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コードネーム・ナインの正体  作者: おふとあさひ
7/10

SPの本質

 桟橋にボートを係留した九は、濡れた髪を乱雑にタオルで拭きながら、磯の岩肌に背中をつけてもたれかかった。

「こんな所に、左遷されて、かわいそうだね、山月くん。相田さんの怒りでも、買っちゃったわけ?」


「い、いや……」

「なにか、心当たりは無いの? ここ、日本の果てだよ」

 山月は、どう答えたらよいか迷う。


「ヘマしなきゃ、こんなとこまで、飛ばされたりしないでしょ」


 九は、タオルを丸めて、ボートの中へ、投げ込んだ。

 相田からのミッションは重要なもので、ヘマをしたわけでもなんでもなく、九には任せられないから、山月に任せられた。でも、そんなことを言うわけにはいかない。


「ちょ、ちょっと、ミッションが、上手くいかなくてね……。それで、警視総監の怒りを買っちゃったのかな? わかんないな、正直なところ……」


 九は、意味深にニンマリと笑った。

「そのヘマしたミッションって、前に言ってた、甲賀忍者集団と交渉するってやつかい?」


 九の目的は、ナインを奪うことのはずであり、どういう段取りを考えているのか、山月は、頭をひねった。


 山月を連れ出しておいて、空になった島を仲間に捜索させて、盗むのか。

 それとも、脅してでも、山月から、九の居場所を聞き出して、堂々と盗もうというのか。


 すぐさま行動に移すとは思えず、探り探り、対応していくしかない。


「あ、ああ、そうだ。交渉相手のリーダーである伴にすら、会うことができなかった」


 山月は、九との探り合いを慎重に進めようと思った。なぜなら、ここには、他に誰もいないし、逃げ場も無い。

 怒らせたり、本性を露わにさせたりしてしまうと、山月は九に殺されてしまうと思っている。

 それでも、ジャブを打って、少しでも、動揺させたい。気変わりするきっかけが欲しかった。


「ああ、前に言ってたバン、ナンチャラってやつか。会うことすらできなかったんだ。かわいそうに」


 山月は、九を観察したが、九は少しも動揺していない。

 自分の名前が出ているのに、黒目が動くことすらなかった。


「九は、伴が、今、どこで何をしているのか、知らないかな? 確か、情報屋だったよな?」

 山月は、少し強めの語気で言った。


「ハハハ。情報屋だっていうのは、冗談だよ。間に受けてたのかい? スマン、スマン。バンなんてのは、知らないよ。そいつ、実在するのか?」


「そ、そうなんだ。残念だな……。やっぱり、交渉するのは、無理だったんだろうな」


「ま、そう落ち込むなって。一緒に謝ってやるから、ここを脱出しよう。な? こんな島、退屈だろ?」


 どうやら、九は、山月を連れ出すつもりらしい。

 船の中で殺されるのか、それとも、殺さずに、仲間にナインを探させるのか。

 どちらにせよ、時間稼ぎをして、どうにかして九だけ帰す方法を見つけ出さないといけない。


「そ、それは、ありがとう。ところで、九、なんで、私が、ここにいるとわかった?」


「探したんだよ。急に山月くんが、消息不明になっちゃったからさ。心配してたのよ」

「心配? 私のことを心配してくれたのか?」

「ま、それだけじゃなく、オレ一人だけじゃ、手に負えない指令もあったからさ。連れ戻しに来たんだよ」

 九の素振りに、怪しいところは無かった。


「私を助けに来ることは、相田さんには、内緒なんだろ? 勝手な行動をして、大丈夫かい?」

 山月は、心配そうな表情を作った。


「うーん、そこはちょっと心配だけど、山月くんは、同僚だし、友人だし、勝手な行動をしたことも、謝れば許してくれるんじゃないかな」


 九は、ちっとも心配しているようなふうではなかった。

 笑顔で、山月の肩を組んでくる。


「さ、帰ろうか? 荷物をまとめてきて。山頂に見える小屋が、キミの住まいなんだろ?」



 山頂の小屋まで登る間、九との会話は無かったが、山月の脳内は、高速で回転していた。

(できることなら、良い関係のままで、九だけをこの島から追い返したい。怒らせずに、ナインの居場所を探られずに、九だけを返す方法が、何か無いのか……)


「近くで見ると、立派な小屋だな。ソラーパネルに、あれは、6Gのアンテナかい? 自家発電するエンジン音も聴こえるね」


 頂上に着いた九は、いろいろと感心しているようである。

「さあ、中に入って、荷物をまとめておいでよ」


 山月は、九を帰らせる策が思いつかないまま、鉄の扉を開けた。


「中は、涼しいんだね。オレも、入れさせてもらうぜ」


 山月は、床にスーツケースを広げ、衣類を詰めていく。できるだけ、ゆっくりと。


「そうだ。そういえば、山月くんは、ここで、どんなミッションを与えられたの?」

「え? あ……ああ……。えっと、地下室の温度管理だよ」


「地下室? 地下に何かあるのか?」


「ああ。政府か警視庁か知らないけど、秘密のサーバーがあるらしいんだよ」

「なに!?」


 見ると、九の目つきが鋭くなっている。

 山月は、一瞬で心を吸い上げられたがごとく、動けなくなった。

(読心術!? 心を読もうとしてきている……)

