見知らヌ男の人
「気をつけろよ。敵がいるかもしれない」
「言われなくても分かってるわよ」
奥の方へ進むと、さらに殺気が強まる。
人の死体は絶えずに踏み場を遮る。
するとさらに奥の方から不意に剣を交える音が聞こえた。
「誰ッッ!?」
私はバッと足を踏み切り、前へ出ると、見知らぬ男2人と父上がいた。
1人の男は父上を守るように戦っている。
「父上っ」
私はすぐに父上の元へ向かう。
父上は息を荒らしながら自分の胸を静めていた。
「ご無事ですか?お怪我は?」
「ああ、大丈夫だ。セレナ」
父上はどこにも怪我はないようで安堵の息をこぼした。
「おい、セレナ、入り口から敵が来てる」
安心する暇もなく、ゼイアは呟いた。
私の後ろで身構えた、ゼイアは俺にまかせろ、と視線で訴えてきた。
私は戸惑いながら眉を顰める。
すると、父上の前に立っている男が呟く。
「行け。俺だけで十分だ」
冷静な指示に私はさらに困惑する。
「あなた…誰なの?」
「後で、教えてやるよ。とにかく、そのお前の親父を守れ」
「待って!私は父上を守りながら戦えるわ」
「何度言わせる。俺だけで十分だ。本当なら、そっちの男も必要ない」
ゼイアはこっちを見て、自分を指差した。
「お、俺!?ひっどいなあ、君。俺、結構強いんだぜ」
「うるさい」
男は冷酷に呟く。
ゼイアは少し男を睨み、呟いた。
「しゃーねーな。ここは、協力するしかないようだ」
ゼイアは諦めたように頭を掻く。
私は、小さく頷いて父上を抱き抱え、空中へ連れ出した。
移動中に父上は呟く。
「すまない…セレナ」
父上は申し訳なさそうに目を瞑った。
私はその姿に違和感を覚えながらも、前に視線を向ける。
「私は父上を守る為にいるのです。絶対に、守り抜きます」
「頼もしいよ」
そういう父上は少し悲しげだった。
私達は、空中を飛び、とりあえず、他の幹部がいる施設へ向かった。
「クレイ軍官」
クレイ軍官は私の師匠である凄く強い人だ。
クレイ軍官は私と父上を見て、驚きの表情を浮かべる。
「どうした!?何があったというのだ?」
「すみません。しばらく父上をこちらでかくまって頂けますか」
クレイ軍官は、すぐに頷いてくれた。
「ああ、分かった。しかしあちらの状況が分からなくて困っているんだ。タワーには誰がいる?」
「今は、ゼイアと見知らぬ男が敵と戦っております」
「敵とは…?」
「制服から見ると、他国の奴らだと思います。軍官は、軍への指示をお願いします」
私は一旦話した後、また飛び立とうとすると父上が私を止めた。
「絶対に食い止めるんだ」
父上は力に漲った目を見せた。
「分かっています…」
私は目を逸らし飛び立つ。
あの目を見ると、なんだか、嫌な気持ちになってしまう。
自分が操り人形なのだと再確認してしまう。
私は広い空の中飛びながら、不快な気持ちを押さえつけた。
タワーへ向かうとすでにそこは戦地と化していた。
「参戦いたします!」
私は息強く戦地へ飛び込む。
ゼイアはこちらを見て微笑んだ。
「後ろは頼んだ」
私は魔術を唱えた。
地上にヒビが入るほどの風が強く吹き抜ける。
敵たちは壁に叩きつけられた。
頭から流れ出す血も気にせず私はとどめを刺していく。
しかし、ある一人だけ、こちらを恐れの目で見ず平然とした視線を送るので
私はそいつの首元まで剣を持ってきた。
「お前たちはどこの国の者だ?」
「…」
「喋らないと殺すわよ」
そう言い首元に微かに血が伝うほど近づけると男はハァと溜息をついた。
「どうせ死ぬなら教えてやるよ。セデノアだ」
「セデノア?前、アルゼニアの領地になった国じゃない」
私がそういうと、男は不適に笑い出した。
「アルゼニアは滅亡だ…死んでしまえ…ふははははは」
話が通っていないことを発した男を私はすぐに刺し殺した。
後ろで、さっき父上を守っていた男が、私を見て嘲笑する。
「さっきの笑い声はお前からか?」
「冗談キツいわよ。見知らぬ男に嘲笑われるなんて屈辱的ね」
すると男はバッと私の後ろに剣を突きつける。
後ろからブシャーと血の勢い良く吹き出る音が聞こえた。
「どうも」
どうやら、私を守ってくれたらしい。
本当に、こいつは何者なのか。
私はひとまずお礼して姿勢を立て直した。