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自称インキャぼっちは悩みの数だけ彼女がいるようです  作者: 史本 会
自称インキャはぼっちを卒業するようです
1/48

新学期


4月25日、俺はこの日初めて告白された。



高校に通い始めて1年が過ぎ、昨日無事2年生になることができた。クラスは変わったものの、ぼっちの俺からしたらそんなことは関係ない。


昨日の始業式、生徒代表として壇上に上がったのは俺の兄、横田健一である。この兄、ずるいことに顔はイケメン、頭脳明晰、運動神経抜群、そして明るい性格・・・と俺にはない要素をいくつも持っていた。


ちなみに俺はオール普通。まぁ運動は少しできるかな?でも人付き合いは苦手で学校ではほとんど喋らない。そして目立つのは嫌いで面倒くさがり、と自称インキャな人間である。


そんな俺は今日(4月16日)、朝学校に行くと下駄箱に手紙があった。それを見て少し動揺したが冷静に考えてイタズラか何かの間違えだろうと思い、その手紙を捨ててしまった。





次の日の朝、また俺の下駄箱に手紙があった。

これはもしかして本気なのでは!と思ったが、手紙には差出人の名前がなく、内容も告白とは全く異なるものだった。


その日の帰り俺はいつも通り1人で下校していた。が後ろから誰かの視線を感じる。振り返ってみたが誰もいない。


もしや不審者!と思い小走りをする。速くなった足と重なるように後ろから誰かが追ってくるのがわかる。


また振り返る。しかし誰もいない。これはもしかして心霊現象!!全力で走った。足音は先ほどのように重なるようにして聞こえる。とにかく全力で逃げた。そして気づくと俺は家の目の前まで来ていた。


もう大丈夫だ。ホッとため息をしたと同時に体の力が抜けた。先ほどまでの気配もない。この日は無事家に帰ることができた。


家に入ると妹が出迎える。妹の名前は横田聖奈。容姿は普通、勉強はできるが、運動は苦手。


だがこの妹の最大の武器は性格の良さである。誰がどう見ても優しい!そしてコミュニケーション能力が高い。これはずるい!といつもそう思ってしまう。



だが妹のことは尊敬もしているし、誇りに思っている。

まぁ俺が育てた訳じゃないけど・・・。




「おかえり健二にい」




あぁなんて良い妹なんだ!いつもそう思う。

こんな長所もない俺をいつも妹だけは見捨てずにいてくれる。まぁ妹は誰にでも優しいだけなんだけどね。




「あぁただいま聖奈」




やってしまった、またぶっきらぼうな態度で「ただいま」を言ってしまった。俺に挨拶とかしてくれるの妹だけだから、嬉し過ぎて素直になれない。実は俺ツンデレなんじゃ!?

いやそんなことはない、と言い聞かせ自分の部屋に入った。 そして布団に横になり・・・。




「健二にい、ご飯できてるよー!」




ドア越しに妹の声が聞こえてきた。どうやら寝てしまったらしい。




「今いくよー」




そう返事をしてリビングに向かう。それを待ち構えるように出てきたのは兄だった。




「健一兄さん、帰ってきてたんだ・・・」




「あぁ」




健一兄さんとはどうしても話ができない。

兄弟とはいえ、ステータスが違いすぎる。

1つ上の代とは思えないくらい大人びている。

そんな健一兄さんを見るとどうしても緊張してしまうのだ。




「いただきまーす!」




妹の明るい声が食卓に響く。


だが俺の隣は健一兄さんだ!これでは妹とも話せない。まぁいつも喋ってないけど・・・。



ところで気になった方も多いだろう、俺の家族について。

俺の家族は計6人、神的なステータスの兄、愛される性格の妹、そしてフリーターでぶらついている姉がいる。そのうち登場予定なので説明はその時にするとする。


あとは現在旅行中の母と父。この2人が酷すぎる。どちらもミテクレは良いのだがバカだ、いやアホあのかよくわからんが、基本家にはいないので説明しなくても物語に支障はないと判断する。


以上の6人が横田家の構成である。ん、ちょっと待て自分を忘れていた。最初にも紹介した通り俺は横田健二現在高2でこの話の主人公である。そんなことはどうでもいいって!?じゃ話の続き。




次の日、俺は1人で登校・・・のはずだったが、家を出る時間がまさかの健一兄さんと被ってしまった。わざと遅く歩いて距離を取ろうとしたが、それをさせないような微妙なポジションどり。



