#002「アクアツアー」
――遊園地が営業していた頃にも、アクアツアーで「謎の生き物の影が見えた」なんて話が何度かありましたね。それ、今でも見えるらしいですよ。
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高橋「ビッグフット、ネッシー、スカイフィッシュ。龍に天狗に、河童にツチノコ。古今東西、未確認生物の証言には事欠かないが、どれも科学的根拠が無いものばかりなんだから、実在しないに決まってる。おおかた、見間違いだったと認めたくない誰かが、理屈と膏薬を捏ね繰り回して、もっともらしく広めたんだろう」
高橋、水槽の中に降りる。
高橋「水は抜いてあるし、生き物の姿なんて、影も形もないじゃないか。排水溝の中だって、水草くらいしかな、いっ」
高橋、ペンライトを落とす。
高橋「いま、目玉のようなものが見えたような……。いやいや。まさか、こんなところに生き物が潜んでるはずないじゃないか。ハハッ。疲れ目だな」
高橋、ペンライトを拾おうとしゃがむ。
♪ピチャッピチャッ、という音。
高橋「どこかで水が洩れてるんだよな。そうだよな、オイッ」
高橋、振り返り、ヘナヘナとへたりこむ。
謎の生き物「ウゥー。フゥー」
高橋「アハハ。驚かせるつもりはなかったんだ。それじゃあ、オイラは失礼するよ?」
謎の生き物「シューッ」
謎の生き物、高橋を触手で捕らえる。
高橋「ちょい待ち。こんな骨皮筋衛門を食べても、硬くて美味しくないと思うよ? それに、解放してくれたら、肉厚で柔らかなグラマーを呼んでくるよ。ねっ? だから、離してもらえるかな」
謎の生き物「グオォーン」
高橋「ギャー」
*
局長「ボロボロの服と靴が残されてる、そして、腹部と思しきあたりに人間ひとり分の膨らみがある、ということは、つまり。……そういうことよね?」
謎の生き物「ゲフッ」
局長「食後の休憩を妨害する気は無いの。それじゃあ、お邪魔しました」
局長、ゆっくり後退りし、その場から離れる。