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第三話『職業:勇者兼見習い掃除係』


「アレクさんはどうしてこの国に…?」


「え…あ…えっと旅です!」


後ろを歩き、石が引きつめられてできた道を歩き続けると、フィーが声をかけてくる。

それを少々不自然ながらも返す、旅、外からきた理由はこのぐらいしか思いつかなかった、自分の発想力の乏しさというものがうらめしい。


「旅…?そんなに軽装で大丈夫だったんですか…?」


「た、食べ物とか底ついちゃったし、あとは宿においてきたんだよ!」


ごまかす、正直これ以上追及されたらボロが滝がごとく出てくる気がする。


どうしよう、これ以上の追及はされたくない、だったら――

そう思い、歩く速度をさらに加速させる。ズンズンと前へ進むことにした。


「あ、待ってください、前の路地をまがったほうが早いです。」


…止まり、羞恥心で顔が赤くなるのを感じる。まるでビデオの巻き戻しのようにして路地のちょっと前に戻り、曲がる。

そんな俺をみて、フィーはクスクスと笑い、その声を聞き、さらに顔が赤くなった気がしたが、ちょっと加速して、それによってできた風によって無理やり顔を冷やしていく。

それから2、3回ほど会話を続けていれば、路地が終わり、家々によってさえぎられていた光もさえぎるものもなく、本来の光の強さで目に入り少々まぶしい。

まぶしさに目がくらんだが、すぐに戻ったので目をちゃんと開けて目の前をみる。


――そこにあったのはなんとも幻想的な風景


インターネットなどで、幻想的な風景と検索すればでてくるような風景、白い城、そして壁が光を反射してキラキラと光る。


「うわぁ…」


そんな声しか出せない、それくらいの驚き。


「アレンさん、先に行かないで下さいよ。」


後ろからフィーの声、思わず走り出していたのだろう、後ろをみればゆったりと近づいてくるフィー、それを見ながら、ある程度近づいてきたフィーにむかって頭を下げた。


「…ありがとな。」


単純なお礼の言葉なのに、フィーは満面の笑みを返し、


「気にしないで下さいよ、とある少女のおせっかいってやつです。」


そうやってニコリときれいな笑みを浮かべる。

そうか、と小さく返答し、


「だけど、それでもありがとう、君がいなかったらどうなってたものか、いつか借りを返すよ。」


そういえば、フィーは困ったような笑みを浮かべる。


「別に、いいんですけどね…まぁ人の行為はむげにはしません、期待しないで…っていうとなんだか失礼な気もしますが、待ってますね、ではまたお会いしましょうね!」


そういえば、フィーはニコリと笑って路地へと引き返していく、一人で大丈夫だろうか、なんて思ってはみたものの、通ってきた道は意外と治安はよさそうだったしおそらく大丈夫だろうと思って俺は手をふって見送った。


フィーが見えなくなったことに、俺は見ていた方向と反対の城へと向き直り、大きな門へと歩いていく。

いたのはゴツイ…お兄さんとおじさんの中間くらいだろうか?

こちらをみつけ、2、3歩近づいてきたので、俺も近づいていくことにする。


「止まれ」


距離からして4メートル程度だろうか、それくらいで静止を命令されたので止まる。


「なにようだ。」


「…求人を見てきた。」


そういうと、納得したように頷き、俺の目を見てくる。


「ふむ、敵対心というのを感じられないな、城下町の門番とであったか?」


「はい、羊皮紙に血をつけましたが…」


「わかった、通そう、ついてきてくれ、城の裏手から入れる場所がある。」


そう俺にいうと、男性はこちらに背を向ける……信じてくれたということだろうか?

