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ガジェイレル-Right-  作者: 皆麻 兎
第五章 動き出す、運命の螺旋
14/23

第14話 蒼い光に包まれて

<前回までのあらすじ>

軍の任務で、ギルガメシュ連邦の植民地が存在するイレルパタンという国を訪れたセリエルとナチ。セリエルは魔物を退治する討伐隊、ナチは街に留まって調査をする待機組となって別行動をする。

魔物討伐に向かったセリエルは、謎の声に導かれて、絶滅したと思われていた古代種”キロ”の末裔である青年・ラゼに出会う。

彼の口から、「まもなく、異世界にいる”彼”と一つになり、2つの世界は融合する」という話を聞き、驚くセリエル。

そして、世界が融合した後、自分に何が起こるかを知ったセリエルは、ラゼに礼を言った後、ナチ達が待つイレルパタンの植民地へと戻っていく・・・。

 セリエルが魔物退治から戻り始めていた頃・・・ナチは自分達が乗ってきた軍艦の中にいた。魔物の討伐へ向かった隊が、任務を終えて戻ってくるという連絡を受けた待機組は、本国へ戻る準備を始めていた。

ナチは、作業をしながら少し前に、軍の通信機で話した会話を思い出す。


『ナチ・フラトネス少尉・・・ですね?』

「はい」

『上司の方から伺ったと思いますが、わたしは一般軍人の健康診断を担当している医師です』

「はい・・・。このように、直接連絡をよこしたという事は・・・何かあったんですね?」

通信機越しで、ナチは軍医と会話を続ける。

『ええ・・・。実は・・・』

医師の声が、少し気まずそうになっていく。

医師せんせい・・・?」

黙り始めた軍医に、ナチは首を傾げる。

『・・・詳しい事は、再検査をしないとわからないのですが・・・』

「ですが・・・何です?」

医師の口調から、ナチは嫌な予感がしてくる。

そのためなのか、彼の表情がみるみる険しくなっていった。

何か書類を持ち出したのか、紙をその場に置いた様な音が、通話機から聞こえる。

『・・・先日行った健康診断の結果を見てみると・・・少し、変わった傾向が現れていました』

「・・・多分、医療の専門用語を言われてもわからないから・・・。わかるようにお願いします」

ナチが低い声でそう答えると、軍医はゆっくりと話し出す。

『では、単刀直入に申し上げます。・・・貴方は、不治の病に冒されています』


自分の手のひらを見つめるナチ。

 ・・・道理で、最近調子がおかしかったわけだ・・・

ナチは幼少時、病気で寝込んでいた事もあり、身体の弱い少年だった。しかし、成長するにつれて体力も取り戻し、たまに咳をする程度で済むようになる。

そんな幼少時を過ごしてきたので、今回もかつて冒された病の軽い後遺症としか考えていなかった。

「セリエルさんや・・・クウラの奴にも・・・黙っておいた方がいいかもな・・・」

ナチはボソッと低い声で呟く。

しかし、その表情は困惑に満ちていた・・・。


「おい!!討伐隊が戻ってきたぞ!!」

遠くから聞こえる軍人の声で我に返るナチ。

「・・・!!!」

無意識の内に、彼は軍艦の出入り口へと走る。

 戻ってきた彼らは、あちこちに傷を負っている軍人も多くいたが、ほとんどが無事という、戦いの後としては良い結果となっていた。

「負傷者を、医務室へ運べ・・・!!」

待機組を仕切っていた軍人が、部下にそれぞれ瞬時の対応をさせる。

「お疲れ様です・・・セリエル少尉」

「ありがとう・・・ナチ少尉・・・」

ナチもセリエルの元へ行き、無事を確かめた。

「お疲れ様です、大佐!・・・本国には、いつお戻りになりますか?」

待機組を仕切っていた軍人は、討伐対を仕切る大佐と、今後について話していた。

「そうだな・・・。負傷者はゆっくり治療するとして・・・まもなく日も沈む・・・。例え軍艦であろうとも、夜の航海は危険だ。・・・隊員を休ませる事も含め、出発は明朝にするぞ!!」

「はっ!」

大佐に向かって敬礼をした後、その軍人は去っていった。

「セリエル少尉・・・。お前も、軽い打撲を負っているだろ?念のため、医務室へ行ってこい!」

「・・・はっ」

セリエルは大佐に返事を返した後、立ち上がる。

「俺も一緒に行きますよ・・・」

ナチがそう声をかけて、セリエルと一緒に医務室へ向かい始めた。

 今はとにかく・・・自分の事は後回しだな・・・

ナチはとりあえず、自分の病気についてはセリエルにも告げず、今はその事についても考えないようにしようと心に誓った。


          ※


 私を迎えてくれた時・・・ナチの表情が、少し沈んでいるようにも見えたが・・・気のせい・・・?