 山月は、必死にもがく。そして、なんとか術を解き、目を逸らして、額の汗を拭いた。


「なぁ、山月くん。なんで、目を逸らす? なあ?」


 九は、壁に掛けられたモニターに気付いたらしく、立ち上がる。

 そして、表示された地下室の温度を確認して、納得したように頷いた。


「山月くんも、忍者なんだろ? なんで、オレには、隠すんだ? 水臭いじゃないか」


 九を見上げた。山月の胸の鼓動は、荒れた海洋のように、激しくうねっている。


 九の目は、三日月形をしていて、不気味な光り方をしていた。


「別に、隠していたわけじゃない。私は、下忍で、九のように、すばらしい術を操れたりはしない。だから、忍者を名乗るのは、おこがましいと思っただけだ」


 九は、山月の言い訳を最後まで聞かずに、キッチンに向かった。何の迷いも無く、冷蔵庫横のドアの前に立ち、南京錠を手に取る。


「なあ、山月くん。地下室のサーバーが見たい。この南京錠の番号を教えてくれ」

 ドアに向かったままの九から、肩越しに聴こえてくる声は、いつもと違って抑揚が無く、無感情のようで不気味だった。

「し、知らない……知らないよ。そ、そこが、地下室への入口なのか?」


 血管がぶちきれそうなほど、血流が増大して、山月の顔が紅潮する。

 ゆっくりと作業をするのを忘れるほど興奮して、衣服をどんどん詰め込みながら、しゃべり続ける。


「そうだとしても、勝手に行かない方が、いいよ。怒られるよ、九。国家秘密の情報が、地下にあるんだよ。何かあったら、責任とれないよ。国家的な大問題になるよ。なあ、九。頼む、止めてくれよ」


 しゅうしゅうという、怒気を帯びた九の息遣いが聴こえてくる。

 首が少し傾き、肩越しの九の尻目が、山月をとらえる。


「ふざけんなよ、コノヤロウ」


 ガツンと鈍い音が響き、九が、南京錠の掛かったフックを引きちぎった。


 万事休すとしか思えない状況を止める手段は、何も思いつかなかった。

 ただ、物理的に止める以外は。


 山月が動き、九は、くるりと回転する。


「あ」


「ふざけんなと、言っただろ?」


 山月の放った薬の塗られたダーツは、九の指先でキャッチされていた。

 山月は、凍り付いた。


 瞬く間に、間合いを詰められ、九の膝や、(こぶし)が、山月の顔面を襲う。壁際に吹っ飛んでもなお、容赦なく、鉄拳が打ち込まれた。


 山月は、みぞおちに入れられた膝蹴りで、息が出来なくなり、顔面どころか、ガードしていた腕も、腫れあがって気が遠のいていく。

 山月は、立っていることすら出来なくなり、ついには、ひざからくずおれた。


「オマエ、誰を相手にしてるのか、わかってんのか? あ?」


 辛うじて開いた右目で、九が覗き込んできていることを知った。手には、山月が放ったダーツが握られている。


「冥途の土産に、教えてやるわ。オレが、伴兼尋(ばんかねひろ)様だ。あの世でも、覚えて置くがいい、山月」


 九は、山月の首筋に、ダーツを刺した。



     ♰


 九は、階段を下り、地下室の扉を開けた。

 冷気が襲ってきたが、むしろ、その冷たさを肌で感じて、ほっとした。


「やはり……」


 その部屋は、サーバー室などでは無かった。中央に、大きな檻がある。


「ナイン? いるのか、ここに。なぁ、ナイン、返事をしてくれ」


 応答はなかった。檻の中を覗き込んだが、ナインらしき影は見当たらない。ただ、家具や家電が並び、明らかに、誰かが生活していた痕跡はあった。


 檻の鍵も南京錠だった。

 九は、それを握り、呪文を唱える。

 全身の神経がざわめくように動き出し、アドレナリンが、上腕に溜まっていくのがわかる。


(いける)


 せいっと、引っ張ると、鈍い金属音が部屋中に響いて、錠前が破壊された。

 自己催眠をかけて、リミッターを外し、火事場のバカ力を出すという甲賀忍術、一攫千人力(いっかくせんにんりき)である。


 九は、檻の扉を開け、中へと入る。

 檻の外にあるサーバーから出ている配線が、檻の中の無線ルータに繋がっていた。そのルータが、何と通信しているのか、九は、すぐにわかった。

 その通信相手が見当たらないのに、データ通信がされていることを示す緑色ランプは、激しく点滅している。


(やはり、ナインは、ここにいたんだ。今は、《《旅》》か?)


