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風の中から夢の中へ  作者: 椎名未来
第一章 裁かれるもの
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プロローグ

目をしかめながらパソコンのディスプレイを見つめる。

「うっわ……、やってらんねぇ」

 俺がそう、ぼーっとデスク越のテレビを見て言う。

 この警察っていうのはどうにも暇で、どっちかっていうと鎮圧諸々は今のテレビに映ってる自衛隊が主。

「なので俺たちは暇なわけで」

 ちらりとオフィスを見るけど、外務省出向の新人が窓際のデスクに、それに南の作戦傍受にいそしむ課員が俺含め八名。もっぱら俺はデスクワーク、

「って!」

 俺がぼんやりそれらをなんとも感慨深げに見ていると、おもいっきり後ろからひっぱたかれた。すぐに後ろを向くと長身にブラックのスーツにブラウスの女性が目に付く。

「高木くん、あなたちゃんとやってって言っているでしょう。何度、言ったら、わかる、の」

 言葉を区切りながらばしばし遠慮なくタウンページを振り下ろしてくるのはどうしたもんか。

 俺はその秀麗な顔に細いリムのメガネをつけた典型的 (なんていったらどうなるだろう)美人さんに言う。

「ちゃんとやってますって真菜さん。ほら、自衛隊、今動いてる途中だし、オーストラリア連邦もイギリスもうごいてませんし。連絡待ちなんですよって!」

 ふっと真菜さん、ここの長、警察庁情報局局長、佐々木真奈の攻撃を避けきると、ふーんと韜晦するように俺の顔をしげしげとみてくれる。見ていて悪い気分はしないがなんとも心臓にわりぃもんだ。

「まぁ、いいけどね。動きはないってこと?」

「ええ」

 俺はげんなりしながらPCを操作して、近似曲線、二項の定理からくる、各国の提示連絡を表示。

「今、発生している関東地区全域のネットワーク遮断、特に米軍と英軍との連絡遮断の首謀者は港区南青山にある五十階建てビル『ビリッジビル』の屋上にいると判明。現在航空自衛隊傘下の情報作戦部四課が交渉中、他警視庁よりSAT,SITもろもろでてますね」

 そう俺のやる気のない声にまた一発脳天にかましてくれる我がボスだけども、データとテレビをみながら後ろでまとめて結い上げてる髪を触って、

「やっぱりこれって南緯五度海域緊張の煽り?」

 俺がPCを切って、そのまま両手をひろげてテレビのほうを示す。

 相変わらずのデータ打ち込みと傍受に忙しい室内だけれども、実際は内閣の意向が強いらしく、次長もいやいややってるという噂。

「むしろカーペンタリア紛争じゃないですかね。首謀者は高校生ですから」

 ん? っと首を傾げる真菜さん。おお、いい感じに幼げに見える。でもこれでも合気道八段。

「ほら、だから。二年前の自衛隊遠征派遣。日本のイージスが誤射で十隻沈没。当事者の英軍は慰霊金と謝罪だけ。国際関係悪化を嫌がった日本はそれで遺族を黙殺。その遺族ってーのが、」

「この子、ってわけか」

 そういってテレビをみる真菜さん。液晶フラットの左済みにはどこのテレビ局が映しているのだろうか、屋上に男性が一人、女の子が屋上落下防止用フェンスに座っているのが見える。というかさすが零次。

「遺族は偶然にも全員中、高生。まぁ、だから納得もできるんですがね。でも、すぐに収まるでしょうよ。四課のエースの梶原零次(かじわられいじ)ですからあれ」

 へぇーとどうでもよさげに、いや真実どうでもいいだろうけど、いってからバンっとタウンページを俺のデスクに放り投げる真菜さん。

「高木君の同期のね。ま、それよりも、」

 そういってテレビの中心のほうを指さす。

「こっちのほうが問題なんだけど」

 俺ははいはいと言って作業に戻る。PCをつけ、英軍の公式文書の偽証作成をしながらニュースの声を聞く。


『――七日、以前独立を宣言を宣言してから強行姿勢を崩さないイギリスの属州、オーストラリア他州はオーストラリア連邦共和国と名前変え、小規模なテロ活動を行っています。一九二〇年の第二次世界大戦後にイギリス属州となったミクロネシア、ポリネシア、メラネシア、オーストラリア地域は、その後も属州ながらも小規模な紛争はあり、それがいよいよ、来月の国連による国際宇宙ステーション、ICPの完成を見ての独立と各専門家が述べています。これをうけ、国連メギル事務総長は七日昼にメルボルン入りをしており、一二ヵ国会議の早期開催を訴える方針です。しかし、一方のNATOの首脳の判断で、ソロモン諸島海域に国連平和維持軍、ISAFがNATO軍と展開する自体となっており、国連の総意と相反する形と――』



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