いや実に素晴らしい、と感心している場合ではない。一緒に登校しているのを見られると面倒だ。


なんといっても学校の有名人にして人気者、そんな健一兄さんが俺と登校していたら健一兄さんの人生に関わる。



どうしたら距離をとれるか。

そして1つのアイデアが頭に浮かんだ。



「健一兄さん、悪いけど忘れ物しちゃったみたいだから。と、とりに帰る・・・ね。だ、だから先に学校に行ってていいよ。」


「・・・」


「・・・」




えっ!嘘聞こえてなかった!少し間を挟み、もう一度言おうと口を開こうとした時




「あぁ、分かった」




と一言だけ口にして歩く速度を上げた。



俺はすぐさま方向転換をし家に帰る素ぶりを見せた。がもちろん帰る気はない。健一兄さんが見えなくなるまで待ってからゆっくり学校に向けて歩き出した。




ひどく動揺したが、これでうまく切り抜けた!と自分を褒めた。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




学校に着くと、またあの手紙が俺の下駄箱に入っていた。少しため息をついてその手紙を手に取った。



「・・・ん!、えぇー!」



少し大きな声が出た。周りの生徒の視線を感じ、手紙をポケットに隠しその場から逃走した。そしてトイレに逃げ込んだ。



さっき声を出してしまったのには理由がある。なんと表紙に差出人の名前が書いてあったのだ。

トイレの個室でそっと先ほどの手紙をポケットから出そうとした、が手紙がない!


あれっ、どこだ確かポケットにしまったはずなのに、まさか途中で落とした!


慌てて個室から出て下駄箱へ向かった。

だが下駄箱で何か人の群れができている。



なんなんだよ、こんな忙しい時に!よく見るとそこに健一兄さんがいた。周りの群れは女子のようだ。手紙を探したいが人が邪魔で難しい。


てかなんで先に行ったはずの健一兄さんが今来てるんだよ!そんなことを考えていると健一兄さんと目が合ってしまった。健一兄さんはこっちはゆっくりと向かってくる。


逃げようとしたが、先に声をかけられた。




「健二、お前忘れ物を取りに帰ったんじゃなかったのか?随分と速かったんだな」



「えっとそれは、その・・・てか健一兄さんはどうしてこんなに遅かったの?」


「あぁ、それは途中で道に迷った外人がいたから案内をしていたんだ」


「が、外人ですか」


「あぁそうだ、金髪で・・・あれは多分イギリス人だな」


「そ、そうですか」




早くどっかいってくれー!そう思いながら返事を返した。




「外国の人と話せるなんてすごーい!」「さすが生徒会長!」「さすが横田健一!」




今の話を聞いてきた周りの群れが歓声をあげる。




「健二、俺は教室にいく。お前も早く自分の教室に行けよ」





そう言うと周りの群れと一緒に教室へ向かっていった。


あれじゃまるでどっかの貴族だな、と少しため息をつく。


教室に戻るか・・・ってそうじゃない!俺は手紙を探しに来たんだ!


下駄箱付近を探したもののその手紙が出てくることはなかった。



くそっ!差出人の名前なんだったっけな。

確か、す、鈴木・・・なんだっけー!

なんでよくある苗字なんだよ!この学校に何人いると思ってる!名前覚えとくんだったー。



1人で頭を抱えているとチャイムが鳴った。


あ、遅刻だ!やばい、今日は不幸続きだ!





教室ではホームルームが始まっている。

やはり遅れて入るのは注目を浴びて入りづらい。



なのでホームルームが終わるのを廊下で待つことにした。すると教室の中がやけにうるさくなった。壁越しだったが、何を騒いでいるのか聞こえた。転入生が来たようだ。しかも女子らしい。男子生徒が歓喜に満ちているのが伝わってくる。



ホームルームが終わり担任の先生が前のドアから出て行く・・・俺はそれと同時に後ろのドアから入った。


生徒はその転入生に興味津々なようで、その席に人が集まっている。てかそこ俺の席の隣じゃん・・・。


他の人にバレないようそっと席に着き、必殺技!寝たフリを使う。腕を枕にしうつ伏せになる。この状況で話しかけてくるやつはよっぽど仲が良くなければ話しかけてこない。そして自慢じゃないが俺には友達がいない。よってこの技は最強と化するのである。


だが寝たフリとはいえ、周りの話し声は入ってくる。




「どこから来たの?」「何人なの?」




そんなようなことを尋ねている。ってそれ両方同じ意味なのでは!とか思いながらも寝たフリを続けた。




「その髪、凄くいい色だね!その髪の毛もともとなの?」




質問は続いている。早くどっかいってくれー!せめて席変えてやってくれ!