 九が、さらに辺りを探ろうとした時、ぐわぁぁぁぁわぁぁぁわぁぁん! と、空間が歪みそうなくらいの不快な音がした。


 音を聞いた九は、咄嗟に飛び退いた。


 何も無かった目の前の空間に、霧が立ち込め、その中に、少しずつ、黒い影が浮かび上がる。

 九は、霧の中に目を凝らした。

 黒い影は、立体感を増し、ケモノのように全身を毛で覆われた生命体を形作っていく。


 霧が止み、ヘッドギアをつけた長毛犬のようなナインが、現れた。片膝をついて、肩で息をしている。


「ナイン、久しぶりだな。《《いつ》》かに、旅でもしていたのか? いったい、どの時代に行ってたんだ?」


 ナインは、ゆっくりと顔を上げ、九の方を向く。さほど驚いている様子は無いが、喜んでもいない。じっと九の表情を観察して、事態を飲み込もうとしているようだった。


「なぁ、ナイン、もっと喜んでいいぞ。オマエを今から解放してやるから」


「な、な、な……なんで、バンがいる? ヤマヅキは? ヤマヅキはどこだ? せっかく、ヤマヅキのために、調べてきたっていうのに……」

 九は、ナインの腕を持ち、無理矢理に立たせる。そして、ナインの耳元に口を寄せた。


「山月は死んだよ。助けてもらえて、良かったな。うれしいだろ? オマエは、今から、アメリカに帰れるんだ」


「アメリカ? ハワイなら旅行したいけど、それ以外は、興味無いね」

 檻から出されたナインは、憎まれ口こそたたいたが、淀んだような表情で、覇気がない。


「何言ってんだ、こんな所より、良い環境に住まわしてもらってただろ? 覚えてないのか?」

 九は、力の抜けたナインを引っ張って、なんとか地上まで上がった。

「ちょっと、暑いかもしれんが、すぐに快適な環境にしてやるから、我慢してくれ」


 ナインをダイニングの椅子に座らせると、スマートフォンを出して、伯父でありながら手下である山咲(やまざき)にコールする。


「おい、ザキ、今、どこだ? どこにいる? こちらは、ナインを確保した。すぐに搬送機をよこしてくれ」


 山咲の背後で歓声が上がっているようだった。きっと、アメリカ人に囲まれているのだろう。

 山咲は周りのはしゃぎ声を鎮めると、すぐに、カイトとサムを寄こすと言った。


 九は、電話を切り、窓の外を眺める。

 あいにくの曇り空ではあるが、ナインの輸送には、むしろ好都合である。なにせ、室温を5℃に保って、アメリカ本土まで運ばなくてはいけないので、日光は、弱いほどいい。


(沖合に停泊中の米軍空母からなら、そんなに時間はかからないだろう)


 北の方角から、ジェットエンジンを轟かせて、銀色の小型飛行機が二機向かってくる。

「あれだな……」

 九が右手をおでこにかざして眺めていると、小型飛行機は、あっという間に島の上空に到着し、垂直に下りてきた。

 米軍の最新鋭機である。そのうちの一機は、抱きかかえるように棺のようなコンテナが設置されていた。


 コックピットから降りてきたカイトが、頭を下げる。

「お待たせしました。冷蔵コンテナをお持ちしました」

「ご苦労。ナインは、小屋の中にいる。早速、連れ出して、搬送してくれ」


 カイトとサムが、小屋に入るのを見届けながら、九は悦に浸る。


 ナインを奪還した時の成功報酬は、500万ドルである。それを加えれば、これまでナイン関連で米国から得た報酬は、1000万ドルを超える。

 ナインには、十分に、稼がせてもらった。今回限りで引退しても、一生、優雅に暮らしていける。

 日本を脱出して、南国で暮らすのもいいし……。


 ピーピピ、ピーピピ。

 甲高い鳴き声で、九は現実の世界に引き戻される。頭上には、数十羽のウミドリが、集まってきていた。


 ぼんやりと眺めていると、眼下の森の木が揺れた。

 最初は、動物が草でも食っているのかと思ったが、揺れる木々はどんどん増えていく。

 やがて、辺り一面の木や草が、嵐にでもさらされているかのごとく揺れ始めた。


(な、何事だ?)


 木々の間から出てきたのは、ヤマネコや、ネズミ、大型の爬虫類などで、皆、九のいる山頂に向かって登ってきた。

(なんだ? 島中の動物が、ここに集結したのか? 何かあったのか?」

 九は、興味深く動物たちの動きを眺めていたが、近づいてくるに連れ、それらの眼光が鈍い色をしていることに気付く。


(操られている!?)


