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玩具聖剣伝説  作者: 速翼
1章 日本人異世界にて
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1章 1話 異世界人と勇者

これは割とマジでマズイ。と修はそう内心で一人ごちる。何も無い平原と、遠方には大きな黒い城。くろいしろ、くろなのにしろ、という冗談は置いておいて。目の前には何故か、腰まである赤く長い髪の超絶美女。紅い軽鎧を身に着けているが胸とへそが開けている謎設計。これでは防御力が無いだろう。しかし胸はかなり豊かで、つい修は見入ってしまう。しかし彼女は尋常じゃないくらいにボロボロなのだ。肩は外れているのか右腕が力無く垂れ下がっている。左目に傷を負い見えていない様だ。


「あなたは誰?どこから来たの?何が目的なの?」


美女が威圧するように険のある表情で問うてくる。どこからか現れた長剣を修に向ける。修はそれに気圧され後ずさる。


「え、えっと...自分は柊修20歳、アルバイト!日本の田舎から来ました!最寄りのコンビニまで自転車で5分の不便な土地です!目的は...ありません!自分は何故ここにいるのかはサッパリでございます!しかし、強いて言えば小説家を目指し、日々精進しております!」

「...はい?」


聞かれた事を正直に答えた所、心底不思議がられた。


「と、とりあえず剣を下ろしてください!!」


そこからは修は必死に自分が無害だと美女に説明した。


「つまり、あなたは異世界から来た一般人って事なのね?」

「はい、おそらくは。ここは自分の住んでいた日本とは別の場所のようで貴女の話を聞く限りは、この世界には魔法があるという事でした。自分の居た世界には魔法は架空の存在でしたので。そうするとこの場所は自分の居た世界とは別の世界、異世界という事なんじゃないかと思います」


彼女曰くこの世界には魔法があるらしく、聞いた限りでは文明レベルもさほど高くない。加えて突然の転移。これはなるほど異世界ものの小説みたいだと修は納得した。


「...にわかには信じ難いけど、その変な格好と変な言葉はあなたが異世界人と言うならばまぁ納得出来る話ね」

「まぁ自分もいまいち状況を理解出来て無いんですが、とりあえず疑いが晴れたなら何でもいいです」

「まだよ」

「え?」


とりあえず話が終わったとほっとした修に美女は言葉を続ける。


「一番大事な話よ。その凄まじい覇気を纏った剣は何?」

「これは...」


美女に鋭い眼光で射抜かれる。しかしその目には微量の怯えや恐怖も含まれている。

確かに修は剣を持っている。凄まじく光り輝いていて派手だ。しかしこれは剣の玩具だ。不思議と光ってはいるが正直に玩具だと言って果たして信じてもらえるのか。余計に怪しまれるだけなのではないかと。すると


