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放浪者-説得-

放浪者、前回までは

女子の勘違いを解こうと奮闘するが

淫らな攻撃にタジタジな楽之介

そこに女子の更なる追撃が!!

 女子の手が動く

片方の手は楽之介のモノを布越しに掴み、もう片方の手は楽之介を自分に招き入れ易い様、指を使って少し広げる。自分のモノを掴まれ、更には目の前でそんな淫猥な仕草を見せられて最早心は疲弊しきっていた。

そんな楽之介に止めを刺すように女子は遂にズボンに手を伸ばし、それを下に引っ張った。

ボロンと出たモノを撫でるように優しく指を這わせる

上から下へ、下から上へ、それと同時に艶かしい笑みを浮かべた顔が再び近づき楽之介の耳元で声を発した

 「やっぱりあたしのからだがほしかったんだよねぇ?」

 その声を聞き、女子が腰を下ろそうとするよりも先に

 「……っ!!」

 反射的に手が動いた

ドン、と女子の両肩を突き飛ばすように押した

手加減はしたつもりだったが、咄嗟のことで力が入ってしまったのだろう

それに体重が軽いことも相まって軽く離そうとした女子の体は人一人分程度余計に流され

そこでドサリと尻餅をついた。 

 「あっ、ご、ごめん!!」

 自分の力加減の甘さ故の失敗に対し謝る

だが、ここで謝ってそれで終わってしまっては女子を離した意味がない

 (ここで一気に分からせないと……)

 好都合な事に女子は尻餅をついてからこちらを無表情で見続けていてこちらに来ようとはしていない

この機会を利用してさっきまでまともに出来なかった説得を試みる

 「聞いて欲しい、俺は君とこんな淫らな行為がしたくて連れ出してきたんじゃ本当に無いんだ。俺の自分勝手な理由で勝手に連れ出してしまった事は申し訳無いと思ってるし、こんな形以外の責任だったらなんだって取るつもりだ。だから、もし君が連れ出されたことに対する報復のつもりでこんな事をしようとしてるなら止めてくれ!!」

 今言える限りの言葉を、真実を昂ぶった感情のまま言い放つ

全てをぶつけた今、後は女子が納得してくれるかどうか、祈るしかなかった

 「……たくない……?」

 そこで、女子が何かをつぶやきながら立ち上がりそのまま楽之介に近づいてくる

 「なんで……?」

 目の前まで来た女子は無表情で楽之介に問いかける

 「じゃあどうしてつれてきたの?」

 先程口走った『自分勝手な理由』について言及してるのだろうと察しがついた

しかし、本当の理由を、普通の人間からすればくだらないと見なされるであろう本当の理由を

今ここで打ち明けては、逆効果になるのではないか

そう思い逡巡してしまい

 「今は、言えない……落ち着いたらきちんと話すから」

 結果は、先送りにするという最低なものに落ち着いてしまった

そしてそれが当たり前の如く女子の心に怒りを芽生えさせたのだろう

無表情だったその顔はどんどん怒りを顕にしていき、問いかける声音は鋭いものになっていった

 「そうなんだ……じゃあなんでしてくれないの?」

 その問に楽之介は思うことがあった

なぜこの女子はこうもその事柄にこだわるのか

確かにあんな場所にいれば価値観や倫理観などが狂っていくだろう

しかし、この女子の性に対する欲求の深さはこの年齢にしては異常過ぎる

 「なんで、そんなに拘るんだい?」

 質問を質問で返すことは好きでは無かったがどうしても知りたかった

そんな楽之介に理解不能な回答が返ってくる

 「あたしはそれしか知らないから」

 そう言いながらも一瞬だけ女子の顔に悲しみが見えた気がした

それを見逃さなかった楽之介は問おうとするが

そこで顔に怒りが戻った女子が勢いよく、唐突に楽之介のモノを掴んだ

 「いっ……!!」

 掴むというより握り潰そうと握力を入れてるのかもしれない、かなり痛い

だが、そんな楽之介を意に介さず女子が言葉を発する

 「なんでこんなになってるのにしたくないなんていうの?おにぃさんはあたしの体できもちよくなりたくないの?なりたいよね?ほんとうはなりたいよね?そうでしょ?そうだよね?」

