おまけ:大人パトリックの転生妻
本編終了後のおまけです。
途中から視点(人称)が変更になりますのでご注意下さい。
前半 → 一人称視点(ユーフェミア視点)
後半 → 三人称視点(◆◆◆◆◆◆◆◆以降)
皆さん、お久しぶりです。
ユーフェミア・アウレウスです。
えへへ。気付きました???
苗字、変わりましたよ!
女学院を卒業しパトリックとも正式に夫婦となりましたんで、アウレウス姓を名乗ってます!
そして……パトリックとのイチャラブ新婚生活に突入したはず……………………だったの、ですが……。
……。
私……知ってしまいました!
パトリックの奴ってば、超・モテモテ、なんです!!!
……。
いやいや、何で?!
ゴリラだよ、アレ?!
ルシアさんなんて、見るたびに溜息漏らすんですからね?!
なーんて思いますよね。
分かります、私もそう思ってました。
(多分、ルシアさんも。)
……。
しかしっ!!!
皆さん、聞いて下さいっ!!!
なんとこの世界、ゴリラ……いや、ゴリマッチョが大層モテる!!!……らしいんです!!!
……。
なんかさぁ、目からウロコがボロボロと落ちまくりですよ。
いやね、ダスティン様やアーサー様、トリスタン様といった細身だけど鍛えてらっしゃる方もそれなりにはモテるんですよ?なにせ3人とも美形ですし。この世界の美醜は前世とはそこまでかけ離れてもいませんから。(あ、ただし、またしても兄さまは除外です。兄さまの細マッチョは自称……いえ、詐称ですから。)
でも、アーサー様もトリスタン様も、婚活ではソコソコ苦労してましたよね???
それはですね、年齢の他に、やや細すぎて結婚するにはちょっと頼りなさげに見えていた……ってのもあったらしく!!!
えー、要するに、この世界でモテるのは『いかにもオス!!!』って感じのゴリマッチョなんですって。
それこそが、男らしくてカッコよく至高なのだそうで……。
つまり、ゴリラパトリックはこの世界においては、最高のイケメンって事なんですっ!!!(パトリック、顔は整ってますしね?)
……びっくりです。
パーティなんかに参加すれば、あっという間にワラワラと女性がパトリックに群がってくるんですよ?!
既婚者なのに!……って、これもこの世界、政略結婚が多く離婚が難しい貴族とかには、独身よりも既婚者の方が圧倒的にモテるんですよ。
……。
ち、ちなみに!!!
そんな世界なので、女性はもちろんボンキュッボン!なセクシー系がモテモテです。スレンダーでも、大人っぽい女性は人気が高いです。
つまり、何が言いたいのかと言いますと……。
私みたいなのは、全くモテないらしいんですっ!!!
何年経ってもお人形さんみたいな美少女感を残す、可愛らしいまんまの私はガキ臭すぎて、まともな大人の男性は、全く相手にしないそうです。(ほんと、幼馴染のパトリックを早いうちに捕まえといて良かったです。)
どうも兄さまによりますと、そんな万年少女な私に声をかけてくるなんてのは、ロリコン趣味を持つド変態野郎とか、か弱い女性を好き勝手にしたいと思う加虐趣味を持ったような危ない奴なんかばかりなんだそうで……。
だから、パトリック以外には絶対に隙を見せちゃダメだぞって強く言われて、私は兄さまの助言に珍しく真面目に従っているのです。
だってさ、ロリコンはともかく(私、成人女性ですし。)加虐趣味とか、怖すぎますって……!
まあ……前世でも、そういう話は聞いた事ありますしねぇ。
痴漢とかも派手なギャルやキリッとしたキャリアウーマンなんかより、反撃したり抵抗してこなそうな、大人しめの弱そうに見える子ばかりを狙うらしいじゃないですか。
……。
つまりですね、全くもってモテるタイプではない私にこういったパーティで声を掛けてくる男性というのは、私を弱そう認定した『変態野郎』以外の何者でもないんです!!!
だから私はいつだって警戒心マックスです。
絶対に隙は見せません!!!
声なんてかけてきた野郎共には氷の眼差しを向けてやります。口には出しませんが、視線でハッキリと『このド変態。腐れ外道めが!』と訴えれば、皆さん図星なんでしょうね、スゴスゴと引き下がってくれますから、1人でいたって特に問題ありません。
私……いくらパトリックが美女に囲まれてるからって、悔し紛れに変態に囲まれて喜ぶ趣味はありませんからっ!!!
