮫島さん」



「横田さん・・・よかった」



なぜかホッとしたような顔を見せる。

こちらとしては最初に会ったのが鮫島さんでよかった、と思う。



「横田さん入らないんですか」



「え、あぁ入るけど・・・」



「もしかして、入りづらいとかですか?」



「え、いや、まぁそんなところかな」




「なら一緒入りましょう!」




いや待て待て、そっちの方がよっぽど目立つし、入りたくない。一人なら気づかれずに入れるかもしれないが、二人で、しかも鮫島さんと入ることになれば別の話だ。絶対目立つし、気づかれる。



「えっと、だ、大丈夫だから・・・」



「そ、そうですか・・・」



鮫島さんのこういう聞き分けがいいところも大好きだ。外見はもちろん中身までいい女子はなかなかいない。俺はこのクラスで、鮫島さんの隣の席で本当に良かったと改めて感じた。




鮫島さんが行ったあと、そーっとドアを開け、忍びのように気配を消し、席を目指した。



「ヨコッチなにしてんの?」



教室に入ってからわずか1歩、秒数で数えれば3秒ほどでいろりに発見された。



「お、おはよう、いろり」



昨日のこともあり、いろりの顔を見ることができない。


「ねぇヨコッチ!?」



お前はどうしてそんなに普通に話せるんだよ!俺はお前の顔すら見ることでないのに、声を聞いてるだけで苦しいのに、どうしてそんなにいつも通りでいられるんだよ!



「なぁ、いろり・・・」



「ねぇ、ヨコッチ!」



俺が話そうとするといろりの元気な声が、それを遮るかのように俺になげられる。



「なんだよ?」




「昨日のあの話冗談だから!」




「は、はい?冗談・・・嘘だろ」




「ほんとほんと、冗談だから」



そして今日初めていろりの顔を見た。

冗談を主張するいろりだったがその笑顔はいかにもつくりもので、昨日の話が事実であることを俺に告げているようだった。



「いろり」



「なに?」



「無理はするなよ」



「・・・」



その言葉で、いろりの表情が落ち着いた、いつもの表情に戻ったのが分かった。



「あの、すみません。昨日の話ってなんですか?」



たまたま聞いていたのか、鮫島さんが尋ねた。


鮫島さんにも伝えた方がいいのではないか、そう思った俺はいろりを見て確認する。しかしいろりは小さく首を横に振り、俺に許可をださなかった。



「ごめん、鮫島さん・・・」



今の俺にはこれくらいしか言えない。それが辛くて、悲しくて、でもいろりの方が辛いし、悲しいから俺はひたすら我慢した。




次でいろりの発言がどんなものか公開予定です。


その他、今まで隠してきた話の内容も暴露します。

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