Kya・Tyu・Rya
暑いですねぇ~
どこにも行かず、クーラーの効いた部屋の中でまったり。
1話の短編小説です。
サクッと読んでね。
世界的アミューズメント運営会社である
タークハギ社が運営している
【最強の剣を求めて ~ Brave Story ~ 】
はとても面白い!
え、知らない。
であれば、
【タークハギ社 ゲーム】
でググってみてはどうだろうか。
俺はシステム会社に勤める40過ぎの独身貴族様。
今日も休日出勤の上、既に夜も遅い。
「間もなく4番線に、高麗川駅経由、
八王子行きがまいります。
黄色い線の内側にお下がりください。」
疎らにしかいない川越駅のホームに
アナウンスが流れ、高麗川方面から速度を落とした
電車が接近してくる。
この電車は折り返しの始発電車だ。
全ての乗客が降り、入れ替わりで乗車する。
先頭車両の7人席の端に座る。
別に指定席という訳ではないが、
休日出勤の帰りは大体ここに座る。
発車まで暫くかかる。
ポチポチとスマホゲームに明け暮れる。
発車2、3分前、足音が近づき前の席に座った。
何の意図もなく、視線を前へと向けた。
初老の男性が、鞄の中から本を取出し、
挿んでいた栞に指を当て目的のページを開いた。
直ぐに視線をスマホに戻す。
あの人、絶対カツラだよなぁ。
てか、ズレてね。。。
気になりつつもゲームを操作する。
まじまじと見るのは失礼だろう。
発車音が鳴り、ドアが閉まる。
ふと顔を上げると、流れる景色と伴に
前の席に座る男性が視界に入る。
直ぐにスマホの画面に視界を戻す。
ん~、やっぱり右斜め後ろにズレてる。
教えてあげるべきなのだろうか。
でも、どうやって。
まさか、
「おじさん、カツラズレてますよ。」
と、ストレートに言うのはダメだろう。
もしかしたら、俺がそう見えているだけで、
実は自毛でしたって事になったら
ぶん殴られても文句は言えない。
考えるのは止めよう。
首を左右に動かし、スマホのゲームに集中した。
電車は減速して、西川越駅に着く。
ドアは自動では開かない。
隣の車両でボタンを押しドアを開け、
降りる人が数名。
乗る人はいない。
開いていたドアが閉まり、電車が動き出す。
ふと顔を上げ流れる景色を見る。
入間川に架かる橋を走行する。
外に見える疎らな光が綺麗だ。
と、同時に目の前の男性が視界に入る。
日本人ではない。
スマホに視界を戻す。
出身は分からないが、
もし、「彼はアメリカ人です。」と紹介されたら、
「そうなんですね。」と納得するだろう。
日本に住んでいるからと言って、
日本語が通じるとは限らない。
でも、俺は英語以外はまるっきり分からない。
いや、英語も微妙だが。
大体、英語でカツラって何て言うんだ?
女性の薄毛を隠すのをウィッグって言ったっけ。
ってことは、ユアウィッグ シームトゥ、、、
フロート・・・
システム屋さんでは浮動小数点のデータのことを
フロート言う。
確か、浮くという意味だったか。
いやいや、浮いている訳では無い。
そこまで酷くはない。
「ズレている」って英語で何て言うんだろ?
ホーム画面を開いて「ズレる 英語」とググる。
「Misaligned」だって。
ん~、何て発音するんだ?
変なところにgが入ってるけど、
多分発音しないんだろう、コレ。
署名を意味するsignもgは読まんし。
最後が過去分詞っぽいから、
eの前に子音の前はアルファベット読みでアイかな。
Misalignedをコピペして「Misaligned 発音」でググる。
発音記号を見ると思ってたのと合ってそうな気がする。
電車が分岐ポイントを通過して少し揺れ、
的場駅に入線する。
ここでは、行き違いのため暫し停車する。
単線だからねぇ。
グルグル先生の翻訳ページにアクセスし、
Your wig seem to misaligned.
と、入力してみた。
結果は、
「ウィッグの位置がずれているようです。」
だって。
良んじゃね。
結果を反転させてみる。
「The wig seems to be out of position. 」
seemではなく、seemsだそうです。
3人称単数だもんね。
そっか、そっか。中学生レベルのミスを。。。
グルグル先生の翻訳の方が分かり易い。
「ズレてる」を「out of position」
すなわち「正しい位置にいない」とするのか。
なるほど。
頭の中で、何度か復唱する。
ザ ウィッグ シームズトゥビー アウトブ ポジション
すれ違いの電車がホームに入って来た音が聞こえる。
顔を上げると本を読んでいる彼も視界に入る。
再び視界をスマホに戻す。
オーマイガー!!
The wig seems to be out of position.
これって英語圏の人からしたら、
「カツラがズレとるように見えるで。」
って聞こえる訳でしょ。
あかんやろ、コレ!
別に誰かが見ているわけではないが
慌てて画面に出ている文字を消す。
電車が動き始め、カタンコトンと
ポイントを通過する。
大きく息を吸い、深呼吸する。
ん~・・・
目を閉じ、暫し考えてみる。
そもそも、カツラとかウィッグとか、
そういう言葉を使うから悪いわけで。
例えば、「御髪が乱れてますよ。」とかだったら、
カツラであろうがなかろうが、
問題ないんじゃね。
電車は笠幡駅に着き、
この車両からは誰も降りずに
再び加速する。
開いていたグルグル先生の翻訳ページに
再び入力する。
「御髪が乱れてますよ。」
変換結果は、
「Your hair is messed up.」
頭の中で復唱。
ユアヘア イズ メッスドアップ
電車は武蔵高萩駅に停車するため減速する。
ここでも行き違いで数分止まる。
目の前の彼は立ち上がりボタンに指を当て、
停車と同時にドアを開けた。
ピコン、ピコン、ピコン
音を鳴らしながら開くドアを見る。
降りて振り返った彼と目が合う。
彼は内側にある「閉」ボタンを押し、
軽く会釈した。
俺も軽く頭を下げる。
開けたドアを閉めてくれるええ人や~。
歩き改札に向かう後姿を見送る。
触らぬカミに祟りなし
なんてな。
最強の剣を求めて~Another Story~
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