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 俺は仕方がなくヨガを実行した。

 ヨガなんて習ったことも習おうと思ったこともないので、適当に足を組んで目を閉じてみるだけだ。こんなことで何になるのか、俺には分からなかった。ただヨガは適当にやればいいんだという確信が俺には合った。これは確かで誰に決められたことでもない。そういう風に世界は成り立っているのだ。


「わはは、なんてことはない、ヨガなんて簡単なんだ。集中しろ」


 俺は集中した。何か他とは違う何かがあるはず。ヨガなんていうんだ、まさか目をつぶってそれで昼寝して終わりというわけではあるまい。目をつぶったさき、そのさきに絶対なにかあるはず。


「うん……?」


 なにか、ふと、お腹の部分に違和感を感じる……これはこれまで感じたことのない感触だ。これは、これは一体何なんだ。まるで腹巻きをしているかのように暖かく、それは本当に心地よい感覚。もうやる気に満ちて仕方がなくなるかのような、もうこれ以上の幸せ、力は生み出せないと思えるようなほどの莫大なエネルギー、自信、格の差を感じる。俺は他とは違う、特別なんだと今なら思える。


「やばいな。俺今すごいことになっているかもしれない。もう言葉じゃ言い表せないくらいものすごい感じがする」


「ぞ、増幅している……まさか、これほどまでのマナを体内に隠していたとは……」


 精霊もなにやらびっくりしていた。いや、わかるよ。俺もなんだかすごくびっくりしている。でもびっくりしていながらもかなり冷静だ。なんでだろう。なんか謎の安心感が俺を安らがせてくれるんだよな。もうなんにも怖くない。俺は俺なんだ。


「もうやばいっすよこれ。もう何にでもできそうな気がするんだが」


「覚醒した……覚醒しているのだ! これだ。この力があれば、デバイアの恐怖に対抗できる! 解放される!」


 精霊はなにやら興奮気味だった。なにをそんなに興奮してるんだろう。俺はまだ何もしてないというのに。この力が本物かどうかもわからないじゃないか。でもわからないなら試してみるだけか。


「よーし、そうだな。じゃあとりあえずビームを放ってみるか」


 少し単純すぎる気がするが、そんなに簡単にできるとも思っていなかったので、とりあえず指先を何もない空間に向けた。いけ、ビーム。なんちゃって。



 ぎゅおん。



 指先から太いビームがでて、森を一直線上に薙ぎ払った。


「え? まじか」


 もう言葉がでなかったこれを俺がやったというのか。もうすごすぎる……俺はやっぱり才能があったのか。でもこんなの地球では感じなかったぞ。もうなんだっていいか。とにかく俺はすごいんだ。なんか釈然としないけど、もっとこの力を使っていって自信を深めて行けばいいよな。


「凄まじマナの奔流……そなた、でかしたぞ! これをぜひ我々の悲願達成のために使ってくれ! 今のそなたであれば大した苦労もせず可能であろう」


 なんか言ってるよこの精霊。そういえばなんか助けてほしいとかそういう話だったっけな。でも正直もうどうでもいいんだよな。俺からしてみればいきなり現れた謎の女ってだけだし、俺がこいつに協力する義理なんて一切ない。


「俺の力の証明の礎となれ!」


 俺はその精霊が弾けて消えるように思った。

 眼の前の精霊は一瞬で膨張したかと思うと、ぱんっ、と風船が割れるように破裂し、その場に霧散した。


「ほう、なんかよくわかんなかったけどすっげえや」


 すごいなマジですごい。この力をなにかに使えないかな。地球だと強盗とかに使えそうだけどな。でも異世界だとそんなことしたところで面白くないし、やっぱり何か使い道を考えないとなぁ。そもそもこの力てマジでなんなのかな。ちゃんと調子に乗っても大丈夫なのかな。まぁいいのかな。


「やられた」


「主人がやられた」


 そんなことを考えていると、周囲に光る点が浮かんでいるのがわかった。

 離れた場所ではあるが、何個か浮遊している。ホタル……とも違う、もっと人口的というか、青やら赤やらに光っている光だ。


「ゆるせない」


「ホムさまがおいきになられた」


「なぜ、このもののしわざ」


「おかしい、このものが生きている」


「やらなくちゃ」


「なんでいきてるの」


「いらない」


「このひとは、いらない」


 いろんなささやき声が耳に入ってくる。どれも可愛らしい幼女のような声だ。しかしその内容はいささか不気味さを携えてもいた。不思議だな。


「ちょっと何を話してるんだよ。ひそひそ話は嫌いなんだ。なんか俺のことについて話されてるみたいな気がしてさ。どうせなら俺も混ぜてくれよ」


「このものを、けす」


「いらない、いらない」


 すると周囲に同じような衣装を着た、妖精っぽいやつらが集まってきた。

 え、さっきみたいなのがいっぱい。なんでこっちに来てるんだ。マジでうっとうしいぞ。いらないって言ってたけど、お前らがいらないよ。


 俺はその妖精っぽいやつらを皆殺しにすると思った。

 するとぽとりとそいつらは全員地に落ちた。そして霧散して消えた。


「なんだったんだよ一体。まぁ妖精っぽかったから別に殺してもいいよな。人殺しではないはずだ」


 もしもこの行為を避難するというのであれば、その人は今後肉を食うことはしちゃだめだと思う。それって人間以外と生物を殺していただいてるということだからな。やってることは俺と一緒だ。というか野菜とか果物とかだって考える脳はないけど同じように生命体として生きてるんだ。そういったものを享受している以上は誰も何もいえないと思う。この精霊だって野菜みたいなものだ。脳がある野菜なんだ。だって森の中から出てきたし、まぁ野菜なら畑から出てきそうな感じだけど、まぁそんな細かいことはいいや。

 今はマジで便所いきたいわ。

 便所いくか。

 よし行こう。俺の物語はここからだ。

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