……と。
そんな訳で、パーティ会場の壁際で、セクシーな美女達に囲まれているパトリックを睨みながら、今夜の私は1人寂しく飲んだくれているって寸法です。
……あ!!!
そうそう、これは言わせて下さい。
別に美女に囲まれてるからって、パトリックが浮気者って訳じゃないんですよ???
パトリックは、そりゃー深ーく私を愛してますし、いつもなら、美人達を押し退けて、ちゃーんと私の側にいてくれます。
でも今夜のパーティは、他国の太子様の来訪を記念した、歓迎パーティなんです。つまり……外交官であり主催者側のパトリックが来賓の方々に愛想よくするのは、仕事のうちなのですよね。
まあ私、中身は大人なんで……『仕事と私、どっちが大切なの?!』なんて野暮い事は言いません。
ただ、こうして壁際で飲んだくれてパトリックを睨みながら歯軋りをしている……それだけです。
私、大人なんでっ!!!
◇
「うわっ!ちょっと、ユウちゃん、大丈夫?」
2杯めのシードル(私にとっては大量の飲酒。)を飲み終えて、さすがに気分が悪くなった私がフラフラと廊下に出ていくと、アーサー様とバッタリと出会した。
アーサー様は公爵様でもあるので、こういった場でお会いする事は多い。
今夜のパーティも王宮で開かれていますしね?
アーサー様はルシアさんと結婚されて、外に屋敷を構えたらしいけれど、王宮はアーサー様の実家でもありますし。
「アーサー様、こんばんは。……あれ、今日は……ルシアさんは?」
「ん……。そ、その……。実はさ、ルシア……2人目ができたらしくて、悪阻が酷くてさ……あまりに調子悪そうだから、今日は休ませたんだ……。」
「……。」
「……。」
ルシアさん、1人目を産んだばかりな気がしたけど???……年子にしたって、ずいぶんと早すぎない?!
……。
でもまあ、この夫婦は何かにつけ仕事が早いから、そういうモンなのかも知れないなと思い、私はコメントを避けた。
「ユウちゃんこそパトリック君は?」
「パトリックはホスト役なんで、あちらで美女軍団に囲まれてます。」
パトリック……マジ、ホスト。
そのうち、シャンパンタワーが出てくるかも知れない。
……コールしちゃいますぅ?!
……。
やば、酔ってるな、私……。
アーサー様は廊下から会場を伺うと、苦笑した。
「すごいね。モテモテじゃん。」
「ええ、まあ!私の旦那様ですからね!」
パトリックを褒められたら悪い気はしません。
私は胸を張ってそう答えた。
「……それ、ドヤるとこ?……まあいいや。……ユウちゃんとパトリック君だもんね。」
「ええ、まあ。……うっ!気持ち悪っ……。」
そう答えると、うぷっと嘔吐感が上がってきてしまい、私は口元を抑えた。
「えっ?!……まさかユウちゃんもおめでた???」
「ち、違いますよ。飲み過ぎなんです。パトリックはあんなだし、誰にも相手にしてもらえないので、1人で飲んでいたら飲み過ぎちゃいまして……。」
「あー……。よし、そしたら休憩室にでも行こうか?ウッカリ廊下で吐いたら洒落にならないし。」
アーサー様は可哀想なものを見るような目で私を見つめると、休憩室に案内してくれた。
◇
「だ、だめっ……アーサー様、や……。」
涙目でアーサー様を見つめるが、アーサー様は安心させるかのように私の頬を撫で、ニッコリと笑う。
「……ユウちゃん大人しく口を開けて?」
「でっ、でも……。」
「僕……慣れてるし、すっごく上手いから、安心して。」
ズリっと後退りしようとするが、ここは狭すぎて身動きは取れない。
アーサー様は良い笑顔のまま、左手で私の頭を押さえると、口の中に指をグイッと入れててきて……。
私はたまらずに、トイレにオエっと吐き出した。
「……飲み過ぎた場合、吐いた方が楽になるんだよ。ニコラスも酒が弱いくせに調子に乗って飲むから、いつも僕が吐かせてるんだ。」
便器に寄りかかり、ハーハーと荒い息を調えている私の横でアーサー様は洗面台で手を洗いつつそう言った。
……だからさ、兄さま……アーサー様に何ししてもらってんの……って、今回は私もか。
「ほら、お水。口、濯ごうか?」
水の入ったコップを手渡され、大人しく口を濯いで吐き出すと、アーサー様に「立てる?」と聞かれた。……首を横に振ると、スイッと抱き上げられる。