医務室に立ち寄った後、セリエルは廊下を歩きながら考え事をする。

「うっ・・・!!!」

再び、セリエルの胸がズキッと痛む。

不思議な空間で、ラゼという古代種“キロ”の末裔と話をしてからというもの、セリエルの心臓はドクンドクンと強く脈打っていた。

「いよいよ・・・って事ね・・・」

苦しそうな表情で廊下に寄りかかるセリエルは、人気のない場所へ行こうと少しずつ歩き始める。


「セリエルさん!!?」

気がつくと、自分の目の前にナチの姿があった。

「ナ・・・チ・・・」

全身汗だくの状態で、セリエルはナチの名前を呼ぶ。

「顔が真っ赤じゃないですか・・・!!早く医務室に・・・」

ナチはセリエルを医務室に連れて行こうとすると、彼女はそれを制止するかのように、ナチの右腕を掴む。

「いい・・・大丈夫・・・。風邪とかではない・・・から・・・」

「でも・・・!」

「いいから・・・!!」

そう言い放ったセリエルは、鋭い眼差しでナチを睨みつける。

「セリエルさん・・・」

その勢いに圧倒されたナチは、その場で黙り込む。

 その後、セリエルはナチに頼み、人気のない甲板の方へ連れて行ってもらう。

そして、地面に座り込むセリエル。

 伝えるなら今・・・かしらね・・・

セリエルは、タオルで汗を拭きながら、考える。

今後、自分に何が起こるのかは、ラゼの助言でわかっている。しかし、ナチにどのようにして伝えるべきか・・・少し悩んだ後、セリエルは重たくなった口を開く。

「ナチ・・・貴方に伝えておきたい事があるの・・・」

「セリエルさん・・・?」

「あのね・・・」

セリエルはつばをゴクリと飲んで、話し出そうとした。その時・・・


ズゴゴゴゴゴゴゴ・・・・

軍艦が突然、物凄い勢いで揺れ始める。

「じ・・・地震・・・・!!?」

突然の地震に、驚くナチ。

「これは・・・!!!」

地震が起きたのと同時に、セリエルは自分の身体が蒼く光っている事に気がつく。

「セリエルさん・・・!!?」

ナチは目を見開いて驚いていると・・・

『緊急事態だ!!死にたくない奴や、軍艦から外に避難しろ・・・急げ!!!』

スピーカーから、艦内アナウンスが入る。

「セリエルさん・・・!とにかく、俺達も避難を・・・」

ナチが振り向くと、蒼い光に包まれたセリエルは、その白銀色の髪が宙に浮かんでいた。

「くっ・・・!!!」

セリエルは、自分の意識が、何者かによって遮られるような感覚に陥る。

自分の身体から発する蒼い光が強まる一方、セリエルは力を振り絞って叫ぶ。

「ナチ・・・よく聞いて!!!この光が収まるころ・・・私はおそらく、“私ではなくなっている”!!!だけど・・・それも、一時的なものだから・・・・!!!」

 まずい、視界までもが遮られてくる・・・・!!!

次第に、自分の視界が狭まっていく。その片隅で、何かに気がついたのか、ナチはセリエルに向かって走って来る。


「セリエルさ・・・・!!」

ナチがセリエルに手を伸ばして触れようとした瞬間・・・

「待ってて・・・!!」

そう告げたセリエルの視界は、やがて完全に真っ暗になるのであった―――――


          ※


「う・・・・」

意識を失っていたナチは、ゆっくりと起き上がる。

彼の腕の中には、セリエルがいた。

「・・・一体、何が起きたんだ・・・?」

そう呟いた後、周囲を見渡すナチ。

気がつくと、周りには避難したと思われる軍人達が何名か倒れていた。

「確か、俺は・・・」

なぜか軍艦の外にいたナチは、なぜこうなったかを思い出そうとする。

 セリエルさんから蒼い光が現れて・・・最後、彼女を抱きしめた瞬間にその光が辺りを包み込んで・・・?

その時のショックなのか、頭がボンヤリしていたナチは、とりあえず自分が生きているので、良しとする事にした。

「それにしても、あの地震・・・。一体、何だったんだ・・・・!!?」

何が起こったのかが理解できず、うろたえるナチ。


「お!!!目ぇ覚ました奴がいたか!!!」

ナチが振り向くと、そこには討伐隊を仕切っていた大佐の姿があった。

「一体・・・俺達が気絶している間に、何があったんですか!!?」

「さぁな。だが、まずい事になった・・・」

「何か・・・あったんですか?」

本来なら、上司なので、背筋を立ててしっかり話をするのが普通だったが・・・気が動転しているのか、ナチはそんな事をする余裕がなかった。

「・・・俺もさっき目が覚めて、軍艦に戻ってみたんだ。そしたら・・・軍艦の操縦システムが全部おじゃんになっていやがった・・・」

「なっ・・・!!?」

ナチは目を見開いて驚く。

「そんな・・・!我々が乗ってきたあの軍艦は・・・連邦内でもトップを争う高性能の物だったのでは・・・!!?」

「・・・俺だって、最初は信じられなかった・・・。とにかく、何とか部品を調達して修理が終わるまでは、本国へ戻る事はできないだろうな・・・」

「・・・・・!!」

ナチは、驚きの余りに声を失い、その場で立ち尽くしていた。

 一体・・・俺が気絶している間に、何が起こったんだ・・・!!?

自分の頭の中で自問自答を繰り返すナチ。その一方で、地面に横たわっていたセリエルは・・・生気を失ったように虚ろな瞳で、空を見つめていた――――――――


いかがでしたか。

この回を読んだだけでは、何が起きたのかはわからないかもしれません。

具体的な話は、次回以降で語られますが、ここで『Left』の方も読んでいくと、なんとなくご理解できるかと思います。


実は、やっと折り返しに入った『Left』に比べると、この作品はもう後半に差し掛かっているかんじです。

最終話の構想は一通り練ってあるのですが、そこまでどうやって描こうか現在思案中・・・。

とりあえず、次回から新章突入です。・・・お楽しみに☆


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