七話
私が暮らすいわゆる魔王城には私の他に数十人が暮らしている
そんな数十人の食事を一手に引き受けるのが料理の鬼ことバルツさん
料理に対して飽くなき探究心を持ち、座右の銘は日進月歩な彼は私の希望に沿うように出来るだけ日本で食べたような食事を提供してくれようと努力してくれる
「今日の飯はどうですか?魔王様」
「親子丼!!!!有難うバルツさん」
ふわふわの卵に柔らかい鶏肉
食事は本当に大事だ
何て言ったって幸せになれる
「夕ご飯は何が食べたいですか?」
「バルツさんは料理上手だから悩むなぁ・・・・」
「光栄ですよ」
「ユズキ様、此処にいらっしゃいましたか」
「ユリウスさん?」
「これはユリウス様、お疲れ様で御座います」
「あぁ。すまないがバルツ、何時ものを頼む」
「はい。
では魔王様、後で希望を教えてくださいね」
胸に手を当て一礼するのはこの国の強い人に対する挨拶なんだと聞いた
この城で、過ごす事が出来るだけで結構強いらしいのだが、この国魔王以下六大貴族の面々にはとても敵わないらしい
最初はもっと硬い口調だったバルツさん
毎食時にお願いしたせいか漸く口調が砕けてきた
元々日本の会社で仕事を命じられたり、怒られたりしていた私は誰かに敬われるのが居心地悪くて、仕方ないと分っていても願って願った私の粘り勝ち
・・・別に何かと勝負した訳じゃないんだけど、気持ち的に
「ユリウスさん、私を探していたんですか?」
「えぇ。ユズキ様、一体エルンストに何をしたのですか?
アイツ、顔が崩れていたんですが」
「え」
一瞬グロイ想像をする
「あぁ、そうではなく、何と言うか普段のアイツは何処かに消えたように笑み崩れていたので」
「えーっと特には・・・あ、魔王になりますと宣言はしましたけど」
「魔王に?しかし貴方は既に魔王ではありませんか」
「えっと、何て言うのかな・・・魔族皆を守って、慈しんで、そんな王様になろうと思ったんです。
何もしなくても良いと、在るだけで良いと言われてずっと考えていました
私、お人形になるなんてまっぴらです。ちゃんと生きていきたい。
だから、私自身の存在意義と言うか・・・そういうものを求めるためにもちゃんと魔王になろうって」
ユリウスは笑う柚希に納得した
おそらくエルンストはこの笑顔にやられたのだろう
思えば、柚希の笑顔を見るのは初めてだ
泣き顔や思いつめた顔、思案の顔は見てきたが・・・これほどの破壊力をもつとは
「ユリウスさん?」
「いえ・・・・・・・・・貴方がそう望むならば我は全力でサポートさせていただきます」
「ユリウスさんにそう言っていただけると助かります。」
思っていた以上に待ち望んでいた魔王は最高だった
これからを思い心が躍るユリウスだった