第8話 倉庫の穴
「あんな穴なんて元々無かったよな?」
正樹が裕也に聞く。
「もちろん。最近第三倉庫使ってなかったからいつ出来たかは分かんないけど・・・」
「あそこからモンスター出てきたって考えるのが順当よね?」
「ダンジョンってやつかな?覗いてみるか?」
健治が提案する。
「いや、今日はやめておこう。ちゃんと準備して明日の朝もう一度ここに集合しよう。
それまで、そこら辺のロッカーとかパレットで穴をふさいでおこう」
「「「了解」」」
正樹の提案に対し、3人は行動し始める。
「これで、ゴブリンとかスライムなら出られないかな」
裕也が軽く汗を拭いながら言った。
「明日なんだけど、使えそうなものを各自準備して穴の中を確認してみよう」
「ねぇ、この小石どうする?」
京子の手のひらにはモンスターが消えた後に残った小石が2つ乗っていた。
「スライムのは溶けたのか、核を刺したからなのか、小石は無かったよ」
「鑑定」
正樹が小石に鑑定をする。
・魔石(小)
モンスターの核となるもの。
「うーん、何に使えるのかまでは分かんないなぁ・・・」
「取り敢えず倉庫に置いておこうよ」
そう言って裕也は2つの小石を受け取り、倉庫には3つの小石が並んだ。
「よし、また明日だな!剣も置いておくな。警察に捕まっちゃうしな」
健治は剣を小石の隣に置き、車へ向かう。
こうして、4人は解散した。
*****
「ただいまー」
「おかえりー、ちゃんと約束守ったわよー」
由美が裕也を迎える。
「ありがとう。親父は?」
「いるぞー」
奥から裕次郎が返事をする。
「で、なんか話しがあるんだろう?」
「うん、ちょっと信じられないかもだけど、聞いてほしい」
そして、今日事務所で3人に話したように、スキルの実演を交えて2人にモンスターのこと、ステータスやスキルのことを説明した。
「要は、そのモンスターってやつが現れるようになってて、世界が危ないってことだな」
「どうしたらいいのかしらね?大事になったら警察とか自衛隊が動きそうだけども」
「そーいやーまだテレビとかでやってなかったな」
「ちと、長谷川に電話してみるわ」
長谷川太一は、裕次郎の友達で県警の警視長である。
『もしもし?』
『おう、久しぶり』
『急にごめんな、今いいか?』
『ちとバタバタしてて、少しだけな』
『あのさ、この世界に急にモンスターってやつが現れるようになったみたいでよ』
『モンスター・・・ちっちゃくて頭がデカい、こん棒持ってるやつか?』
『そうそう、それ。やっぱり分かってたか』
『昨日から数件通報があって、警官も怪我してる』
『まだ、発砲許可が出せなくて、逃げられたり数人で取り押さえて収監してるのもいる』
『避難指示とか出すのか?』
『いや、まだ状況が全くつかめてなくてな、頻繁に出現してくるなら避難指示も考えてるよ』
『1箇所に人を集めて警護した方が被害は少なくて済みそうだもんな』
『小さくても結構力が強いし、武器も持ち歩いてるみたいだから、今は巡回を増やしてるって感じだな』
『分かった。何か進展があったら教えてもらえると助かる』
『そっちもそのモンスターってやつのことで何か分かったら教えてくれ、只でさえ未知の相手だからな』
電話を終える。
「警察も動いてるっぽいな。まだ、状況が掴めてないからメディアを抑えてる可能性もある」
「中途半端に報道したら国民も動揺するわよね、今のうちに買いだめしとこうかしら」
「でね、話の続きなんだけど、事務所の第三倉庫に大きな穴が開いてて、そこからモンスターが出てきてる可能性があるんだよね」
「倉庫に!?」
裕次郎が驚く。
「うん、第三倉庫の中に出来てた。2mくらい。ひとまず、倒れてたロッカーとかパレットで塞いで来たけど」
「なんでまたそんなところに・・・」
「で、相談がある。さっき話したステータスやスキルを鍛えたいんだ!今日ゴブリンと戦って倒せることが分かった。そして、経験値を稼いでレベルを上げて強くなりたい、そして、みんなを守りたい!」
「お前、本気で言ってんのか?・・・って本気で言ってるんだろうな、まぁ、元々正義感が強いお前だったらそうなるわな」
「多分警察とかに言ったら封鎖されて、暫く近づけなくなると思うから、秘密にしといて欲しいんだよね。俺らでも無理!ってなったらちゃんと逃げるし、通報しようと思う」
「俺も行ってみるかな」
「親父はまだお袋と一緒に居てほしい」
「心配性ねぇ、外に出なければいいだけじゃない」
「もう何も失いたくないんだ・・・」
裕次郎と由美は何も言えなかった。
失いたくない・・・と言った裕也の顔には悔しさが滲み出ていた。
それは榊家の辛い過去の記憶が関係している。
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