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ガジェイレル-Right-  作者: 皆麻 兎
第六章 困惑
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第19話 再会がもたらす真実<後編>

今回、冒頭はナチ視線ですが、途中からずっと久々のセリエル視線で物語が進みます。

「とりあえず、普通に動かす分には問題なさそうだな・・・」

ナチは自分がゲヘナから持ってきた部品やツール等を使用して、修理の終えた軍艦を眺めていた。

しかし、視線とは裏腹に、頭の中は先ほどまでジェンド博士としていた会話の事でいっぱいであった。

「荒れる・・・か」

ナチはポツリと呟く。

彼の活躍によって、本国から乗ってきた軍艦を直す事はできた・・・。しかし、直ったのは“船”としての通常の機能のみ。軍艦なので、大砲や防御用のシステムが搭載されていたが・・・世界統合の際に起きた地震が原因だったのか、それらの破損を直す事は出来なかった。

 ・・・もし、海上で何者かの攻撃を受けたら・・・ひとたまりもないだろうな・・・

ナチは自分が所持している拳銃を見つめながら、ふとそう考えていた。

“自分達は一応、普通の武器は所持しているが、海戦になればそれだけではどうにもならない”という考えが頭の中をよぎる。

その場でボンヤリしていたナチは、上司達がいる場所へ戻ろうと、歩き始めようとすると・・・

「ゴホッ・・・ゴホッ・・・!」

咳が出てきた彼は、その場に立ち止まる。

「またか」と想いながら、口に当てていた手を離すと・・・ナチの表情が一変した。

「・・・!!!」

驚きの余り、声を失ってしまうナチ。

そんな彼の掌には・・・少しではあるが、血がついていた。このように、咳によって吐血する事は、今まで全くなかった。

そのため、この血がついた掌を見つめながら思う。

 “不治の病”とやらが・・・進行しちゃっているんだな――――――――――――

自分が病に侵されている事を再認識したナチはこの時・・・重大な決心をするのであった。


          ※


 ナチがジェンド博士と会話をし、帰国の準備をしていた頃・・・世界統合によって肉体が入れ替わっていたセリエルは、深い眠りについていた。

「・・・・」

眠りについていたセリエルが目を覚ますと・・・そこは、本当に何もない真っ白な空間であった。

「ここって・・・もしや・・・?」

ゆっくり起き上がると、自分が何か巨大なモノの中にいるような感覚を覚える。

そして、意識が徐々にはっきりしてくると・・・先ほどまで見ていた夢のような光景を思い出す。

「フラメン・・・。やっぱり、あれが“私”だった事に気がついてなかったのでしょうね・・・」

ボソッと呟くセリエル。

それもそのはず、世界が1つに戻ったのと同時に・・・セリエルの魂は、自分と同じ“世界のガジェイレル”である“彼”の中にあったのだから――――――


「・・・目が覚めたか」

すると、突然背後から聞き慣れぬ声が聞こえてくる。

「誰!!?」

その声に驚いたセリエルは、慌てて後ろを振り向く。

「あ・・・!!!」

なんと、彼女の目の前にいたのは、以前に夢の中で会った自分と瓜二つの青年・・・もう一人の“世界のガジェイレル”だった。

「・・・なんで、貴方がこんな所に・・・!!?」

「それは、こちらの台詞だ」

必死で問いかけるセリエルに、銀髪の青年はきっぱりと答える。

お互いに状況を理解できていないのか・・・少しの間だけ沈黙が流れた。

「お前・・・。以前、俺の夢の中に出てきていたな・・・?」

「・・・あなたこそ」

そう受け答えしたセリエルは、“彼”を正面から見つめる。

そのライトグリーンの瞳は、とても嘘をついているようには見えなかった。

「・・・私は、セリエル・ヒエログリフ。・・・貴方は?」

「俺は、アレン・カグジェリカ」

2人は互いに自己紹介をする。

それを終えたセリエルは、クスッと哂いながら口を開く。