そう思っていると1限のチャイムが鳴った。と同時に周りの生徒が自分の席に戻っていく。これでやっと顔を上げられる。そして隣を見た。そこにいたのは金髪の多分イギリス人の生徒だった。



これもしや、朝健一兄さんが言っていた人なんじゃ!てか普通に可愛いんですけど。俺の目がー、勝手にそっちへ向いてしまう・・・くらい可愛い。これでは授業に集中できない。


けどこの美女の隣で授業が受けられるのか。神さまありがと!そんなことを思いながら天に顔を向け手を組んだ。




「横田くん!」




先生の声が俺を正気に戻した。危ないもう少しで天に昇るとこだった。



そっと隣見る。すると金髪の美女はこちらを見て手で顔を抑えクスクスと笑っていた。俺もそれを苦笑いで返した。




今日一日、授業をまともに受けることができなかった。あんな美女が隣にいたら黒板なんて見てる場合じゃないよ!それに休み時間も

俺の周り、転入生の周りに集まって騒いで、まったく羨まし・・・うるさくて休憩にならなかった。



そんなことを思いながら下校する。



家に帰ると妹が出迎えてくれた。この瞬間が一番幸せだと感じる。いつものごとくぶっきらぼうな返事をし、またやってしまった!と後悔する。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



4月19日、朝窓の外を見ると雨が降っていた。今日は気分が良い。なぜなら俺は雨が好きだからである。傘をさすと顔が見えずらくなる。つまり俺という人間をいつも以上に認識しづらくなる。だから雨は素晴らしいのだ・・・と一人で話を完結していると妹の声が聞こえた。



「健ニにい!起きてますか?朝食もうできてますよ!」




俺は何も言わなかったが、心の中で

「分かったよー」と元気な声で叫んだ。



リビングに行くと聖奈がいる。




「もう、健二にい遅いです!健一兄さん先に行っちゃっいましたよ!」




俺は縦に一回頷いて、食事を始めた。


少し怒ったような顔をしていたが、それが聖奈だと逆に元気がでる。勘違いしないでよ、元気がでるとか言ってるけど変態じゃないからね!・・・ツンデレ要素を交えて心でつぶやく。



「ご馳走さま・・・じゃ先、私行くからね!」


「おう、気をつけろよ」


「全く、健二にいはなんでこうもっと元気よく、送り出せないんですか!」


「それが俺なんだよ」




聖奈は諦めたようにため息をつき、家を出た。



さて俺も学校に行くかね・・・。

サボりたい気持ちはあるが、休むと健一兄さんが怖いので、休むことはできない。それに昨日の転入生を見に行くと思えば学校も大して悪くない。

そして俺は家を出て学校へ向かった。



学校に着く。下駄箱を開ける・・・あっ!忘れてた、そこには毎度のように置かれている手紙があった。


転入生のことで完全に忘れていた。今日は名前が、書いてないだとー!

名前がないのを確認し内容は読まずをそっと手紙を下駄箱に戻した。

手紙のこととか、転入生のこととかもう頭がいっぱいジァーー!っと叫びたかったが心の中にしまっておいた。



教室に入ると昨日同様、転入生の周りに人だかりが出来ていた。それに俺の席に女子が座ってる・・・顔は見たことがある。多分同じクラスだろう。名前は、えっと・・・少し考えたが思い出せなかった。



そっと席に近寄り、どいてくれ!とアピールするが気付いてもらえない。とその女子が振り返りこっちを見る。驚いたような顔をしていた。




「え、えっとあの、そこ俺の席なんですけど・・・」




やばっ!女子と話すとか無理なんですけど。まじ恥ずかしいんですけど・・・。




「あーごめんごめん、えっと名前なんだっけ?」




笑ってごまかしたがその女子は俺の名前すら覚えていないらしい。まゃ俺も人のこと言えないけど・・・。




「よ、横田だよ・・・お、おはよう?」


「あー横田くんか!・・・ってなんで挨拶疑問形!」




なぜか爆笑してくれた。でそっちの名前なんだよ!と言いたいところだが、この女子とはこの先話すこともなさそうなので聞かなかった。てかはやくどいてくれます!?目で訴えた。

しばらくしてようやくその女子は席を立った。




「私、佐倉 いろり!よろしくね!」




丁寧で明るい自己紹介だった。少し可愛いとか思ったが、のちに単にこいつがあざとい女だと知ることになる。


そして今日も授業に集中できないまま1日が終わった。帰り道俺はあることに気づいた。

そういえば!金髪美女の名前知らねー!

どうでもいいようで大事なことを聞きそびれた。まゃ明日名前聞ければいいか・・・。そうため息をつき、明日の名前を聞くという試練に向けて、よしっ!と気合を入れた。









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