「う、ううっ。ご迷惑をおがげじでずみまぜん……。アーザーざまぁ……。う、ぐずっ。……ずびっ。」
なんだか涙が込み上げてきてしまいそう言うと、アーサー様は苦笑しながら、私を部屋のソファーまで運んでくれた。
「ほんと……ユウちゃんは、ニコラスそっくり……。……今さ、パトリック君を呼んでくるから、休んでなね?」
「でも、パトリックは、お仕事で……。」
「うーん。……愛妻が休憩室に男に連れ込まれてるとか、普通は、それどころじゃないと思うよ?……ぐっだぐだじゃん?僕じゃなきゃ……いや、ニコラス似じゃなきゃ、僕にだって襲われてるからね?!」
「私っ!!!兄さまとは似てませんっ!!!襲われたい訳じゃないですけど……そもそも私……モテないし!!!……ううっ……うぷ。ゲホッ。ゲホホッ。」
「ほらぁ、えづくからもう話さない!また吐くでしょ?……そういうとこもヤバいくらい似てるからね?!……それにユウちゃんがモテないのは、近づく男ども全てを威嚇してるからだろ?パトリック君が常に君を見張ってるのも、なんか怖いしさぁ……。男って意外に繊細だから、隙があってイケそうな子にしか寄ってかないからね?……はい、もう横になってなよ。変な奴が入ってこないように鍵かけていくからね?ソファーから落ちるなよ?」
アーサー様はそう言い残すと、部屋から出て行ってしまった。
◇
「……ミア、ミア、起きろ。床で寝てちゃダメだろ。」
揺さぶられてハッとなって目を開けると、目の前にはパトリックがいた。
「うう……。リック……。」
手を伸ばしてそのまま抱きつくと、パトリックが抱き上げてくれる。
「何やってんだよ……。いきなり居なくなるから、すごく心配したんだぞ?」
「……。」
美女に囲まれてたパトリックのお小言なんて聞きたくなくて(仕事とはいえ、だ。)、パトリックの胸に顔を埋めたまま私は頭を横にを振った。
「……。あー……その……仕事とはいえ、ミアの事、おろそかにしてごめんな?アーサー様がミアを保護してくれて良かったよ。……さ、帰ろう?」
「……。」
「怒ってる……よなぁ。……でも、俺もミアの事、怒ってるんだぞ?飲んだくれて居なくなって、すごく心配したんだからな?……アーサー様だったとはいえ、アッサリと休憩室に連れ込まれてるし……何故か床に寝てるし。」
そう言って背中を撫でてくるパトリックに、なんだかカチンときてしまう。
「床は、ヒンヤリで気持ちいいんだよ!……付いてったのだってアーサー様だからだし!私、酔っ払っても知らない人になんか付いていかないもん!大人だし!!!……てか、そもそもがパトリックと違ってモテませんしぃ?!それにね、私っ……リックの事、怒ってなんかいませんから!仕事のうちだって分かってるから、別にこれは普通だもん!!!」
言うだけ言うと、私はグタリと力を抜いてパトリックの腕からズルズルと抜け出し、ツンとソッポを向いた。
……美女に囲まれまんざらでもなかったはずのパトリックにとやかく言われる筋合いなどはない。
私だってちゃんと考えて行動してる!……まあ、飲みすぎた感はあるけれど!!!
「あのなぁ……。その態度がすでに怒ってるだろ?ミアが大人なのは、充分よく分かってる。だからこそ心配したんじゃないか。……そもそも……別に俺はモテたいなんて思ってないからな?」
「な、なにそれ?!……嫌味くさいよ?!モテ自慢なの?!」
「だからさ……嫌味なんかじゃないし!……自慢でもないぞ、本心だからな?俺さ……昔、ミアに『カッコいい大人になる』って言ったろ?だからミアにカッコいいって思われたくて、地味に努力してきたんだ。他の奴にどう思われたって、そんなの結果論だよ。……俺がモテたいのは、ずーっとミアだけなんだ。」
「……!!!……リ、リックーーー!!!」
パトリックの言葉に感動した私は、またしてもパトリックにヒシッと抱きついた。……ゴリラすぎて腕輪が回りきらないが、もはやそんなのは気にしない。
てか、私にモテたいならゴリラになる必要なんかないし、むしろやめて欲しかった感もあるが(昔のパトリックはとても可愛い美少年でしたので!!!)、今となってはゴリラ・パトリックも癖になる良さがある。
まあ、あれだ……好きになれば何だって素敵に見えてしまうものなのだ!
