ヒロインじゃないから、期待しないで
ベタでテンプレートでさくっと終わる話です、ノリと勢いが好きな方に楽しんでいただけると嬉しいです!
ああー化物トラ王子の婚約者になんてなりたくなかった。
愛されないのが当然の王子だったのに、なんで私にだけそれを求めてくるのだ。
漫画のヒロインにも、最初は期待してなかったくせに。
私に勝手な期待をして、裏切られたと傷ついた目をするのをやめろ! 今まで誰も信用せず期待しなかったんでしょ!? なんで今さら私にだけそんな期待をするんだ!?
無理だよだってあなたは化物だ、見上げるほどの大きな体は虎だ獣だーー怖がるな恐れるなというほうが無理だ。
無理無理無理無理、私にはあの漫画のヒロインみたいな真似は絶対に無理。
だから期待をするな傷つくな私に救いを求めるな! 私には無理だからあなたを受け入れるのはその心を救うのは無理だから、どうしても私に他の人に受け入れられたいなら。
あなたのほうが変わってほしい。
頭を下げて、その高い身長が怖いから、目を向けないで獣そのままの鋭い目が怖いから、どうか口を閉じて従順な賢いペットのように振る舞って。
その姿で知性を見せられるのが、化物に見えて仕方がないから。
そうして初めて私はあなたに触れた。
従順なペットのように、足元に跪いたあなたの頭を、撫でた。
毛並みがさらさらで心地が良い、ピンと立った耳に触れて、その柔らかさに驚いた。
心臓が痛い、その時間は怖くて恐ろしくて同時にーー言葉を発せずにただ頭を垂れたその姿は、体こそ大きいけれどただの動物に見えた。
大きい動物は怖い、けど彼は襲ってはこない人間だから。
矛盾したことを考えながら“目の前の生き物が恐くない”ことを自分に覚え込ませるように、私は何度も彼の頭を撫でた。
静かな触れあいの時間は、合瀬の度に繰り返された。
その間に言葉はない、人の言葉を話さないでくれと私が願ったからだ。
ただ彼は頭を垂れて私の好きなように、ふくふかな頭を柔らかな獣の耳を撫でさせてくれた。
最初は恐々だった。
相手は王子だー獣であるが階級制度のほぼ頂点の存在だ。
こんな無礼なこと許されない、ありえないことだ。
けれど許された求められた、その人ではありえない部分を触れることを、彼の全てを受け入れた漫画のヒロインのように。
彼の存在を受け入れられない私が。
漫画を存在を知っているからだろう、それがとても罪深いことに思えた。
罪悪感を感じながら、恐れながらも繰り返される。
婚約者同士の交流との名目で。
そのさわり心地が、たまらなく良いと気づいたのはいつ頃か?。
緊張で気づかなかったのか、それとも気づかないふりをしていたのか。
手入れされた毛並み、毛の中に隠れたやわらかで弾力のある筋肉、爽やかに香る石鹸の匂い。
触りかたが大胆になっていく、殊勝な態度をとりながら尻尾を出してもらえないか願った。
願いは叶えられ、それからの私はーー増長した。
「……それ以上はだめだ」
「私達は婚約者でしょう!」
さらなるもふもふを求めて抱きつき頬擦りをし服を脱がせようとした私に、王子は私達のルールを破り声をあげ拒否をしめした。
「こっこんなに私を虜にしておいて!いっ今さら取り上げるというんですか!?」
「落ち着いてくれ、僕達はまだ婚約者だろう!」
「じゃあ結婚して下さい!今すぐに!」
「こちらだって!時期を見はからっているんだ!」
こじらせればこじらせるほど、私のもふもふは遠ざかって行った。
「ひどいひどいひどいひどい!こんな!あなたなしじゃいられない体にしておいて、今さら距離をとろうなんて!」
「人聞きの悪いこと言わないでくれ!!、それに元々は適度な距離でいたじゃないか!それを君がエスカレートするから!僕だって男なんだから……」
「せめて尻尾だけ下さい!先っぽだけで我慢しますから!」
なんとも言いがたい顔をして、それでも王子は尻尾をこちらの手の平に置いてくれた。
「私の可愛い尻尾ちゃんお帰りなさい!」
それに思わず頬擦りすると、可愛い尻尾はたちまち逃げて行った。
「王子!」
「……僕は悪くない僕は悪くない……君が可愛いのが悪い!」
「いじわるしないで下さい!、私のなんです!王子は!私だけのもふもふなんです!」
「なんで……なんでこんなことに……」
尻尾を体の後ろに隠して真っ赤になって後ずさる王子は、虎が二足歩行した姿まんまだった。
その体格は二メートルはあるだろう、開いた口のなかには立派な牙が生え揃っており、もし噛みつかれたら怪我ではすまない殺されると以前の私は思っていた。
その口から猫科特有の可愛い声が漏れるまでは。
今ならばそう、蕩けた目で噛みつかれて尻尾をからめられたら、もう何もいらない。
この恐ろしくも可愛らしい生き物に噛み殺されるなら、それもまた本望だ。
王子は、私が一歩進む度に怯えたように後ずさる、それはまるで立場を入れ換えた昔の私と王子だ。
「怯えてないで下さい」
王子の言葉をなぞるようにそう言えば、体を震わせて王子はその動きを止める。
「私はただあなたに触れたいだけです」
当時を思い出すように、王子は可愛いらしいペットのように、頭を下げてこちらに差し出してくる。
私はそれをなぞるようにそっと彼の頭に耳に触れて、額と両頬に口づけた。
「あなたを愛しています」
当時と違うのはそれだけだ。
王子は動きを止めて、すがるようにこちらを抱き締めてきた。
私はそれを優しく強く抱き止めて、王子の首もとをくつろげて優しく喉元を撫でた。
猫科特有の可愛い声が鳴る。
王子は慌てて離れようとするが、強く抱きついたこちらを離そうとする力は弱い、彼が私を傷つけないように細心の注意を払っていることを私は知っている。
だからこちらが強く抱きついて体を絡めてしまえば、王子が私に出来る抵抗なんて何一つーーない。
「大丈夫です、恐いことなんて何もありません、ただもふらせて欲しいだけです。それにもし怖いことになっても私達は婚約者なので、わかりやすい既成事実が出来るだけなので私は大丈夫です!可愛い虎の子を産みますね!」
「色々と!僕が大丈夫じゃないんだ!!」
ノクターン行くようなことはしてないので、大丈夫!()
次話は、すぐ投稿します!
王子視点です!