『私は我が主君、修殿を主とする聖剣。我が主君は貴女への害意は無い。安心して欲しい』

「剣が...喋った?」


修の持つ剣から声が聞こえる。それは澄んだ女性的な声だった。その声に修は狼狽え、美女は剣を構える。


『初めまして、我が主君。私は異世界への転移時に生まれた剣の自我。私が主君の所有物である以上これから長い付き合いなると思われる。何卒よろしく願いたい』


剣は声を発する度に発行し、修を主君と呼び挨拶する。修は何が何なのか分からず、とりあえず


「よ、よろしく」


修は困惑しながらもとりあえずそう返した。しかし、全くもって不可解。何が起きてこれが何なのか何一つ理解できない。修は全力でパニック中だ。


「ど、どういう事よ!!」


美女は困惑のあまり構えていた剣を修に向け怒鳴る。


「と、とりあえず!!剣を下ろしてください!!」


修が美女を宥めようと声を上げると、グラリと美女が修に力無く倒れかかってきた。そのまま美女は剣を落とし修に寄りかかる。


『女性のバイタル低下。生命力の基準値を大きく下回っている。回復を提案したい』

「えっ?え?え?」


修のパニックが加速する。今は何が起きているのか全く理解できていない。今にも止まりそうな弱々しいいきづかいの美女を見てとりあえず修は剣に相談する。


「ど、どうすればいいかな?」

『主に治癒には回復魔法やスキルが一般的』


これはまた異世界だな、と魔法やスキルという単語に修は納得する。と、考えていた修に剣が続ける。


『しかし、主君は回復魔法及びスキルを所持していない。よって習得から始めなければならない』

「習得ってそんな簡単に出来るの?」


転移、異世界、武器、魔法とくればやはりお次は無双するのが異世界モノのお約束。修は自分にどんなチートがあるのか期待に胸を膨らませる。しかし、続けられた剣からの言葉は修を酷く落胆させる。


『無理。主君は魔法適正がほとんど無く、スキルの習得も簡単じゃない。だから習得は無理』

「え?じゃあどうやって回復させるの?」


剣に回復させろと言われた手前、自分には回復できないと言われると余計に混乱する。


『主君は『テクノ』と呼ばれるオリジナルスキルの作成、習得及び使用が可能。でも私が居ないと使えない』

「スキルの作成?」

『主君の持つ端末を開いて欲しい』

「僕のスマホの事?」


修は言われた通りにポケットから携帯端末を取り出す。そして電源を入れた。すると茶髪の長い膝まであるツインテールを地面に触れてしまっている体操座りした女の子の絵が映る。これは修のお気に入りのキャラだ。


「充電が100%になってる!!」


修は携帯端末の充電残量を見て驚いた。転移前に少しアプリゲームをしていて充電残量は50%を下回っていたはずだったのだが、今は限界100%まで回復している。たまに端末のバッテリーが消耗しトラブルを起こす等は聞く話たが、100%まで回復するのは聞かないし、なにより修は最近携帯を変えたばかりだった。


『それはおそらく先ほどまでここで戦闘があったからだと思う。この世界でのその端末の法則として、魔力を吸収して充電残量を回復出来る。そしてその回復方法は魔力の譲渡及び死者からの吸収の二択のみ』

「うん?でも周りに死体も魔力を譲渡出来そうな人は居ないけど?」


そう言って修は平原を見渡す。やはり死体どころか城以外の物体が無い。


『そう、普段ならばの話』

「え?じゃあつまり?」


剣の含みのある言い方に修はもどかしさを感じる。


『普通、魔法を使う者は大気中の魔力からの自然回復や魔力の譲渡等で魔力を回復させる』


修は剣の説明に黙って聞き入る。


『だけど、魔法適正がほとんど無い主君は大気中からの魔力回復はほとんど無意味。だからその互換として何故か死体からの吸収が出来る』


未だ答えの出ていない為、修は簡単に相槌をうち話の続きを促す。


『でもここには魔力の譲渡どころか死体の一つも無い。でも実はつい先程までは死体があった』

「え?」


剣の導いた答えに修は尚更に困惑する。


『ここの大気の魔力の濃度は通常の数十倍もあるのがその証拠。おそらくここの土地は死体と魔力を吸収する性質があるんだと思う』


剣からその事を聞き修は驚きを隠せない。つまりこの土地は人が死ぬとその死体を吸収してその場には何も残らないという事だ。修は凄く不気味に思い、数歩後ずさる。


『ここの大気中の魔力が多いから魔法適正に優れない主君でも大量の魔力回復及び充電が可能になった。という事だと推測する』


剣の推測を聞き一応は納得する修。しかし単純に充電が回復する意味が気になった。


「で、結局はこの充電は何かに使うの?」


そもそも充電云々の話になったのは剣が美女を回復させろと言い出したからであって魔力回復の話で大きく話が脱線していた。


『その端末に新しいアプリが入っているはず』

「うわっ、いつの間に」


修は端末をスワイプし、アプリ一覧を出すと自分の知らないアプリに驚く。修はそのアプリ『テクノ管理』を開く。


「うわっ、使い方分からねぇ」


『テクノ管理』はあまりにも複雑過ぎた。



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