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自称インキャぼっちは悩みの数だけ彼女がいるようです  作者: 史本 会
自称インキャはぼっちを卒業するようです
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貸し2つ!?

まず俺といろり、そして長谷川さんの3人は、園田百合子の行動を観察することにした。決してストーカーなどではない、依頼人の状況を目で確かめるためである。



園田百合子が朝登校すると、下駄箱に大量の手紙が入っていた。その一つ一つを確認することはなくビニールに入れ、ゴミ箱に捨てた・・・嘘だろ、俺なんて最大で1枚しか入ってないのに!そういえば俺宛の手紙どうしたんだっけな。



次に園田百合子が向かったのは教室である。1年Cクラスの教室は女子率が高いようで、園田百合子が教室に入ると男子の少人数は端っこによせられ、女子が教室の大部分を占めていた。



「おはよう百合子ちゃん!」「おはよー!」



多くの女子は園田百合子が教室に入っただけで盛り上がりをみせた。そして、椅子に座り机の中を確認した。その机の中にも多くの手紙が入っている。それらを先ほどと同じようにビニールに入れゴミ箱に捨てた。



ホームルーム前の休み時間、園田百合子は呼び出され、校舎裏にいた。そしてそこで告白を受けていた。見たところ相手は先輩のようだったが、首を横に振り何やら謝っているようだ、と同時にその相手はその場から走って逃げていった。

そんな光景をホームルーム前だけで3度確認した。その後も1度目の休み時間で2回、2度目の休み時間で1回、3度目の休み時間で4回、昼休みには11回、と園田百合子に告白し玉砕されていた。




思っていた以上だ。たしかにこれは嫌になるな、まぁ告白なんてやらせの時のいろりのやつしかないけど・・・俺もモテすぎて悩みたい!と思ったりした。




「あの先輩、園田さん大変そうですね」




「あぁ、そうだな」




「なにかいい案とか思いつかないですかね?」





「ないことはないが、得策とはいえないだろうな」





「その得策でない案、聞かせて下さい!」





「いや、やるつもりはないぞ」





「それでも教えてください!もしかしたらヒントになるかもしれませんし」




「まぁいいけど・・・




・・・ってことなんだけど、どうだ?」






「先輩、先輩ってやっぱり変態ですね・・・ついでに浮気者です!」





「だからやらないって言ってるだろ!」




長谷川さんは、信じられない!みたいな顔をして俺の顔を見た。





「ねぇヨコッチ、それ本当にやらないよね!?」





「や、やりませんよ」




先ほどの俺の意見を聞いて、いろりは怒ったのか、すごい圧をかけてきた。その圧に負け、俺の声が震えた声になった。




「そう、ならいいけど・・・」





「・・・」





更に強烈ないろりの圧を受け俺はなにも返せなかった。いろりの俺に対しての気持ちは知っている・・・その上でさっきの意見を言ってしまったのだから、いろりが怒るのも無理はない。




やっちまったよ!雰囲気最悪じゃん!てか俺にあの意見を言わせたの長谷川さんじゃん、責任とれやー!と思い怒った表情をつくり長谷川さんを見た。長谷川さんはこちらをちらっと確認して、そっぽを向いた。



無視かよーーー!






「え、えっと、後はとりあえず放課後に話し合わないか?」





「そ、そうですね先輩」




長谷川さんは同意した。いろりも同意したのか何も言わずに頷き、先に歩き出した。




「お、おい、いろり!ちょっと待ってくれ・・・あっ長谷川さんまた後で!」




後ろを振り返り、手を振りながらいろりを追いかけた。



少し走り、いろりに追いついた。



「な、なぁいろり、この間のことなんだけど、あの、俺は・・・」





「ストップ!それ以上喋ったら殺す!」




「は、はい」




いろりは過去一の怒をみせた。今日のところはあの話題に触れるのはやめておこう。





帰りのホームルームが終わった瞬間に俺は部室まで走った。




部室に入るとまたもやすでに長谷川さんが座っていた。



この女、ちゃんと授業、ホームルーム出てるのか!?まさかサボってないよな。



「あっ、先輩こんにちは・・・先ほどぶりです」




「こ、こんにちは」





また気まずくなってしまった。なぜ俺がホームルーム終了と同時に走り出しかというと、無論いろりといると気まずいからである。しかし、長谷川さんと二人だけでいるのもなかなか気まずい・・・。




「ちょ、ちょっとトイレ行ってくるね」




「は、はいわかりました」




トイレをしたいわけではないが、その場から逃げるために嘘をついた。



そのトイレに行く途中、曲がり角である人物とぶつかった。





「いたっ!」





「す、すみません!大丈夫ですか?」




「は、はい」





俺はひとまずぶつかった女の子に手を差し伸べた。




「あ、ありがとうございます...あとすみません」




「いえいえ、それに俺もボッーとしてたから、ごめん」





「・・・優しい人で良かったです。あっ、いけない!急いでいるので私はこれで失礼します」




「あっ、ごめん、それじゃあ気をつけて」





「は、はい」





そうしてその女の子は走り出した。また誰かにぶつからなきゃいいけど・・・それにしても可愛い子だったな、名前とか聞いとけばよかった。





「そんなところで何をニヤついているのかしら?」




このタイミングでこの人と会ってしまった俺は不幸だと酷く嘆いた。




「えっとな、なんとなく・・・?ですよ」





「そう、後輩くんはなんとなくでニヤつく変態、ということでいいのかしら?」





「ごめんなさい見逃してください!」




「別に、何もするつもりはなかったのだけど・・・後輩くんは何かしてほしいのかしら?」




「いえ、めっそうもありません!」






「あらそう、なら部員には報告しておかなきゃいけないわね」





どういう経緯でそうなった!この人本当に悪魔だ!





「・・・っていうのは嘘で、私に貸し一つってことでいいのかしら?」




「か、貸しですか。まぁそれならいいですけど」





もちろんその方がいいに決まっている。部員に俺のこと変態ぶりが伝われば後で何言われるか分からない。あと俺、別に変態じゃないからね!貸しで済むのならそっちの方が1万倍いい!




「あらそう、じゃ貸し二つってことで」





「は、はい!?貸し一つじゃないんですか!?」




「べつに一つでもいいのだけど、そしたら間違えてさっきの事を部室でつい話してしまうかもしれないわね」





「うっ、わかりました・・・二つでいいですよ」




この女はやはり悪魔である。できればもう関わりたくないがクラスメイトでしかも同じ部活、最悪である。



「そういえば後輩くん、そっちは部室とは逆だけれども、どこかに向かう途中なのかしら?」




そういえば忘れていた。部室にいるのが気まずくてトイレに行くって嘘ついたんでした・・・。



「あー、えっとトイレに行こうと思って・・・」




「後輩くんはトイレで変なことをしようとしていたのね、ニヤついてたのも納得だわ」




よからぬ勘違いをしているようだ。しかしこの女と関わるとろくなことはない。ひとまず、勘違いをさせたまま先輩の方を振り向かずトイレに向かった・・・向かう振りをした。






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