六話
泣いて気絶して、三日
私はどうにかこうにかこの世界に慣れようとしていた
泣いて泣いて起きた時には少しすっきりしていた
外はとても明るくて、眩しかった
魔国は、国の端に行けば行くほど無法地帯らしい
それは平和な日本で暮らしていた私からしたら耳をふさぎたくなる現実
魔王は、そこにあるだけで良いという
在る事が重要で
この国に政治という概念は無いのだと
弱い者は勝手に死に
強い者は長い生に飽いて行くのだと
私は、この魔国で魔王になって、どう生きていくのだろうか
考えて、考えた
「魔王様?」
「エルンストさん、私
ちゃんと魔王になろうかなっと思う」
「それはどういう」
「魔族の、王様に。
私が知っている王様って、弱い人を守るのが仕事。国民を守るのが仕事
歴代の魔王の事なんて、分んない。空回るかもしれないけど
それでも私は出来る事をしたい
魔王の椅子に座っているだけなんて、居ても居なくても一緒だから
お人形になるのは嫌だから
私らしく、不器用でも前に進む」
言って、呆然とするエルンストさんに、にへらと笑いかける
暫く呆然とするエルンストさんにそんなショックなことを言ったかと少し心配しながら彼を置き去りにして部屋を出た
腹が減っては戦が出来ぬという
まっすぐキッチンに向かった
閉めた扉の奥、エルンストは頬を染めてぼうっとしていた
「・・・・なんて笑顔////」
普段の魔国六大貴族筆頭としての冷酷さ等影をひそめ
そこにいたのはもはや別人で
その姿は迷い込んだユリウスが回れ右するほど目に毒だったという