私の好きな動物ランキング1位だって、パンダからゴリラに変更に……は、ならないけれど。まあ、パンダの可愛さは異常だから、そこは仕方ない。
「そもそも、ミアは世界一可愛い。」
「うん、良く知ってる!!!」
「……。」
なんとなくパトリックの溜息が聞こえた気がするが、きっと気のせいだろう。
だってパトリックにとって私が世界一可愛いのは当たり前だ。……愛って、そういうモノでしょう???
しばらくぎゅーーーっと抱き合っていると、アーサー様の呆れた声が聞こえた。
「……あのさ、知ってる?僕もずーっといるんだけど???……帰りの車、準備できたみたいだよ?……続きは2人きりになってからやってくれない?」
入口に目をやると、渋い顔のアーサー様と目が合った。
「あ、アーサー様、いたんだ。」
「……パトリック君、さっさとユウちゃん連れて帰って。悪酔いしてるから吐かせてあげたのに、僕に対して感謝の気持ちが足らないと思う……。」
「アーサー様、本当にすみません。この度は大変なご迷惑おかけしました。……後で何かお詫びの品でも届けさせてください。ミアの事、保護して下さり、ありがとうございました。」
パトリックが深々と頭を下げ、アーサー様にお礼を言った。
うーん……。
確かにアーサー様は迷惑かけちゃったかもだけど、吐いたのは無理矢理口に指を入れられたからじゃん。嫌って言ったのにさ。……確かに今はスッキリしてるけど、「感謝しろ」は、ちょっと押し付けがましくない?
「いいんだよ、パトリック君。困った時はお互い様だし、気にしないで。……それにしてもさ、ユウちゃんは良かったね?君もニコラス同様、しっかり者の配偶者に恵まれてさ。」
「え?……しっかりしてるのは私ですよね?恵まれてるのはパトリックでは???」
私がそう答えると、アーサー様は呆れたように言った。
「……。パトリック君、ほんとこの子、ダメだわ……ニコラスに似すぎだよ。早く引き取って。」
だから!!!
私っ、兄さまとは似てないし!!!
◇
「……ねえ、リック?私ってさ、しっかりしてるよね?前世持ちだし、家の事だってバッチリやってるよね?兄さまとは似てないよね?」
帰宅して就寝の準備を終え寝床に就くと、私はアーサー様の発言が気になってきてしまい、おもわず隣に横になろうとしていたパトリックにそう尋ねた。
「……そうだなぁ。ミアはしっかり頑張ってくれてると思う。ミアのおかげで、俺は安心して働きに出られてるしなぁ……。」
「だ、だよね?!……良かったー!ね、リック?いっぱい私を頼ったり甘えたりしていいからね?……なんてったって私には大人の余裕がありますから!」
「おう!頼りにしてる!」
そう言われたら、悪い気はしない。
私はニンマリと笑みを浮かべた。
本当にパトリックって、いくつになっても、素直で可愛い奴だと思う!(見た目はゴリラだけどさ……。)
あ、なんか安心したら眠くなってきた……。
ふわぁっと欠伸をすると、毛布に潜り込む。
お酒飲んだし、吐いたし……そりゃ眠くもなるよね。なんか疲れたし。
「……ところでミア。」
パトリックはまだ話があるのか私が被っていた毛布を捲ると、ジッと顔を見つめてきた。
「ん?なに?リック……???」
「早速だけど、今夜は俺、ミアに甘えさせてもらいたいな?」
「え……と?」
「……ミアは大人だから、俺が何を言わんとしてるか分かってくれるよな?……なあ、俺たちもそろそろ……子供、欲しくないか……?」
そう言って手を伸ばしてきたゴリラ(パトリック)の目は……恐ろしい程に爛々と光り、熱を宿していた。
……えーっと。
コレはもしや……『今夜は寝かさない』系ですか???
「それは……そう、だけど……疲れたし……さ?」
眠気と疲労感の強い私はお断りしようかとそう口を開いたが、パトリックの奴がニコニコと(でも目は笑ってないんだよね。)笑いながら、絶対に逃がさないぞとばかりに、ゆっくりと体重をかけてきた。
若干重いし(ウエイト的な意味で)……逃げられる気がしない。
「だめか……?」
そう言って上目遣いで見つめてきたパトリックに、ブワッと愛おしさが湧いてくる。
おねだりパトリックが……なんか可愛い!!!
