綺麗化、開始準備!
口走った俺の言葉に彼女は困惑していた。当然だ。
まさか疑問形で帰って来ると思わなかったのだろう。
「お願いします。私を綺麗にして下さい。」
驚いた。こんなに何度も驚きが、いや感情が出たのは久しぶりの感覚だった。
驚きに驚いてよく分からなくなっている川島を脇目に彼女は続ける。
「私綾っていいます。秋野町の方に住んでいます。」
そうか。と言って相槌を打つ。
秋野町と言えば本当に小さな町で、川島がバイトしているコンビニがある電車で二駅ほどの近所であった。
「私、どうすれば...」
綾がつぶやく。そして俺はこう答えた。
「目標を決めよう、そうじゃないと頑張れないだろ?」
もっともらしいことを言ったがただの思いつきでしか無かった。一般に言われていることしか今は言えないなと考えていると綾はこう言った。
「今年の秋ごろに、もみじの木の下であなたに告白を受け入れて貰えるようになる。これって目標になってる?」
「もちろんなってるさ。ただ俺が受け入れないと達成出来ないようにするなんていい性格してるな。」
そういうと綾は笑って答えた。
「確かに。まぁいいや、何から始めればいい?」
確かにって、まぁいいやと思いつつ、「明日の朝五時に秋野駅集合な。動ける服で。あと菓子類禁止。」と答えた。
「朝はやっ!ってか菓子類って私の生命線なんだけどぉ」
こいつ思った事全部言うな、と思いながら
「俺もうすぐバイトあるから」と言って別れを告げた。
「わかった、私綺麗化頑張るよ!また明日!」
綺麗化って、随分と語彙があれだなと思いながらこの日は彼女と別れた。