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ごはんを食べ終え、食器を片付けようとすると母親と思しき人物に変な目で見られた。なんだ、片付けちゃだめなのか。そういうもんだと習ってきたけどな。
「じゃあ私も仕事行ってくるから、そろそろ出なさいよ。特にニファ、なんか今日あんた変だから気をつけるように」
それだけ言い残し、母親っぽい人は家を出ていった。
俺ともう一人の女だけが残った。
うーん、これから何をするんだろう。勉強会って言ってたっけな。どんな勉強をするのかガチで疑問だわ。でも逆に楽しみかも。
「ニファ、今日変」
じろりともうひとりの女に睨まれてしまった。この人は俺の同居人だ。先程の女と、この女と三人でこの家屋に暮らしているはずだ。なんとも素朴な感じの顔で、あまり表情筋が動いていない。くすんだ藍色っぽい髪を後ろで一つに縛っていた。年は中学生ってとこかな。俺と一緒くらいになるのか。
「変ってそんなことないけどな、おれ……私は別に普通でしょ」
「喋り方もなんか変。なんか男っぽいけど」
「まじでそんなことないから。で、えーっと……」
やばい、こいつの名前わかんないわ。不自然に思われちゃうよ。
――ミンファよ。あんたの双子の妹よ。
「……ミンファはそろそろ出なくていいのか? 私はそろそろ勉強会に行く予定なんだけど」
「今更何を聞いてるの? 記憶喪失なんじゃない? もういいよ、私行くから。帰ってきたら普通にもどっててね」
そう言ってミンファという名前らしい女も家を出ていった。
うーん、会話って意外と難しいな……女の子ってどうやって喋るのが正解なのかな。
――なにぼうっとしてるのよ。あなたも出るのよ。時間もちょっとだけ押してるわ。早歩きしなさい。
そうだよな、俺も俺で予定があるんだった。
でも行き先がわからないぞ。というか鍵はしなくてもいいのかな。
――鍵は普段のバッグの中にあるわ。最後に出る人がそれを掛けて出ていくの。
俺は二階の自室に戻り、バッグを手に取った。
机の上に広げられていた冊子や文具がいくつかいるようだったので、集めてそれもバッグに入れる。
――そんな雑に入れて……まぁいいわ。とにかく出発しなさい。
急かされるようにして、俺は家を出た。
鍵を掛けるのに一分くらい手間取った。
行き先は本物のニファが案内してくれた。
どうやら勉強会なる場所は、歩いて四十分ほどの場所にあるらしい。
かなり遠いなと少し驚いてしまったが、この街は結構発展してる方で、他の街に比べ広いとのことだった。
そんなことならバスを使えばいいのにとも思ったが、この世界の交通機関はかなり値がはるらしい。やはり数百円で遠征できた日本は偉大だったのだとつくづく感じる。
――ここよ。
そうして俺は勉強会が開かれる場所に着いた。
通りに面した場所にあり、そこそこ大きな建物だった。
へー、古いけど立派じゃないか。
俺はてくてく中に入っていった。
どうやら俺が普段勉強している部屋があるとのことで、そこに移動した。
部屋は学校の教室くらいの広さだった。
結構席もある。二十以上はあるかな。そしてすでに何人もの人間が集まっていた。
俺の普段使っている席があるということで、そこに行き、腰掛けようとした。
「やっ、ニファおはよう。なんか今日暗くない?」
話しかけてきたのは眼鏡の少女だった。
小顔で意外と顔立ちが整っているような気もする。ショートカットだった。
「おはよう、えーっと」
――よく話してるビジュよ。
「ビジュ、今日も一段とかわいいね」
「か、かわいいって、そんなこと普段言わないじゃない。もしかしてまだ寝ぼけてる?」
ビジュという少女は少し頬を赤らめていた。なんだろ、悪くない。
「普段からちょこちょこ遅刻してくるから今更驚かないけどさ、ちょっとは朝の生活見直した方がいいんじゃないの?」
「えー、まぁ私には私のペースがあるしね」
なんだ俺の本体、普段から遅刻とかしてんのかよ。意外とおてんばな性格だな。確かに押し入れにハイドしてたときもやたらと声が通るやつが一人いたかも。
「な、なんか落ち着いてるね。やっぱり変なんじゃない?」
「まぁちょっと図書館で本を読んだりしてね。私もそろそろ変わっていかないといけないのかなって」
やたらと性格面を疑われるので、適当におかしくないような動機をでっちあげておく。
「ビジュもそろそろ変わっていったほうがいいよ。世界はいつも流れ続けてるんだから、人も変化していかないとね」
「……なんか変な影響うけてる……」
最後にドン引きされたところで、扉から大人が入ってきた。
ローブを纏った、大人のお姉さんって感じの女だ。
「はい、席についてー。今日のカリキュラムを始めますよー」
その言葉とともに、教室でくっちゃべっていた奴らが全員席についた。
おお、なんか学校っぽい。すごく学校ぽくてなんか懐かしい。
俺も地球では現役の学生だったんだけどな。なんで遠い過去のような気がするんだろうな。
ちなみに生徒の割合は男と女でちょうど半々くらいな感じだった。
意外と真剣な表情で前に立つ女を見据えている。
少なくとも不良とかではなさそうだなと、俺は一つ安心した。