「私達のような異質な存在でも・・・人間のように、名前があるなんて・・・不思議よね」

「ああ・・・」

自分は皮肉るような言い方をしたにも関わらず・・・アレンも納得しているかのように頷いた所を見て、セリエルは不思議な感覚に陥っていた。

しかし、そんな彼女の心情に気がついたのか、アレンは口を開く。

「それより、ここ・・・どこだ?俺も眠っている間に・・・変な格好した連中の声が凄かったが・・・」

アレンは周囲を見渡しながら、セリエルに問いかける。

しかしセリエルは、このアレンと再会した事で、自分達がいるこの場所がどこなのかに気がつく。

「ここはおそらく・・・“私達の中”ね・・・」

「・・・俺達・・・?」

不思議そうな表情かおをするアレンに対し、セリエルは話を続ける。

「貴方は眠りにつく前・・・レジェンディラスにいた“私”に触れた・・・。そうよね?」

こう言い放つセリエルは、この一言で何が言いたいのか気がついてくれる事を願った。

 ・・・わかっていても、口にはできないわ。レジェンディラス(あそこ)に、私の・・・心の蔵があったなんて・・・!

そう考え事をしながら、アレンが頷く所を見ていた。

「・・・俺も、あんたに訊きたい事がある」

「何・・・?」

顔を正面に向けてきたアレンは、口を開いてまた話し出す。

「俺も眠りについている間・・・。自分の周りには、見知らぬ風景・・・そして、聞いた事のない声の連中が扉ごしにこう呟いていた。“世界が1つに戻った”と・・・!」

「・・・・」

「それに、身体もいう事聞かなかったし・・・おまけに、鏡に自分の姿が映し出された時・・・唖然とした・・・!」

アレンの表情がより深刻になっていく。

「・・・私の肉体だった・・・という事でしょ?」

途中から、彼が何を言いたいのかをセリエルは充分承知していた。

そして、同時に世界が一つになる前に出会った青年ラゼの事が頭に浮かぶ。

「・・・私も詳しくはわからないけど・・・。世界が本来の姿に戻った後・・・それの影響なのか、ある一定の期間だけ私と貴方の肉体が入れ替わる・・・。そういう事らしいの」

「入れ替わる・・・」

そう呟いたアレンは、納得したのかしていないのかわからないような表情かおをする。

「そういえば・・・」

セリエルはふと、眠りについていた時に見た“何か”について思い出す。

「あのラスリアっていう少女・・・。貴方の仲間・・・よね?」

「!!!」

“ラスリア”という名前を出した途端、アレンの表情が一変する。

「あいつが・・・何か・・・?」

物凄く驚いた表情かおで、セリエルを見つめるアレン。

セリエルは、アレンの肉体から見ていた内容を話す。自分達に襲い掛かってきた“8人の異端者”の名前だけは避け、そのラスリアという少女が身を賭して自分を守ろうとしていた事・・・おぼろげに見えていた事を語るセリエル。

「彼女はとても・・・優しくて、強いなのね・・・」

そう呟くセリエルは、内心では「自分も彼女のように強くなりたい」という想いがあった。

「そういえば・・・」

セリエルが顔を上げると、アレンが何かを言いかける。

「俺も夢の中で・・・あんたの知り合いらしき爺さんと男が、何か話していたのを聞いたな・・・」

「え・・・!!?」

 私の知り合い・・・という事は・・・!!

「ナチと・・・ジェンド博士?」

「・・・名前までは知らないがな」

「・・・・・・」

アレンの台詞を聞いたセリエルは、ため息をつく。

 アレン(彼)、口の利き方が良くないわね・・・

と、内心思っていた。

「・・・彼らは、どんな話をしていたの?」

セリエルの問いかけに、アレンは腕を組みながら答える。

「わからない言葉だらけだった。・・・しかし、俺も知っている言葉を聞いた時は、流石に驚いた・・・」

「貴方も知っている事・・・?」

セリエルが知る限りでは、自分がいろんな事を知っている代わりに、アレンは何も知らされていないと思っていた。

 ・・・イルを見つけるまでの間に、いろいろと知ったという事かしら・・・?

