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とりあえず俺は眠りから覚めた。
洞窟の中のままだった。
そりゃそうだ。俺は洞窟で寝て、そこから移動していない。
洞窟の中にいるのは当たり前のことで、不変で、誰にも干渉できるものではなかった。
「よく寝たなー、今何時なんだろうか」
俺は魔法で時刻を探った。
なんとなく時刻が分かる魔法を使おうと思っただけだ。俺にならできると思った。すると現在十三時三十ニ分だった。
「なんとも微妙な時刻だな。昼寝にしては早すぎたかな。うーん、ここからどうしましょうか」
とりあえず大量のクリョリョは確保することはできた。となると、これをどう処理するかだ。
「当然食べたいよな。でもこのままいくのはちょっとだめだよな。あれだなぁ、調理人に調理してもらうというのが一番かなぁ」
俺は調理人を召喚することにした。
魔法を使い、料理人を呼び出す。
目の前が光り、一人の人間が出てきた。
「儂を呼び出すとは、なかなかやるのうお主」
「変な爺さんきた。爺さんは料理人なの?」
「まぁ俗にいえばそうじゃな。で、儂にどんな用なんじゃ」
急に呼び出したにも関わらずかなり聞き分けのいい爺さんだ。なんかめちゃくちゃ気に入ったぜ。好きな服を今度買ってあげてもいいかな。
「クリョリョを料理してもらいたいんだ」
「クリョリョ? なんじゃそれは。新種の魔物か? 農作物か?」
「え、爺さんクリョリョを知らないの? まじで無能すぎると思いますよ」
「儂にそんな口を聞けるのも相当レアじゃぞお主。まぁ今更よい。知らんものは知らんから仕方がなかろう。もちろん少し食材を調べさせて貰えれば最適な料理法を導き出すことは可能じゃがの」
「クリョリョは伝説の食材らしいよ。これなんだけど」
俺はクリョリョを差し出した。
「ほう、これはたしかに見たことないのう。しかもかなりの魔力を内包しておる。これは儂の手には負えんかもの」
「何を言ってんの? いよいよトチ狂ってしまったの? 僕はあなたを料理人として呼んだんだ。もしその期待に応えられないというのなら、もう死ぬより苦しい思いをしてもらうしかないよ?」
「そうは言われてもな、儂はただの料理人で、魔法に関してはさっぱりじゃからの」
「ん? どういうこと? 普通に料理するのじゃだめなの? 爺さんの腕前でいい感じに調理すればいいんじゃないの」
「そう簡単にできるか。あのなぁ、儂がやるのは調理であって、魔術ではない。魔力を有する食材は魔法においての素人がおいそれと扱えるような代物じゃないんじゃよ。つまりこの食材をいなそうと思えば、またその手の専門職を呼ばなくちゃならん」
「え、ガチで意味がわかんないんだけど。例えば、このクリョリョを海鮮丼にするとして、クリョリョを潰して、それにいい感じの調味料を混ぜて、それをどんぶりにすれば、一つのれっきとした料理が完成すると思うんだけど。なにか間違ってることを言ってるの?」
「まぁそれが当たり前にできると考えるのが普通じゃろうな。気持ちはわかるが、少し界隈に踏み込めばわかるようになる。魔力を保有している食材を扱うのは魔法を使わなければできん。もし素人がわけもわからず触ってしまえば、反動を貰ってしまうのじゃよ。それもことによっては一大事になりかねんほどのな」
「へー、そうなんだ」
「魔力を有してる食材はたしかにレアじゃ。しかしそれを扱える者も限られてくるということよ。まぁレアじゃからというて、それがうまいかどうかは全く別の話なんじゃがの」
「なんとなくわかったよ。結論を言えば、このクリョリョは爺さんには調理できないってことだよね」
「専門の魔法使いを呼ばんと無理じゃろうな」
「死ね」
俺は爺さんの頭部を破裂させた。
スイカのようだった。やっぱりこの殺し方が一番だ。
「なるほどな。となるとそういった魔法使いを召喚しないとだめなんだ」
学んだ俺は、魔法使いの調理師を呼ぶことにした。
目の前が光り輝き、一人の女性が現れた。
「あ、あなたが私のご主人ですか」
少し目がうろうろしている感じの女だった。二十代後半くらいかな。
「まぁそうだね。確認なんだけど、君は魔力を含んでる食材を調理することができるのかな」
「え、ええ、当然可能です。私は魔法調理師ですからね。そのために生き、そのために死を選びましたから」
「そうなん……ってちょっと待て。死を選んだって言った?」
「……? そうですが」
「意味がわからないよ。反復横跳びくらい意味がわからないよ。死んでたとしたら、今こうして話していることの説明がつかないじゃないか」
「え、えーっと、私はすでに死んでこの世にはいない存在なんですよ。それをご主人さまが限定的に呼び出されてるという認識でいるのですが……ですから私はご主人さまにより今の一瞬を感じてるという状態といいますか」
待ってくれ。やばいことが起きてるぞ。なんかこの人すでに死んでるらしいんですけど。たしかに俺は適当にそれっぽい条件に当てはまる人を召喚していただけだ。まさかそれはすでにこの世を去った人だったというのか。そう考える他ないだろ。やばすぎる。まぁ確かに考えてみればやけに召喚されたやつは大人しく冷静に俺に従ってくれたよな。もしかして俺は霊能師みたいな感じで霊を一時的に呼び出しているに過ぎなかったりするのか? やばい、俺が怖い。本当に怖い。自殺しよっか。




