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玩具聖剣伝説  作者: 速翼
序章 各地にて
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序章 2話 勇者対魔王

暗雲広がる広い廃れた地。堂々たる佇まいの禍々しい黒城。そこに集う武装した人々。その中でも一際強いオーラを放つ2人が向き合う。


「ついにこの時が来たわね、覚悟なさい魔王!」


真紅の軽鎧に身を包む紅髪の美女が叫ぶ。長身で細身、なのに胸は豊かで多くの女性の妬みを買いそうな全て備えた美女。つまり備女。彼女が手に持つ武器は少し異質で武器と呼ぶには些か不安がある。その武器とは人の背丈を越え余りある大きな旗。その先に刃がついてはいるが、戦闘力は余り高くは無さそうだ。


「勇者さまぁ。私は不毛な戦いは望んでないんですよぉ。お引き取り頂けると幸いですぅ」


困り顔で黒いドレスの金髪少女が答える。少女の容姿は美しく、外見年齢も11~12歳程。人によってはもっと幼く見えるかもしれない。成長すればさぞ綺麗な美人になるかもしれない。だが、少女は子供ではない。さらにいえば人間では無い。その証拠にこめかみから内側に歪曲に伸びる赤い角が生えている。


「人類の希望を背負ってこの場にいるのよ!こんな所で退けない!私はアナタを倒して最後に笑うわ!」


紅髪美女はそう言うと手に持つ旗を地面に突き立てる。すると背後に立つ紅髪美女側の軍勢が雄叫びをあげる。


「もはや交渉は無理なようですねぇ。仕方ありません...」


金髪少女はまたも困ったように呟く。そして下を向くと、突如少女に黒い靄がかかる。


「テクニカルコード077『グリッチモード』」


少女が呟くと機械的な音声が技名を唱える。すると黒い靄は少女を多い包む。やがて靄が晴れ、中から衣装の変わった少女が出てくる。黒を基調としたドレスから赤を主に色付けされたドレスへと変わり、赤みのかかった黒い翼が生えた。


「納得がいくまでオレが相手してやるよ!!死にものぐるいで向かって来やがれ!!」


少女は乱暴に言った。先までの少女とのあまりにもの違いに困惑しそうになるが、気迫、雰囲気、声量、眉間によった皺。その全てが少女の狂気を引き立て、周囲の者は恐怖を感じただろう。それほどまでに今の少女に違和感を感じない。むしろ子供だと思って気を緩めていたのか、少女の佇まいに気圧され腰を抜かす者も少なくない。


「怯むなぁぁぁ!!!闘槍旗流奥義 黄の型『鼓舞旗槍』」


恐怖で満ちた大地にふと怒号が轟く。思わず声の方に顔を向けると、紅髪の美女が自分の背丈の倍はある旗を力強く振っている。先程まで布部分が白かったその旗は今は金色に光り輝いている。

すると周りにいた怯えていた者達の身体も同様に金色に発行しだした。その後怯えていたはずの者達が続々と武器を手に取り、構え、吠える。


「我ら討魔軍に負けはない!!ここまで付いてきてくれたアナタ達の命、最後にもう一度私に預けて!!」


うおぉぉーーー!!と美女率いる討魔軍が吠える。


「おめぇら黙ってオレについてこい。死して負けても誇りを忘れるなぁ!!」


おらぁぁーーー!!と少女率いる魔王軍が吠える。


「闘槍旗流奥義 赤の型 『紅蓮旗槍』」


紅髪美女が旗を構える。布部分は輝くような黄色から燃えるような赤色に変わる。そして、旗全体に超質量の炎が灯る。


「アタックコード045 『デア・トート』」


金髪少女が腕を振り上げるとどこからか黒く巨大な鎌が出現する。その鎌は黒い瘴気を纏っている。


「はぁぁぁ!!」

「せやぁぁ!!」


少女と美女が激突する。質量と質量のぶつかり合い。両者共に威力が強すぎる為かぶつかった衝撃で周りの者は吹き飛ばされる。




それから数時間が経った。もはや立っているのは少女と美女のただ2人。

しかしその2人もまた満身創痍。美女は右肩が外れ左目が潰れ、長く美しい髪も血に濡れ黒ずんでいる。少女に至っては左腕が無い。戦いの最中に千切れ飛んでしまった。整っていたその顔も苦痛に歪み見るに堪えない。2人とも女性と忘れてしまいそうな程、荒々しく痛々しい。


「思ったよりしぶといわね。今降参するなら命までは取らないわよ?」


美女は相手が降参するとは思っていないが、疲弊し無防備な少女への嘲笑のつもりで言った。だが自分もまた同様に消耗している。お互いに攻撃されれば死は免れない。


「...!?」


唐突に、少女が何かに気付いたのか後ろを振り向く。そして美女もその後その何かに気付く。何か言い表せないが、何か規格外のそれがここに来ている。殺気や狂気を感じる訳では無い。だがあまり好ましくない気配に美女は身構える。


「...何...だ?くそっ!テクニカルコード008 『ワープゲート』」

「ちょっと!逃げる気?」

「ったりめーだくそ!コイツはヤベェ。オレは負けられねぇんだよ!」


少女は乱暴に吐き捨てる様に言った。すると少女の前に禍々しい漆黒の穴が現れた。少女は逃げるようにそそくさとそれに入っていくと、しばらくして穴は消えた。


「そんな..あと1歩で...たった一押しで魔王を...倒せたのに」


美女はその場に項垂れる。懸命に尽力してきた人類の悲願がここで潰えた。


「...近い!」


好ましくないその気配は次第に強く感じるようになる。すると


「くっ」


突然虚空が強く白く発光する。その光はどんどん強くなり、大地を包み込む。しかしその眩い光に不快感は無い。依然として気配は感じるのに少し心地良いとまで思う。まるで戦の労を労うようにも、散っていった仲間の命を弔うようにも感じる優しい慈愛の光に思えた。

次第に光が弱まり目を開けると


「えっと、こんにちは」


力強いオーラを纏った剣を持つ、ものすごく困ったような顔をした青年が苦笑しながら挨拶していた。


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