プロローグ
-ガタガタガタ-
このデコボコとした悪路を揺られること2時間。そろそろ私のお尻も悲鳴を上げている。痛むお尻をさすりながら周りを見渡すと、狭い馬車の中を私と同じようにおしりの痛みに眉根を寄せている人々が何人かぐったりとした様子で揺られていた。ふと横を見るとこれまたぐったりとした様子の男が青ざめた顔で私に話しかける。
「・・・おい。カトレアには一体いつ着くんだ。」
「もう少しのはずなんですけど。・・・大丈夫ですか?」
私の問に答える様子もなく、またぐったりと目を瞑ってしまう。
私達はこれからある事件の調査の為、「カトレア」という村に向かっているのだ。
---遡ること3時間前----
ドタドタドタドタドタッバァン
「先生~~!!!!」
大きな声を出しながら階段を駆け登り、部屋の扉を勢いよく開ける。勢いよく開かれた扉によって、近くにあった山済みにされていた本のタワーがドサドサと雪崩を起こしているが、扉を開けた本人は崩れたタワーには目もくれず、舞い上がった埃に蒸せながら窓際の毛布に包まった塊に詰め寄った。
「先生!もうお昼ですよ、起きてください!いつまで寝てるんですかあ!」
「・・・・・うるさい」
「依頼が来ましたよっっと」
男を起こしにきたこの少女は、頑固に惰眠を貪ろうとする男の毛布をいとも簡単に引っペがした。
「はいはい、起きて」
「・・・馬鹿力め」
長い亜麻色の髪をサイドに1本、三つ編みにしたこの小柄な少女こと"アルマ"は、てきぱきとこの澱んだ暗い部屋のカーテンと窓を開け、部屋の空気を入れ替えていく。
「先生、先程依頼が届いていましたよ。」
「はあー・・・めんどくさい。」
そう呟きながら、ボリボリと頭を掻きながら階段を降りていく。
「あっ待ってくださいよー。」
アルマも先生を追いかけて階段を下りていった。