2013年 星新一賞 投稿作品 『地球還元薬』 落選
『地球還元薬』 あべせつ
すばらしい薬が開発された。
この薬を数滴垂らせば、原発事故で流出が止まらない放射能物質汚染水も、たちどころに元の美しい海へと戻った。
この薬は他にヘドロだらけの海や湖や池などの水質汚染された水脈にも多大な効果を発揮し、元の美しい姿へと戻した。
これはいける!
地球還元薬と名付けられた薬を世界中が喜び、こぞって使用をした。
次に、この薬を気化させ空中に撒けば、大気汚染にも効果があることがわかった。
とにかくこの薬は諸悪の根源を分子レベルにまで瞬時に分解して無害化し、地球を元の美しい姿に戻すことに絶大な威力を発揮するらしい。
工場から出る有害物質や車の排ガスなどのせいで地球温暖化の問題をかかえていた各国は、早速この薬をロケットに積み込み、世界中で時刻をあわせて一斉に大気圏で爆発させて気化させることにした。
これで一気に美しい空が戻るはずである。
人々は期待をこめて、ロケットの打ち上げを見に集まってきた。
スリー、ツー、ワン、ゼロ!!!
見る見るロケットは空高くへ飛んでいく。
ドカン!!
ロケットは無事に大気圏で爆発した。
霧状に拡散された還元剤が大気の中に満ちていく。
するとその瞬間、いっせいに人類すべてが消えさった。
あとには青く美しい太古の空が広がるばかり。