貝を焼く
昨夜、海鮮系の居酒屋へ行ってきた。
ちょっと前に流行り出したと思ったら、勢いよく広がってきている、貝を焼いて食べられるアノ店だ。
貝をそんなに焼きたいのか、と聞かれたら私ははっきり答えたい。
はい、焼きたいです。
家で焼くのではダメなのだ。
居酒屋で飲みながら火の通ってじわりじわりと開いていく貝を見ながら気持ちの高揚する感じがたまらない。
私のお気に入りは帆立とハマグリ。
焼きあがった物をお皿に取りお好みの醤油やタレを付けて食べたり、焼いている途中にタレを落としたりする。
私は途中でタレを落とすのが好き。貝から出てくる汁にじんわりと染み込むところが本当に美味しそう。
ところが困ったこともある。
帆立やハマグリの様な二枚貝は、ご存知の通り、貝を閉じている。
焼くにつれて開いてくる時に何故だか上側に身が付くのだ。
恥ずかしながら私は上下どちらかの殻に貝の本体がしがみついている物だと思っていた。
なので、どうしていつも上に付く様に置いてしまうのだろうか、と真剣に悩んだりしたのだ。
きっとこいつはコッチ側に引っ付いているな。
だったらコッチを下にしてやる!
お!
やられた!
またしても上に付いていたか。
よし、こいつは裏をかいて、今から置こうとしているのと逆の方向に置いてみよう。
・・・などとお馬鹿な事をやってみたりした。
何をやっても上に着くので当然下の殻に貝の出汁が溜まる。
この出汁の中に貝が浸かっている状態の、まさにその中にタレを染み込ませたいのに。
パカっと開いてから上下を逆にひっくり返さなければならない。
その際に出汁がこぼれてしまう。
何て事だ。
出汁をこぼしながらも何とかひっくり返しても今度は貝が取れない。
トングを手に悪戦苦闘していると店員さんがしばらく焼けば簡単に取れますよ、と教えてくれた。
しまった。
見るに見かねたのだろう。
こんなに必死な客は他にいない様だ。
しばらく手をかけずにほって置いた方が良さそうだ。
焼き過ぎないか気になりながらも、余裕ぶってトングを持つのをやめた。
ああ、気になる。焼き過ぎて身が硬くなるのは嫌だなあ。
まだ、大丈夫かなあ。
いや、気にしない、気にしない。
何気なく前方のテーブルを見ると網の上の貝がパッカーンと完全に二つに広がっている。
そして何食わぬ顔で貝の身を取り上げ出汁に落としているではないか。
そうか完全に広げてしまえば出汁もこぼさずに済んだのに。
今までどれだけの旨味溢れる汁を無駄にしてきただろう。
二枚貝は熱した場所から殻から離れていくんですってね。
何度やっても下から離れて上に付くはずだ・・・。
知らない、って怖いわ。本当に。




