表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自称インキャぼっちは悩みの数だけ彼女がいるようです  作者: 史本 会
自称インキャはぼっちを卒業するようです
14/48

距離感

次の日、学校にいろりの姿はなかった...。



次の日も、またその次の日も...。




清水先生は風邪と言っているが実際はどうなのか分からない。



「心配ですね...。」




「そうだな...」




鮫島さんもいろりのことを心配してくれているらしい。




「あの、もしよかったら放課後お見舞いに行きませんか?」




「そ、そうだね...一緒にいこうか...」




なぜかわからないがここ最近、いろりが学校に来なくなってから、俺の気分が良くない。胸のあたりがこう、なんていうか...モヤモヤした気分になって、なんか嫌な感じである。




放課後、俺と鮫島さんはいろりの家に向かった。




「鮫島さん、よくいろりの家知ってたね」




「はい、前に遊びに行ったことがあるんですよ...あっ、着きましたよ!ここです」




標識には佐倉とあった。間違いなくここがいろりの家らしい。



ピーンポーン


心の準備をする間も無く鮫島さんはチャイムを鳴らす...するとすぐに返事があった...そしてドアを開けたのはいろり本人であった。




「い、いろり...大丈夫なのか?」




「なんだヨコッチもいたんだ...」




「今日はお見舞いに来たんですよ、佐倉さん...横田さんが私を誘ってくれたんです...」




それは違うだろ!と反論しようと思ったが、鮫島さんの優しさなのだろう...その嘘を通すことにした。




「そ、そうなんだ...へー...それで、入るの...?」




いろりは熱のせいか顔を赤くさせ、家の中を指でさし、あがっていくかを尋ねた。



「....えっと...」




「はい!もちろんです。もともとお邪魔する予定でしたし、ねー横田くん!?」




「あ、あぁ」




結局お邪魔することになった。

いろりの体調は良くないらしい...顔がさらに赤くなっていた。




「いろり、お前寝てていいぞ...あとなんかして欲しいことあったら言ってくれ...」





「う、うん...」




「はいはい!イチャイチャはそこまで!...で佐倉さん、本当は風邪ひいてないでしょ!」




「.....」




鮫島さんの質問に対し、いろりは黙秘した。何も言わずうつむき、そしてなぜか悲しい顔をしていた。




「佐倉さん!もういいんですよ!私のことは気にせず、横田さんに言いたいこと、言ってください!...じゃないとこっちまでやりづらい...というかモヤモヤしてしまいます!」




「......」




いろりは黙秘を続けた。




「な、なぁいろり...俺に何か言いたいことあるのか...?もしかしてこの間のことなのか...?」




「.....」




いろりの黙秘は続く...ただ手をギュッと握りしめ、何かを言いたそうだった。




「もう、佐倉さん!あなたが言わないなら、私が言ってしまいますよ!それでもいいんですか!?」




「それはダメ!」




ずっと黙秘していたいろりがやっと反応した。先ほどより顔が赤い...顔が燃えるんじゃないのかと心配になった。




「ほら!早く伝えてください、私は外で待っていますから...」




そう言って、気を使ってくれたのか鮫島さんは部屋を出ていった。




ちょっと待て!いまこの状況...クラスの女子と2人きりで、しかも女子の部屋だと!

健二の健二が暴れないよう、心を落ち着かせ、なるべくいろりを見ないようにした...だが、健二の健二は興奮を抑えられず、暴れる寸前だった...。




「そ、それで伝えたいことってなんだ...?」




ぎこちない喋り方になってしまった。緊張して心臓が飛び出しそうだ...それにこれ以上この空間にいたら、間違いなく健二の健二は暴走する...。




「そ、それは...」



一度深呼吸をして、いろりは続けた。



「あのね...私はいまヨコッチの仮の彼女だけど...その....なんていうか....それじゃ嫌なの....」




「それって仮の彼女はやだってことか...?」




いろりは小さくうなずいた。




「じゃあ屋上で俺が言ったことを承認してくれるってことか?」




「そうじゃない!...そうじゃなくて...本物に....私は、佐倉いろりはヨコッチの....横田健二の本物になりたいの!」




俺の頭はパンクした...こいつは何を言っている...それってつまり、つまりは告白なのか...いやでも待て、そんなはずがない...俺を好きになるやつがいるなんて...だって俺だぞ!健一兄さんのように完璧でもなく、妹のように性格がいいわけでもない...なのにどうして俺を....。




「え、えっとそれってどういうこと...?」





「.....言った通り、本物に....なりたいの...。ダメ...かな...?」




いろりの顔がついに真っ赤になった。今までにないほど、可愛く見えた...流石の俺もいろりの気持ちは理解できた...そう思うと俺も恥ずかしい...でも俺は....俺の本物って...。




「な、なぁ佐倉さん...」




「な、なんでしょう....?」




恥ずかしさのせいか俺もいろりも言動まで変動していた。




「そ、その...つまりはす、好きってこと...なのか...?」




いろりは小さくうなずいた。まじかー!やばい、どうしよう...もしかしてとは思ってだけど、実際に本人から言われるとめっちゃ恥ずかしい...。





「お、俺でいいのか...?」





「う、うん...」




「........」





しばらく無言が続いた。





そして先に口を開いたのはいろりだった。




「それで....どうなの...ヨコッチの気持ちは...?」






「そ、それは....すごく嬉しい...けど分からない....どうしたらいいか...よくわからないんだよ....こんなこと今まで一度もなかったし....だから、その....」





「わかった....じゃあ保留ってことにしておいてあげる...それで、もし...もしヨコッチの本物がみつかって、それが私だったら...付き合って....!それで....いい...?」




俺の中から何かが出てきそうだった。これは俺のいろりに対する気持ちなのか、それとも....。



俺は少し考えた。そして...







「う、うん......








こ!」





「はい?」




「いやー、実はトイレ行きたくなっちゃってさぁ...トイレ使ってもいいか?」





「は!?...なにそれ...いまのムードで!...流石はヨコッチだね...もう帰って!」




いろりの表情は一転して怖いものになった。ゴミを見るかのような目をしていた。



「ちょっとお願いトイレだけ貸してー」




結局俺は家から追い出され、トイレに行くことができなかった。



「横田さん...どうでしたか?」



外で待っていたのは鮫島さんだった。




「いや...その、なんていうか...」




「やっぱりいいです...これから頑張って下さいね...私も応援していますから...」




応援?なにを応援するんだ....まぁいいか....それよりも今は健二の健二を落ち着かせることが先決だった。




今日の出来事を境に俺の生活は大きく変わることになる...なんて自分の頭で想像なんかしてみたりしたが、結局頭の中に残ったのは今日のいろりのことだった...。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