五話
エルンストさんとユリウスさんに魔国と魔王について聞いた
聞けば聞くほど、何故私がという気持ちが強くなる
ユリウスさんの言うように冷静な訳ではない
私はただ、驚き過ぎて訳がわかっていないだけだ
だって、昨日まで私は普通に会社に行って、上司に怒られ先輩に励まされ同僚と頑張ろうと共に仕事に励んだ
朝だって、嫌な夢を見たけれど当たり前のように支度をして、朝ごはんを食べてコーヒーを飲んで
ポロリポロリと涙が今さらあふれる
「魔王様」
「私、もう帰れないの?」
「申し訳ありません・・・呼ぶ術はあっても、還す術はないのです」
その言葉に涙が一気にあふれた
そうして、意識は闇に引っ張られる
「御眠りになられたか」
「色々限界だったのだろう」
「我等にとっては長く待ち望んだ、魔王様であったが・・・彼女には酷な事をした」
「だが外を見てみろ」
ユリウスの言葉にエルンストは外を見る
先ほどまで晴れていた空は曇天に覆われ雨が激しく降る
「魔王様の力だな、間違いなく」
「・・・・・えぇ
100年振りの雨、ですね」
魔王が存在しない国は魔力の供給がされないばかりか異常気象が発生し弱い者を殺していく
力がすべてのこの国では元々さして弱者は気に掛けられる事はなかった
それでも
それでも同族が新たに生まれる事が極端に減った事は問題だったし
特に弱ったが故に人族に容易く駆逐されるのは気分が悪い
新魔王の誕生は魔族の弱者も強者も強く、強く待ち望んでいたことだった
雨脚は強くなるばかり