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もふもふ王子は、公爵令嬢に恋をしている

軽い短編を書いていたら、ここまで書いたほうが幸せでは?って所まで思いついたので、あと二話投稿します。

化物王子と呼ばれていた、見た目が歩行する虎そのものの王子は、皆から恐れられ嫌われていた。


二メートルを越える人よりも大きい体躯、喋る度に口から覗く鋭い牙、魔道師ならば見かける度に頭を垂れそうになる圧倒的な魔力。



獣神と巫女の間に生まれた子が、この国の初代国王だという話がある、それが真実であるかどうかはわからないが、化物王子と呼ばれる獣神と同じ虎の姿の王子が、他を寄せないほど優れた魔力を持つのは純然たる事実だった。


人は人と違うものを恐れる、それが体躯も能力もとても叶わない化物となればなおさらだ。


それが神とはいえーー人と違うルーツを持つかもしれないとなれば、恐れるなというほうが無理な話しなのかもしれない。


例外はただ一つ。


ーーーーそれが可愛いか、どうかだ。


可愛いければ、どれほど強大であろうと人と違う体躯であろうと人が全く叶わない存在であろうとも神の血を引く特別な存在だろうと、全てが許される。


可愛いは、全ての感情を超越する。


それは公爵令嬢が、本能から彼の存在の大きさを恐れていた彼女が、身を持って知ったことだ。


やわらかいふわふわの体毛に指が沈む、抱きついて抱きついて抱きついてその匂いを全身で感じる。


強大でなくちゃいけないはずだ、こんな素晴らしい生き物がーー無防備であって良いはずがない。


その人を威圧する体躯も怯ませる牙も身から溢れる強大な魔力も、全て全てがこの溢れでる圧倒的な可愛いを守るための神からの贈り物なのだ、絶対にそうに違いない間違いない、神様は実に良い仕事をした!。


