今、イメチェンする勇気
なろう20周年企画投稿作品。
短くてすみません。
「冒険してみたいなぁ」
あと少しで冬の長い休みが明けるのを前にして、流しの鏡の前でつぶやく俺は、今まで無難に生きてきた大学2年生。
まるで外国人みたいとまで言われる赤い毛が目立つ以外は、眉が太め程度しか特徴が無い平凡顔に、ため息が出る。
あ、そうそう。 赤毛はドライヤーで熱を浴びると変色する。 つまり地毛なのだが、高校の頃は何度教師に言っても「髪を黒に戻せ」と言われて嫌な気分になったのを覚えている。
1年の時に同じ大学1年の連中が、長い休みが明けたタイミングを見計らって、冒険した勇姿を見送ってきたヘタレで平凡な俺だった。
それで今年は俺の番だ!
そう思いつつも、夏の時は冒険をしなかった。
冒険した連中の中には……いや、大多数が失敗に終わって虚無顔を晒していたり、何もありませんでしたよ? とばかりに冒険した事を無かった事にしたのも居たが、俺はその冒険した勇気に感服したのだ。
「だからこそ、俺もここで冒険したい……!!」
そう強く思うようになったのだが、あと一歩の勇気が出ないのだ。
このもどかしい感じは嫌いだが、本当に嫌いなのだが、それを突破する勇気がないヘタレが俺。
「こんな弱い俺を、爆破してやりたい!」
こう叱咤しても、自分自身にしっかり伝わらないのが本当にもどかしい。
こんなにヘタレた自分だ。 発破をかける意味でも爆発してやりたい。
…………あ、いやいや。 俺、待って欲しい。
爆破したらどうなる?
コントでは爆発=アフロ。
あの巨大アフロは凄いよな。
あのインパクトは素晴らしい。
ちょっと見るだけで見た者の混乱と大笑いを取れる最強のツールだと思う。
…………でもアフロなんてダサいしなぁ。
なんてちょっとウジウジもしてみたが、なぜか想像したアフロが輝いて見えて、思考が外れなかった。
「やってみるか!!」
しばらくしウンウン悩んでいても、想像したアフロは消えてくれずにむしろ巨大化していた。
それはもう、心を埋め尽くす勢いで。
そこまでアフロを想っているならと、ついに俺は“勇気をふり絞り”一大決心をした。
冬の長い休みが明けて初めての、大学へ通う日。
「どうだ!」
部屋に置いた姿見が、俺の勇姿を余す所なく写し出す。
頭はドライヤーで立派に変色して、真っ赤になったアフロな髪の毛と眉。
青いインナーTシャツと、腹が見える短い丈で黄土色で袖先や長くて存在を主張する襟が焦げ茶色したボタンシャツ。
同じ色で揃えたスキニーなスラックス。
そして地色を活かした革製のブーツ。
アフロはあまり流行らないのを自覚している事から、むしろ逆張りしてダサい方向へ突っ走ってみた。
このダサさが逆に格好良く見えてくる、不思議コーデ。
この姿を見た人達がどう反応するか、今から楽しみだ!
結果は、極一部で評判になり、それ以外にはどんな反応をしてあげれば良いのか悩ませて、とても微妙な作り笑いで返されました。
正月に地方チャンネルで特別企画としてイデ○ンの劇場版2作品をやってまして。
その後に勇気がお題の企画とか出されたら、このネタをやるしか無いでしょと。