まぁここで問答しててもしかたないと思い、その背中を追った。


「んで、お前の名前は?おっと、いけないな、まずはじめに俺からだ…俺の名前はアルバート、よろしくな。」


「はい、よろしくお願いします。アレンです。」


「アレン、か。ま、正式によろしくなのは合格してからなんだけどな。」


…合格?何か試験でもするのだろうか…そうすると困るぞ、俺は文字すら読めない。

どうする、どうすると焦っていると、アルバートさんが止まったので俺もすぐに止まった。

そしてアルバートさんは茶色い扉へと指を指す。


「ここだ。」


木彫りのみすぼらしい扉、さきほどの城門とは比べるもないといえるほど。

まぁそれも当然といってしまっては当然ではあるけれど。

アルバートさんはコンコンと木彫りの扉を叩いてみる、


「…合言葉を。」


「合言葉?そんなもん聞いたことないんだが。」


「アルバートさんですか、今開けます。」


「ちょ、ちょっとまて、合言葉ってなんなんだよ。」


…おそらくアルバートさんは本当に知らないのだろう、顔をみればわかる、合言葉と言われた瞬間に本気で焦っていたし、今の状態も本気で聞きたがっている。

だがそんなアルバートさんをよそに、木の扉は開いて、そこからでてきたのは薄紫色の髪色をした耳の長い少女だった。


「アルバートさん、今回はどういったご用件で。」


淡々と語る言葉には、経験者というか、なんだか人生を長く生きているような落着きを感じられる。


「あ、あぁ求人をみてやってきたやつを…っておいその前に合言葉ってなんだよ。」


「その後ろの方ですか、どうぞお入りになってください」


「あ、はい…」


「あ、アルバートさんはもう持ち場に戻ってください、出入りの邪魔です。」


アルバートさんが再度合言葉について聞こうと問うが、完全に無視をする。それどころか邪魔だから帰れ発言、まったくどうでもよさそうだ。


「っあ…あーわかったよ、いきゃーいんだろ。」


俺と話すときの言葉とはちょっと言葉が違う、この少女のほうがずっとフランクだ。つまりは信頼してるってことなんだろう。

頭を掻いて外へと出ると、声もかけずに少女は扉を閉め、こちらに向き直る。


「はじめまして、メイドのトゥーナです。」


「…は、初めまして、アレンと申します。」


そういって礼をした後に、まっすぐとトゥーナといった少女をみれば、トゥーナさんはまっすぐとこちらをみている。

見透かすような目…目をそらしたいが、なぜかそらしてはいけないような感覚に襲われ、まっすぐと見続ければ、トゥーナさんが目をそらし、こちらに背を向けて歩き始める。


「合格ですね、…見習いとしてですけどね。ではついてきてください」


「え?あ、ありがとうござい、ます?」


言葉に詰まりながらだけども、ちゃんと返答を返し、その背を追う。

石でできた階段を上がり、少し歩くと錠のかかった扉が見え、懐から鍵を取り出して錠を外す。

金属音、そして錠は下に落ちる前にトゥーナさんの手の中に納まり、


「待っていてください。」


俺にそういって、トゥーナさんは入っていき、数分で戻ってくる。

パンッパンッと手にもっているものをはたきながら、こちらへと差し出す。


「…埃っぽいので洗っていただいたほうが良いですね。自分のことを管理することも使用人としての心構えです、自分で洗っておいてください。」


「あ、はい。」


埃をかぶり、黒を強調としている服は白っぽく見える。

それを受け取った時に埃が舞い散り、せき込むが、トゥーナさんはさっさと先に行ってしまったので、それを追いかけていく。


「使用人の部屋は基本的に数人で使いますが、あいにく一人になってしまいます。部屋はここの一番奥を使ってください。」


「はい。」


頷けば、ニコリとトゥーナさんが笑ったような気がした。


「では、明日から仕事にします。教育係の話は通しておくので、明日は教育係について紹介します。それからはそのかたの指示に従うように。服は洗っておいてください、まだ昼過ぎなので乾くと思います。今日は城の道筋などを理解するために、ある程度歩いたほうがよいでしょう。ですが迷惑はかけないように。」


「はい。」


すぐに頷き、トゥーナさんは短く別れをつげると歩いて行ってしまった。

それをみて、ふぅと息を吐いて自分の部屋と言われた部屋に鍵を使って入り、俺はふぅと息を吐いた。


「ま、うん、土台はできた…後でアルバートさんに剣でも教えてもらおうかな。」


俺はボソリと独り言を漏らすと、服を持って外へとでる。


職業に見習い掃除係が追加される――

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