記憶
《死んだこともないくせに》
にはどんな意味が隠されているのだろうか。
どれほどの時間、ここに立ち続けただろうか。
足の痺れは感覚神経を混乱させ、今にも膝から崩れ落ちそうになっていた。疲労が溜まっている。それは僕自身が一番分かっていた。
しかし、どうして今僕がここまで疲れているかと言うと、自分でもよく分かっていない。脳が疲れて麻痺しているのだと思う。きっと、そう。でないと、これから
ビルの屋上から飛び降りなんてしないだろう。__________
「死ぬって、どういうことなのかな?」
新太は、そう僕に聞いてきた。きっとゲームのしすぎか何かだろう。新太は僕の家の近所に住んでいる友達で、周りに流されやすい性格の持ち主だ。今度はRPGゲームか何かだろう。
「いや、分からないかな。死んだことないし。」
そう、人は死の先を知らない。死の先を知る者がいたのなら、それは現時点で《人間ではない》ということになる。死の先を知る者は、続入《幽霊》やら《ゴースト》と呼ばれる者であり、生きていると断言できないからである。僕らは人間として生きている。新太も僕も同じ人間だ。だからこそ、僕らは死の先を知らない。
「そうだけどさ、知りたくね?」
ソファーから身を乗り出すようにして、新太は問いかけてきた。
「いや、深く考えたことないかな。」
僕は死に対し無関心である。死ぬことに深い意味はないと僕は思う。無関心だが、こう思うようになったのは、ある日の朝の出来事がきっかけだった。
「うわ、猫轢かれてるよ!気持ち悪ぅ…!」
朝、何気なく登校している日のことだった。僕は一匹の猫が道路で轢かれ死んでいたのを見かけた。その猫の姿を見て、人は『可哀想だね』だの『気持ち悪い』だの自分の感情を吐き散らかしている。
しかし、彼女だけは違った。
「ただの猫でしょ。生きてても、死んでても猫は猫だよ。」
僕の後ろから声がした。振り返るとそこには髪の長い、自分と同じくらいの歳の女の子が猫をじっと見つめていた。その子の猫を見つめる目は、どこか遠くを見ているようで、吸い込まれそうになるくらい綺麗な瞳をしていた。
「猫は猫でも、この猫、死んでるんだよ?」
僕はそう彼女に問いかけた。すると彼女はキッと僕を睨んだ。
「貴方には何も見えてない無い。死んだこともないくせに。」
《死んだこともないくせに》
確かに彼女はそう言った。少し驚いた顔をしていると、彼女はこう続けた。
「死ぬということは、貴方なんかより余っ程綺麗になるってことよ。死んだものに対して、自分とは違う。生きている者より下だ。そんな見方するのやめてくれない?」
彼女は言い終わると猫の元へとゆっくりと歩み寄った。僕の背中に冷たい風が通り抜けた。彼女はその猫を抱き抱えこっちに戻って来たのだ。彼女は僕のことをきつく睨むと、学校とは逆の方向へ歩いて行った。その時の彼女の背中は、どこか悲しげに見えた。
写すの疲れます、はい。
つづきまーす、、、