そんな彼に唯一触れられる、その可愛いの深淵に触れられる私が、だからーーその素晴らしいを布教しなければと思った。


これは他の誰でもない私がするべきことだ、獣神様の素晴らしさを教えとして国民に説いて回った巫女のように。


王子にエスコートをしてほしいと頼んで、人の集まる社交界に積極的に参加した。


公爵令嬢ですもの、どこの誰が影響力が高いかわかる、身分もだがーー顔が広い人を中心に、王子が一番可愛いく見える角度を表情を見せてあげる。


効果は驚くほどに早く出る、王子を描かせた画家に依頼が殺到しているらしい。


複製でも構わない、王子を描いた絵姿が欲しいと。



流行を生み出す老若男女がこぞって彼の絵姿を飾った、お父様に頼んでエントランスに二人の絵を飾ったのも良かったのだろう、話題になってあっという間に王子は時の人だ。


「君との婚約が決まりーー仲良くなったと聞いてから弟の評判が良い、兄として礼を言う」


気のおけない社交界で、私は王太子から直々にお褒めの言葉をいただいた。

王子からは王太子はあまり自分のことを好いていないと聞いていたが、実際に会ってみると私と同類の匂いを感じる。

ーー漫画ではほとんど出番がなかったからわからないんだけど。


「いいえ全て王子の魅力です」

鉄面皮と表される王子の兄である王太子は、無表情の顔を歪めて笑顔みたいな顔を作り言った。


「弟が小さい頃は、もっと可愛いかった」

同じ匂いを感じなければ無理な笑顔を作り、弟への好意的な言動を捻り出したと感じただろう。


けれど私は、その短い邂逅でこの人は一番の好敵手になるとーーそう確信したのだったーー。


その時珍しく、王子のほうから私の手を握ってきた。


「お酒を飲んだのかい?顔が赤い。ーー婚約者の体調が優れないので、失礼します兄上」


珍しく強引に手を引いて、王子は会場から私をバルコニーに連れ出した。


数時間前まで雨が降っていて、雲が厚くて月も星も見えない暗い空だった。

そのためかバルコニーに人影は少く、私達以外には一組の男女しかいない。


王子は他にいる一組の男女を避けるように、人気のない場所で立ち止まった。


「君は、僕の婚約者だ」

「はい」

「……良いんだ、それだけ分かってくれてるなら」

王子の耳が後ろへぺしゃんと下がり、尻尾が地面をトストス叩いている。


これはストレスを感じている時の仕草だ、可愛い。


トキメキのおもむくままに眺め続けていると、じっくりと見られていることに気がついたのか王子の機嫌は徐々に上がっていき、尻尾も地面を叩くのを止め。


「王太子に、嫉妬されましたか?」


嫉妬したのかと聞いたとたん、また尻尾が地面をトストストス叩き出したーー可愛い。


「兄はあの通りの鉄面皮だが頭がよく治世も上手い、国民からの人気もある。それにーーまともな人間だ」


王子はこちらに目を合わせな

いまま続ける。

「同じ王子なら兄の方が良いと君が言っても、僕は婚約を解消するつもりはない」


出会った時のような暗い目で、王子は視線を星の一つもない星空に向けている。


「ねぇ王子、知ってます?最近の王子は人気者なんですよ」


私はそんな王子の顔をつかんで、無理矢理視線を合わせる。


「きっと私以外の人も王子のことが大好きになって婚約の打診があります。王子は私と違ってまともな女性にアプローチされて舞い上がって好きになってしまうかもしれません、でもそんなことになっても私だって王子と婚約を解消する気はさらさらありませんよ?」


言いながら笑ってしまった、架空の想像なのにそんな女がいるとしたら、正気を保っている自信がない。

告白するならせめて、私の王子への想いを超えて見せろ!。


「私が好きなのはあなただからです、王子」

「僕も、君のことが好きだ」


今まで体で表現するばかりで、

言葉にしてくださらなかった王子が、私の目をまっすぐに見て言った。


「僕にはずっと夢見ていた人がいた、この化物の姿でも心から愛してくれる、人としての中身を愛してこの醜い外見でも受け入れてくれる、そんな人をーー君にとても似ている人を、ずっと夢に見ていた」


懐かしむように細めた王子の目には私の顔しか写っていない、けれど私にはそこにいるはずのないヒロインちゃんが写っている気がした。


初めは怯えていた私と違って、最初から王子の優しさを見抜いて、その全てを受け入れた、優しくて強くて可愛いーーとても好きで憧れていた漫画のヒロインちゃん。


漫画の中で一人ぼっちの化物王子を救ってくれる、私は彼女が大好きだった。


だから私が私だということを思い出して、漫画のヒロインちゃんなのだと分かった時には絶望したのだ、じゃあ誰が化物王子を救ってくれるのか?と。


「だけど君は僕が想像していた人ではなかった、怯えるし怖がるし夢に見ていた君とは全然違った、それによりにもよって君は、僕の中身よりも先に、この恐れていた化物の姿を愛しただろう?」


王子が私の手をすくい、そのふわふわの頬に触れさせ、頭を撫でさせるようにぐりぐりと押し付けてくる。


私なんかがヒロインちゃん?と思っていた当時の事を思い出していた私は、その不意打ちもふに耐えきれずに発狂した。


ふああああああああああ!。


「怯えていたはずの君はいつしか僕をその目でじっと見ていた、熱くて熱くて蕩けるような、見ているのが恥ずかしくなるような欲しがりの目で、君は何度も僕に触れた。いつしかその焦がされそうな目に焦がれていた、蕩けそうなほど気持ち良い手がこの体から離れないようにと願った」


王子が私を抱き締める、露出している所はそのままのもふもふを、着込んでいる所は服越しにもふもふを、どちらも大変に良い。


「君の細い指先で撫でられるのが好きだ、抱き締められそれをされると心と体が満たされておかしくなる、熱い目で見つめられながら耳元で愛してる可愛い好きだ最高だと囁かれ続け、頭から離れなくて困っている、こないだは君の声が夢の中にまで追いかけて来てうなされた、もはや洗脳なんだよこれは!!」