 ヤマネコが飛びかかってきた。九は、それを咄嗟に避けるが、そこには、にオオトカゲがいた。大きな口を開けて襲いかかってくる。

 九は、懐から短刀を出すや、オオトカゲの首を切り落とした。 九は、懐から短刀を出すや、オオトカゲの首を切り落とした。


 向かってくるヤマネコの首を、次々に掻き切り、血しぶきを浴びた九に、頭上からウミドリが襲う。

「くそっ! うっとうしい!」

 ウミドリに向かって、砂を振りかけるがごとく、ケシの実を砕いた乾燥粉末を散布した。


 小屋から出てきたカイトが、異常に気付き、鎖ガマを振り回す。

「だ、大丈夫ですか!?」

「くだらん術だ……。数が多いのは厄介だが……」


 九の短刀と、カイトの鎖ガマは、次々と襲ってくるケモノたちをことごとく血祭りにあげた。


 九が肩で息をし出した頃、空にあった鳥たちの姿は消え、山肌に、無数の動物の死体が転がっていた。


「サムはどうした? まだ小屋の中か? 早くナインを連れてきて、コンテナに収容しろ」


 九は、短刀を鞘に納めて、カイトに指示を出した。

 ケモノたちを操ったのは、おそらく、山月が世話をしていたネズミなのだろう。

 しかし……と、九は考える。


 口寄せの術で、小動物を意のままに動かせたとしても、その小動物に、他の動物たちを統率させることなどできるのだろうか。出来るとしたなら、相当の忍術の使い手だ。

 あの、山月が、それほどの使い手だったというのか?

 だとしたら、あの時のあれは、山月の仕業なのか……。


 九の頭の中で、横須賀の事件の記憶が蘇る――


 甲賀集団を束ねていた九に、偵察部隊から、報告があった。

「なに? それは、本当か?」

 報告してきた者によると、コードネーム・ナインは、本州から遥か南の島に、隠されているとのこと。その島に行く手段は、船しか無く、定期船も無いため、チャーターするしかなかった。

 次の日、レジャーボートをチャーターして、出港の準備をする。

 順調なはずだった。辺りに人影は無く、誰も近づけないように警戒していた。

 それなのに、何者かに、火を放たれた。

 いつの間にか、デッキに灯油が撒かれていたらしく、あっという間に炎上した――



 あの時、甲賀の者たちは、誰も犯人を見ていない。あんなに警戒していたのに、網の目を潜り抜けて、放火するなんて、相当の忍術の使い手しかできないはずだ。


 九は、山月を侮っていたかもしれないと思い、背筋がゾッとした。

 咄嗟に爪を噛んで、乱れた呼吸を整える。


 山月は、もう、仕留めてある。この先、九を止められる者はいない。


「ちょ、ちょっと、サム!? どうした!? 大丈夫か、おいっ!?」


 カイトの声がした。見ると、カイトと向かいあうように、開いた鉄扉の前に、真っ青な顔をしたサムが立っていた。


「サム? サムーッ!」


 カイトは叫びながらも、サムに近づこうとしていない。何か、気配を感じているらしい。

 サムは、体が棒のように固まったまま、ゆっくりと前に倒れた。


 サムの後ろから、人影が現れた。

 見たところ、ナインではない。


「すまんが、ナインは渡せない。私は、ナインのSPに任命されているんで」


 山月が立っていた。



 九は、幻を見ているのかと思った。戸惑いを隠せずに、噛んでいた爪を噛みちぎる。

 死しても尚、山月が幻術を使っているのかと、下唇が、震え出した。


「九、そんなに、震えんなよ。私は、ゾンビではない。生きている」

 生暖かい風が、山月と九の間を吹き抜けて行った。

 九は、山月の計り知れない実力に、次の一手を出せないでいる。


「おい、九、SPに求められているものってなんだか、知ってるか? わかんねえだろうな。オマエは、血も涙も無いし、守りたい人もいないだろうからな」

 山月は、両手に大ぶりのナタを構えた。サムの所持品だろう。


「SPは、要警護者を、命を懸けて守らなきゃいけないんだ。命を懸けられるってことは、本当に、その要人のことを好きでないとできないことなんだ。愛するほど、愛おしくないと、できることではない」

「何が言いたいんだ? への役にも立たないキサマの持論なんぞ、聞きたくもない」

 九は、ようやく冷静さを取り戻し、もう一度、短刀を抜いて、鞘を投げ捨てた。


「私は、ナインが好きになった。絶対に、渡すわけにはいかない。もう、守ってやれなかったなんていう後悔をしたくないんだ。二度と、そんな想いはしたくない」


 九は、山月の威勢の良さに、少し押し込まれていた。


     ♰


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