はじめの一歩
突然だか、俺は早起きだ。朝一発目のコーヒーが堪らなく美味い。幸せとはこの事を言うのだろう。そう考えながら支度をする。綾との待ち合わせのために。
家を出ようとすると親父が声をかけてきた。
「千明はやすぎない?まだ四時半だぞ?」千明とは俺の下の名前だ。千の明るみとは俺とかけ離れ過ぎているが。
「働かないお前の代わりに働くんだよ、あとちゃんと飯食えよ。廃棄だけど。」そう言って強くドアを閉めた。
2月の寒さには恐れ入る。
薄着を何着も重ねて来ている川島にうちつけるように風が吹いた。
「おはよぉ」眠そうに綾が立っていた。
「正直来ないかと思っていたよ。」そう言いながらあるものを手渡す。
「これって、新聞?」
ああそうだ、と続ける
「新聞配達を手伝ってもらう。もちろん走ってね。」
「しんどそうだけど、綺麗になるため!頑張るよ!」
そう言って新聞配達はスタートした。
そして五分もしない間に綾はダウンした。
「綾、バテるの早いよ」
「だって、走るの速すぎだもん」
「そりゃいつもしてるからね、先に行くから」
そう言って行くと意外にも綾はついてきた。
その後おおよそ1時間走り続けてその日の分が終わった。
「か、カロリーが糖分を...」
「それじゃ意味ないだろ」
内心感心していた。まさかやりきるとは。
「はじめの一歩だよねこれ。にしてもこの後学校あるとか、しんど過ぎるよホントに、これどのくらいの頻度でするの?」
そういう綾に当然のことを言った。
「新聞は毎日読むものでだろ?供給しなくてどうするんだ」
「他のバイトの子は...」
「この町でこのバイトをしてるのは俺だけだ。」
綾の顔が、よりブサイクになった。少し面白いと思い
つつ、気づいたことをそのまま口にした。
「お前、肌は綺麗なんだな」
「いっぱいねてるからね、そういう君は顔色悪いよ」
生まれつきだ。と返して労いの言葉をかけて、そのまま登校する準備をした。
それにしてもよく寝るやつがよく早起きしたものだ。
それを賞賛するつもりはないが。ただ気になるので聞いてみた。
「よく起きれたんだな?」
するとこう返ってきた
「寝るって授業中だよ?もちろん家でも寝るけどメインは学校!」
じゃあ 別に学校しんどくないじゃないかとは突っ込めない川島千明だった。