友達の作り方
4月26日、その日は快晴だった。
暑い、まだ4月なのになんでこんなに暑いんだよ...。
結局あの後、俺と沖野陸は職員室に呼ばれた。一連の事情を話し、沖野陸は期限なしの停学処分となった。正直退学が望ましかったが、まぁそれなりに良い結果と言えるだろう。
俺が家を出ると、佐倉が待っていた...そう俺は昨日から佐倉と仮の付き合いを始めたのだ...仮だからな!仮!
「おはよう、ヨコッチ!」
よかった、いつもの佐倉である...気まずい雰囲気とかつくられたらどうしようかと思ったが、この調子なら問題ない...。
「おはよう...佐倉」
「ねぇねぇ、一応付き合ってるんだから...な、名前で...呼んでよ...」
佐倉は恥ずかしそうにそう言った...やだよ俺そんなの恥ずかしくて死んじゃうもん...。
「名前で呼んでるだろ...」
「そ、そうじゃなくて...い、いろり...いろりって呼んで!」
一応確認したけど、やっぱりやだよ...恥ずかしいし、緊張するし...。
「...い、いろり...」
やっぱり恥ずかしい....あーもう逃げたい、この場からすぐに立ち去りたい!
「じゃあ、私も名前で呼ぶね...け、健二....?」
いやなんで疑問形!とか言ってみたいが、女子に名前で呼ばれたことがない俺は、恥ずかしいという気持ちの方が強かった...。
「な、なぁやっぱりさ...」
「あーもう終わり、やっぱ名前で呼ぶとか無理だわ...ヨコッチのままでいいよね?」
名前で呼んでって言ったの佐倉だよね!?...まぁいいけど、恥ずかしかったし...。
「あっ!もちろんヨコッチはいろりって呼んでね!」
なんでだよ!それは不公平だ!...俺だけいい思いできないじゃないか...!
「わ、わたったよ...い、いろり...。」
その後も学校の事とか、部活の事とかでいろりと話をしながら学校に向かった。
学校に着き、まず挨拶を交わすのは鮫島さんである...というかそう決めている!
「おはよう、鮫島さん!」
「おはようございます横田さん....と佐倉さん!」
なんかいろりに対してだけきつい言い方だったような...。
「おはよう鮫島さん!」
なんか勝ち誇ったように挨拶したな...いろりと鮫島さんは一体何をきそってるんだか...。
「よぉ!横田!」
そう挨拶をしてきたのはクラスメイトの男だった...いやお前誰だし...今回初登場だよね君!?すごい慣れた感あるんだけど...
「はぁ...おはよう...佐藤くん」
適当に名前をつけて挨拶を返してみた...佐藤という名字は定番中の定番、当たる確率は他の名字より高いと思ったからである。
「横田くん、僕は鈴木だよ!ちゃんと覚えておいてよ...。」
なにー!そっちだったか...佐藤ではなく鈴木だったか...なんか悔しい...。
「お、おぅ悪いな鈴木...」
「なーんてね、僕の名前は峯崎真司...よろしく!」
うわっ、こいつめんどくさいやつだ...峯崎とか定番でもなんでもないし...わざと推理させて、おちょくりやがったなこいつ...。
それに顔も結構イケメンだし...こいつは却下だな...。ちなみに今何を却下したかというと、人間関係でこの先親しい関係になるかどうかである...。大体の人間のことは却下するので、その結果俺の周りには友達と呼べる存在がいないのである...。
「し、知ってたし...あえて間違えてやったんだよ...峯崎...!」
俺は少し強がってみた...。
「そうだったのか...横田くんすごいね...僕の名前ちゃんと覚えてくれてたんだね!」
覚えてるわけないだろ...まぁ今さっき覚えたけど...それにこのクラスのほとんどの人の名前知らないし...てか名前覚えてるのがすごいとか褒められた...なんかガキ扱いされてるようにしか思えないんですけど...。
「ねぇヨコッチ、今日授業終わったら一緒に部活行こうね!」
「あぁ...」
部活行きたくないんですけど...そういえば入部届けだしてない気が...!まぁいいか、今日渡せば...。
「でさ!横田くん...僕と友達になってよ!」
「いや断る...」
峯崎は小学生レベルの友達のなり方を提案してきたが、とっさに断ってしまった...断って良かったんだけどね...。
「はぁ、全くつれないなー友達だよ!友達!横田くんいなさそうだから誘ってるのに...!」
こいつは本当にいい性格をしている...友達いなくていいんですー!...あえてつくってないだけですー!とか思ったりしてみた...。
「いや本当にいいから、それに友達ってのは徐々になっていくもんだろ... ?だからなんつぅか...。」
「なるほど、言いたいことは分かった...つまり、横田くんは僕と友達になりたいんだね!」
いやいや話聞いてたか!?そんな流れじゃなかったでしょ!やはり最初の見立て通りこいつはめんどくさい...。
「いや、そういうことじゃなくて...」
良い言葉が思いつかなかった。
「じゃあこれからよろしく!」
そう言って握手を求めてきた...この場を乗り切るために仕方なく差し伸べてきた手を握り、握手を交わした。