 半ば決めつけに近かい言われ方にきっぱりと返す

 「俺はしたくなんて無いし、君をそんな目で見るつもりもない」

 ぎゅうぅ、握る力が更に強くなった

 「なんで!?なんでしてくれないの!?おにいさんは『私』をかったのにっ!!」

 糾弾の声

 「おにいさんは『私』をつれだしたっ、『私』にはかえるばしょもない!!あのばしょにいれば『私』はあんぜんだったのに!!」

 最初は大きかったその声も少しずつ弱くなっていく

 「それに!!あたしは……あたしは……これしかしらないのにっ!!それなのにかったおにいさんにみすてられたら……」

 嗚咽が少し混じり始める

 「ねえ……なんでなの……なんで……」

 最初の勢いなど消えており、最後には楽之介に対する純粋な疑問と涙があった

責任がある、いや、責任しか自分にはない、やはり先送りはするべきではない

そう思い楽之助は意を決して口を開いた


 「似てたんだ」

 彼女の顔を、目を真っ直ぐ見つめる

 「……え……?」

 彼女は戸惑いの声を上げ俯いたが

 「愛してる人の幼かった頃の顔に」

 構わず続けた

 「あたし……が?」

 恐る恐る顔を上げこちらをみてくる

その瞳は涙が今にも溢れる落ちそうな程溜まっていた

 「そう、顔もそうなんだけど声も、それに一番好きだった笑った表情が特に似てるんだ」

先程までは怪しさの見え隠れする笑みだったが

それでも十分似ていて楽之介の鼓動を早くさせた。

聞き終わった彼女は再び顔を俯かせた

あまりにもくだらない理由で絶望しているのだろう、当たり前だ

自分の人生を狂わせたきっかけが他人の空似だなんて笑うに笑えない

そう思い、どうしても二の句が継げない楽之介に変わって

途中から静かに聞いていた彼女が口を開いた

 「それじゃあ、こうすれば……」

 ゆっくりと顔をあげる

 「おにぃさんは、してくれるのかな……?」

 満面の笑みを浮かべ、しかし、涙が流れ落ちている彼女の顔がそこにはあった

その言葉を聞き、満面の笑みを見た瞬間楽之助は昔を思い出す


―あの日、姉さんが帰ってきたあの日、姉さんに言われたこと、

最後まで意味がわからず拒み続けた俺に対して言おうとしてやめた言葉

そして、記憶があまり無いが意識の最後に残っている全身が痺れる様な

溶けるようなあの感覚、きっとあの時俺は過ちを犯したのだろう―


直感で悟る

多分彼女はあの時の姉と同じことを言おうとしている

それは絶対に言わせてはいけないことだった

言ってしまえば本当に戻れなくなる、楽之介自身が抑えても

そうなってしまえばもう彼女の心は普通の人間には戻れなくなる

あの時の楽之介は何も出来ず、ただ姉のしたいようになるがままだった

その結果が取り返しのつかない事を招いたのだ

だが今度は違う、今度こそは自分が助けなければいけない

大丈夫、今なら彼女一人くらい背負って生きていける


自分に言い聞かせるように心の中で唱え改めて覚悟を決める

彼女が何か言おうとしている、言わせてはいけない

手が、抜かしていた腰が、体が、動いた


 「おにぃさん、あたしを―――」

 彼女を抱きしめる

優しくそっと、壊れてしまわないように

 「おにい……さん?」

 戸惑いの声を上げている、関係なかった

 「君は、君の面倒は俺が見るよ、大丈夫君一人どうってことない

だからさ、こんな悲しいことしないで、一緒にいろんな事しよう

いろんな物を見て、いろんな所に行こう」

 途中からは感情が抑えられず、感情のままに言葉を紡いでいた

 「一緒に泣いたり笑ったりしよう、俺のことはどうしてくれても構わない

だからそんな悲しい顔でそんな悲しいことを言わないでくれ……」

 支離滅裂でいい、自分勝手なのは分かってる。

でも、どうしても伝えたかった

 「君は俺が守るから」

 

言い切った後に恥ずかしさに耐えながら思う、きっとこれは罪滅しなんだろう。

似ている、似すぎているこの子を助ければ

あの時の自分を誰かが、或いは自分自身が許してくれる気がしたから。

放浪者―説得―編でした

取り敢えず今回で放浪者側の序章は終わりですので

次回からの放浪者側はやっと普通の明るい話に持っていけると思います


今まではちょっと書いていく途中で路線が変わりすぎた……

といってもこの先(特に次に投稿するであろう別の人物視点の序章部分)にも怪しい描写がありますので今まで通り注意です


それではこれからもよろしくお願いします

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