#005「メリーゴーラウンド」
――メリーゴーラウンドが勝手に廻ってることがあるらしいよ。誰も乗っていないのに。明かりが灯っているのはとても綺麗らしいんだけど、ね。
*
小林「異常なし、で良いのかな。念のため、もう一度、点検しようかな。でも、あんまり時間を掛けると、局長を待たせちゃうし。ウーン」
♪低くブーンと唸る音。
小林「おかしいな。電源は切れてるはずなのに。チェックミスかな? やっぱり、再確認しようかな。でも、それにしても、……綺麗だな」
放送『やぁ、よい子のみんな。メリーゴーラウンドへ、ようこそ。何に乗るか、もう決めたかな?』
小林「エッ。ウーン、そうだなぁ」
放送『まだ迷ってるそこの君には、白馬がお似合いだと思うよ。そっちのお嬢ちゃんは、苺の馬車に乗ったらどうかな?』
小林、フラフラと白い木馬に近付き、跨る。
放送『ちゃんと乗れたかな? それじゃあ、ゴー、ラウンド!』
*
小林「ワハハ。ボクは、白馬の王子様だ!」
局長「小林くん。遊んでる場合じゃないわよ。仕事で来てるんだからね」
小林「今度こそ、銀のポールを掴んでやるぞ!」
局長「何を言っても無駄ね。夢中になりすぎて、聞こえてない」
局長、トボトボと歩き去る。