王子の顔が近付いて来て、優しく唇に触れた。


「だから責任をとって、ずっと僕だけを見ていて欲しい、君でなくては心も体も満足が出来なくなったーー憐れな獣から目を、そらさないでくれ」


厚い雲の切れ間に、月が覗いた。

ふわふわの体毛が月光に反射して光っているように見えた。


この目の前の美しい獣が、心も体も私のものだなんて、指の先から足の先まで身体中を電気が走り回りぞくぞくした。


「触れても良いんですか?こんなに美しいものに触れて、天罰があたりませんか?、きっとあなたは神様に愛されて生まれてきた」


感情が高ぶって涙が出てくる、

私が触れたら汚してしまうと思うほど、月明かりの下の王子は美しい。


「僕は『君』に愛されたいんだ」


王子は、私が間違えないようにはっきりと言った。


その一言で、それまで心のどこかにあったヒロインちゃんへの思いがーー私はどこかへ消えて彼女がここにいるべきだと言う思いがーー消えた。


「王子、あなたは私のものです私だけの獣です」


誰にもーそう憧れていたヒロインちゃんが今目の前に現れたってー王子は絶対に渡さない。


私が、一番、誰よりも彼を愛しているから!。


「そうだ、僕は君だけの獣だ」


王子の手が私の頬に触れ、私の手が王子のふわふわの頬にふれ、唇が合わさり混じりあった。


触れたところの体温が交ざりあって一つになる。


それが幸せすぎて、触れあう度に頭を過るバカなことが思い浮かぶ。


この体が王子と一つに慣れたら良い、この美しい獣が人を食う化物だったら、一番最初に食べてもらうのに。


目を合わせながら、二人は名残惜しむようにゆっくりと離れた。


ここが二人の合瀬の場所ではないと思い出したからだ、切ない気持ちは言葉に出さずと伝わった。


「私も王子のものです、だからもし私を信じられなくなったら、いつでも食べて下さって構いません」

切なさのあまり口に出してしまう、自分でも異常だと思っていることを。


さすがに引かれるかもしれない、どう思われるか恐々王子を眺めていると、食べて良いというのを別の意味でとらえたのか、尻尾をぴんと立てて、気を落ち着けるように髭を触っていた。


「僕は君を信じる、だけど婚姻を済ませた後にーー君を食べても良いだろうか」

「ええ喜んで、一日千秋の気持ちでお待ちしています」


王子の勘違いを訂正しないまま、私は必ず一つになりましょうと囁いた。






バルコニーから会場に戻るとダンスも終わりを迎え、お開きのムードが漂っていた。


そこへ側近と共に帰ろうとしていた王太子が、こちらに気づいて近づいてきた。


「私ももう帰るところだ、久しぶりにこういう席で会えて良かった、お前は変わったな」


王太子は王子に向けて嬉しそうに笑った、鉄面皮の王太子にしてはちゃんと笑顔に見える笑顔だった。


「彼女が、変えてくれたので」

王子もまた、私の手を握りしめ笑った。



王太子は王子の様子に微笑むように目を細め、思い出したように私の方へ顔を向けた。


「ああー先ほど言い忘れたことを思い出した、弟の小さい頃の絵姿があるんだ、君さえよければ噂の画家に複製を依頼しても良」

「ぜひ!お願いします!!最高です王太子様!!」

私は王太子に猛烈に食いついた。


自分以外を見ないで欲しいと言った直後の出来事に、王子は怒った!。



だけど怒っている王子も大変可愛らしく、帰りの馬車の中でのスキンシップですぐに仲直りできたので良かった。


王子は本当に私に触れられるのが好きなようで、別れる際には息絶え絶えになっており、「本当にーー責任を取ってくれ」と涙目で言ってきた。


もちろん喜んで責任は取ります!。

一番あなたを好きな私が、必ずあなたを誰よりも誰よりも幸せにして見せます!。


ヒロインちゃんとは違って私はこの後の展開を全て知っているから、一番大きな火種は潰し終わってますし、お父様譲りの裏工作は私には才能があったみたいで、順調ですしね!。



だから後は、安心して私の腕の中で幸せになるだけなんですよ王子!!。










恐い………書けば書くほど主人公が恐い系女子になる……。

この腕の中で安心出来る王子は、主人公とお似合いですね!(ニッコリ)。



次とその次は、夜に連続で投稿します。

見ていただけると嬉しいです!

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