アレンを見つめながら、考えていると・・・

「噂話だったらしいから、本当かはわからないが・・・奴らは言っていた。「“8人の異端者”を名乗る連中が各地で暴れている」という事を・・・」

「!!!」

セリエルは、驚きの余り身体を硬直させる。

「そんな・・・まさか、彼らが復活した・・・という事・・・!!?」

「・・・ああ。それに、俺は旅をしている間に・・・それを名乗る奴に出会った。・・・だから、まんざら嘘でもないような気がする・・・」

そう語るアレンの表情は、とても深刻そうだった。

「確か・・・」

セリエルは覚えている事を思い出そうとする。

「“8人の異端者”は、それぞれ異民族の集まり・・・。古代種“キロ”や獣人、魔法使いや堕天使・・・。あとは吸血鬼と竜騎士とー・・・」

セリエルは“星の意思”から与えられた知識によって、異端者の民族を口にしたが・・・全員を思い出すことはできなかった。

「古代種・・・だと・・・!!?」

自分が口にした中で、アレンは古代種“キロ”に対して、一番反応していた。

「・・・どうかしたの?」

「いや・・・なんでもない・・・」

俯いてしまったアレンの顔をセリエルは覗き込もうとすると・・・拒否されたかのようにそっぽを向いてしまう。

黙り込んでしまったアレンを見つめていたセリエルは、以前に出会ったコルテラや、“堕天使”を名乗っていたフリッグスという女性の事を頭に浮かべていた。


「!!?」

数分が経過したかと思うと、セリエルの胸に激しい痛みが生じる。

「これ・・・は・・・!!?」

心臓が激しく脈打っている事に気がつく。

「アレ・・・ン…!?」

顔を上げると・・・アレンも自分と同じように、苦しそうな表情かおで手を胸に当てて抑えていた。

「どうやら・・・そろそろ、元の身体に戻る頃・・・かもな・・・!!」

苦し紛れの表情かおで、アレンは呟く。

「・・・もう、会うこともないかもしれない・・・わね・・・」

セリエルは、次に会う時はもう、どうなった時かを理解していた。

 次に会う時は・・・世界が滅ぶ時・・・でしょうね・・・

手を胸に当てながら、セリエルは考える。

今までいろんな出来事があるので忘れていたが、自分とアレンは2人で一つ・・・。そして、今度一つになった時こそ、世界を滅ぼす最終兵器ファイナルウェポンが自分たちを鍵として発動するのだから・・・。

「ここでお別れ・・・ね」

「ああ・・・」

胸の痛みは治まりつつあっても、セリエルやアレンの視界は、次第に真っ暗になっていく。

セリエルの頭の中には・・・身を挺して自分を守ろうとしていたラスリアの後姿が思い浮かぶ。そして今になって、この少女がどれだけアレン(彼)の事を想っているかを理解した。

 私に・・・心なんてないと思っていたけど・・・今は・・・

そう思いながら、アレンに最後の一言を述べる。

「彼女の事・・・大切にしてあげなさい・・・」

「お前も、あの男の事・・・」

セリエルの呟きに、アレンは軽く微笑んでいた。

そして、それを最後にセリエルの視界が完全に真っ暗になってしまうのであった――――――


いかがでしたか。

これまで”彼”という代名詞を使われていたアレンは、知ってる方もいると思いますが『ガジェイレル-Left-』の主人公です。

この回で初めて、"8人異端者"がどのような民族で構成されているか描かれましたが・・・実は、残りの2人の民族はまだ思案中だったりします(汗)

セリエルが語っていた6人は、既に登場している人や、どの辺りで登場するか決まっている人たちです。だから、最悪存在はしていても、本編には出てこない・・・という事も・・・?

でも、”8人”とされているので、ちゃんと登場させるつもりです(苦笑)!!


それでは、ご意見・ご感想をお待ちしてます☆


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