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新しい日常

卒業式の翌日。

修吾は春の朝日が差し込む部屋で、何をするでもなく座椅子に座っていた。

そのうつむきがちな視線は、意図せず祈りの形に組まれた自らの両手に力なく注がれている。


その時聞こえた、ためらうようなピンポンというインターホンの音に修吾の目が力を取り戻す。

やや緊張した面持ちでドアを一瞥したあとに彼は立ち上がる。


ドアを開けると、いつかの日のように奏多が立っていた。


もちろん今はその顔にあざは無い。

二人は何も言わないし、タイミングよく隣のドアが開くことも無い。

ただお互いを見つめた。

修吾は背後からざわざわと、またあの柔らかで温かい蝶たちがその息を吹き返す音を確かに聞いた。


修吾の腕が戸惑いながら持ち上げられ、油の切れたブリキ人形のようにぎこちなくその手のひらを彼女に差し出した。

奏多がその求めに応じようとしたところで、修吾はその腕をつかんで玄関に引き入れる。

彼女の首筋に頭を埋もれさせようとでもするかのように奏多を掻き抱いた修吾の口から、熱く震える吐息が漏れる。

その背に、細い腕が回された。震えるその腕は修吾の服をギュっと掴む。


長かった一年半の中で空っぽになってしまった心の中を埋めようかというように、二人とも、お互いをずっと抱きしめて離さない。


「…ちゃんと幸せになれって、…死ぬ気で言ったのに。お前…帰ってきてくれたの?」

「…先生が良かった。この家に、帰ってきたかった。…ちゃんと、卒業したよ。先生」

「…ずっと、待ってた。おかえり。奏多」

そうして、彩りを取り戻した彼らの新しい日々が始まっていく。

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