「だめでは……ないかな……。」
そう答えると、パトリックが掠れた声で、耳元で甘く愛を囁いた。
……!!!
そしたらもうね……その言葉に眠気も疲労も吹き飛んでしまって……私は簡単にどろっと溶けてしまったのだ。
◆◆◆◆◆◆◆◆
アーサーはパトリック達が乗った車を見送ると、自分も帰り支度を始めた。悪阻に苦しむ身重の妻が心配だし、一応は顔を出したからさっさと切り上げたいのだ。
「それにしても……パトリック君は、大人になったよなぁ……。」
以前のパトリックは、ユーフェミアが大人ぶると負けじと言い返していた。しかし、今や「はいはい、ミアは大人、大人。」で済ませるようになってる。少し前までダスティンの家に行くと、必ず一緒にいて走り回っては仲良く喧嘩していた2人が大人になって結婚したという事実に、なんとなく感慨深いものを感じてしまう。
「……なんか僕……おじさんになったのかも???」
ひとりごちて、今夜は来れなかった8歳年下の妻を思い浮かべる。
「ん???……いや、そうでもないな?……僕とルシアって並んでもそこまで違和感ないよな???」
細身で若く見え、やや浮ついた性格の自分と、前世があるらしく年齢の割に大人な考え方をするルシアは……並んでいても話していても、そんなに歳が離れているようには見えないし、思えない。
見た目に関しては、ルシアがアーサーと並ぶ事を意識して、シックな装いを好んでいるから尚更だ。アーサーもルシアに並ぶ事を考え、身だしなみにはだいぶ気を遣っている。
「あれ???……むしろ、パトリック君とユウちゃんの方が歳の差カップルに見えないか???」
もともと年齢の割に落ち着いた性格のパトリックだが、仕事を始めてからは、ゴツい体格も相まってやたらと風格が出てきてしまった。服装も若いと馬鹿なされたくないのか、やたらと渋好みだ。
一方のユーフェミアは童顔で小柄な上に、パトリックが甘やかしているから、中身はいつまでもフワフワしていて子供っぽいまんまだ……。服装も流行の服を好むため、ミーハーというか若々しいイメージが強い。
「パトリック君……あれだけの美女に囲まれてもユウちゃん一筋だし、そのうち……ロリコン疑惑がわいてきたりして。」
アーサーはそう口にして、ありそうだなぁ……と心から思い、愛しい妻の元へと帰るために車に乗り込んだ。
……そんなアーサーの予想が的中するのは、ほんの数年後。
◆◆◆
「何でパトリックがロリコンって言われるのよ?!?!私たち、同い年だよ?!……てか、中身は私の方が大人だし!!!」
息巻くユーフェミアをパトリックは仕方ないなぁという顔で見つめる。他人が何と言おうが、自分はロリコンではないし、ユーフェミアとは同い年なのだから、何も問題などないはずだ。外野になんて、好きに言わせておけば良いと思うから、気にもならない。
「……だよなぁ、ミアは昔から大人だもんな。」
「そうよね?!」
パトリックはもはや良く知っているのだ。
こうやって大人扱いしてやればユーフェミアがご機嫌だと言う事を。
「……むしろ俺の方が、カッコいい大人になれてるか不安だぞ。」
「何言ってるの、カッコよくても悪くても、大人でも子供でも、私はパトリックが大好きだよ?!」
そう言って偉そうに胸を張る、子供の頃から変わらないユーフェミアがパトリックは何年経っても可愛いくてたまらない。
「でもさ……ユーフェミアは俺と大差ないのに、なんかいつまでも大人ぶってるよな?」
全肯定しすぎるとユーフェミアがそれに気づいて「適当にあしらわれた!」と拗ねる事だって、賢いパトリックは学習済みだ。
だから、前後の会話に矛盾を孕もうが、昔みたいに時々こうして言い返して拗ねてみせなければならないって事も……。
「じゃあさ、一緒におじいちゃんおばあちゃんにもなって、それでもずーーーっと一緒にいよう?」
いい事思いついたとばかりに得意げにそう言うユーフェミアに、パトリックは口付ける。
「愛してるよ、僕の小さいまんまの奥さん。」
……そう言いながら。
◆◆◆
パトリックだってユーフェミアを手放す気など、サラサラない。
だってパトリックは、初恋の少女のまんまのユーフェミアを、ずっとその腕に囲い続けるつもりでいるのだから……。




