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乙女ゲームの残りものの婚活

 私たちが知り合いだと分かると、マリアンは明らかにホッとした様子になり、2人に話しかけた。


「あのー……。お2人はユーフェミアとはどういったお知り合いなんですか?ご親戚、とか???」


 ……あれ?

 人見知りマリアンが発動しない???


 あ……!もしかして……。


 アーサー様もトリスタン様も、結構な年上だから平気なの?!

 そういえば、マリアンはホテルの支配人さんや、従業員さんとは普通に話せてた……。


「えっと……。貴方が……お見合い相手のマリアンさんですか?」


 トリスタン様が興味深そうにそう言って、マリアンを見つめる。


「あ、はい。私がマリアンです。」


「はじめまして、私はトリスタン・バチルスです。聖女様の土の聖騎士を務めています。……そちらの彼がアーサー・ストレプト。彼は火の聖騎士なんですよ。……つまり、私たちはユーフェミアさんの兄であるニコラスの同僚って言ったらいいのでしょうか……。それで知り合いなんです。」


「な、なるほどーーー!そういうお知り合いでしたかーーー!……ってか、ええっ?!私のお見合い相手、聖騎士様なんですかーーーっ?!」


 アワアワとするマリアンにトリスタン様はフフフッと笑う。


「ま、そうなりますかね。……で、お久しぶりです、ユーフェミアさん。貴女はマリアンさんのお付き添いなのですか?」


「はい、そんなトコです。お久しぶりです、トリスタン様。……マリアンとは同じ学校のお友達なんです。それで、お見合い相手が2人だから不安だからと言われて、付いてきたんです。それにしても、まさかお2人がマリアンのお見合い相手だとは……。」


 私がそうトリスタン様に話していると、アーサー様が話に割り込んで来た。


「まあね!僕たち、売れ残りだから!……結構トシ、いってるだろ?……もうね、歳が近い人がいい!とか、貴族がいい!とか、言ってられないんだよね?!」


「ア、アーサー!」


「事実じゃないか、トリスタン。僕たちは貴重な適齢期を聖女様に捧げちゃったんだもの、しょうがないよ。」


 アーサー様はそう言うと、フッと哀しげな顔をした。


 いやいや、ちょ、ちょっとそれ……ぶっちゃけ過ぎでは?


「あのー……お2人は、結婚された聖女様の事がお好きだったんですか?」


 マリアンは気遣わしげにアーサー様に聞いた。


「うわっ、慰めてくれるの?マリアンちゃんて優しいんだね!……アンジェリカの事はもちろん好きだったよ。なんてったって、僕らの聖女様だし。……でもね、アンジェリカは初めて会った時にダスティンに一目惚れして……それからずーーーっとダスティン一筋だったから……。」


「ええ。そうなんですよ。だから、私たちはアンジェリカを大切には思っていましたが、なんと言うか、恋愛的な意味では『そうですか。では応援しますね。』って感じでした……。」


「うん。……それでも僕たちは、一応アンジェリカが正式な聖女になった場合の配偶者候補だったりするから、出来レースって分かってても、見合いなんかできなかったんだよねぇ……。アンジェリカたちは結婚したけど、聖女に就任したばかりの頃は、僕たちも含めて多忙だったし、じゃあ僕らは婚活しまーす!って訳にもいかなくてさ。……やっと落ち着いたと思ったら……もう、売れ残りになっちゃったってわけ。」


 ……。


 乙女ゲームの裏側って……そういう感じなのか。


 まあ……言われてみればそうなのかも……。


 アンジェリカ様は神託を受けて、連れて来られたただの田舎娘だ。(言い方が悪いのは仕方ない。だって私……元・恋敵ですから!)

  正式な聖女になったとしたら、それこそやっぱり強力な後ろ盾が必要なのだと思う……。


 聖騎士は、由緒ある家柄の貴族だし、後ろ盾になるでなく、品位のある豊かな生活を聖女様に提供する事が出来る。


 なるほどねぇ……って感じだ。


「ま、そんな訳で、僕らは行き遅れちゃったんだよ。……で、最早結婚とかは諦めていたんだよね?」


「ええ。……お話が来ても、未亡人とか、ワケありの方ばかりでしたからね……。」


 トリスタン様が首を横に振ると、アーサー様も腕を組んでウンウンと頷いた。


「でもね、ユウちゃんのお兄さんだよ!!!」


「えっ?!私の兄さま?!」


 アーサー様は話を静かに聞いていた私をビシッと指差した。


「そう、ニコラス!……あいつさぁ、上手いことやって結婚したろ?!」


「そうなんです!!!私たち3人はずっと独身だなって言って一緒に笑ってたのに、あいつってば、いつの間にか相手を見つけて、結婚したじゃないですか!……ニコラスは昔から運と要領だけは良かったですから、上手くやりやがりました……!」


 に、兄さま……抜けがけしたのか……。

 まあ、分かる。兄さまって、そういうちゃっかりなとこ……ある。

 

 しかも、兄さまがケイティさんとお見合いしたのは……多分、アーサー様たちは多忙だからと、そういうのを我慢していた時期……なんだよなぁ。


「僕たち、なんか面白くなくてさ。……それで、成人のパーティーを片っ端からまわったんだよね?そしたらホテル王のモラクセラ氏に、『うちの娘とかどうですか?』なんて言われて……。超お金持ちの家のピチピチの可愛いらしいご令嬢とお見合いなんてさ、上手く行ったら裏切り者ニコラスを見返してやれそうじゃない?で、僕はホイホイとやって来たんだよね?」


 ……。

 ……。

 ……。


 トリスタン様がコホンと咳払いする。


「あからさまなお金目当て発言は、マリアンさんに失礼ですよ。……アーサー。」


「あ!そ、そうだね!ごめんね、マリアンちゃん!……動機はそんなだけど、仲良くなれたらいいなーってのは本当に思ってるんだよ?……それに、トリスタンが来た理由は、僕とはちょっと違うしね?」


 ……。


「え……ちょっと違う???」


「聞いてよ、ユウちゃん。こいつね……ニコラスがユカリオ女学院卒の女性と結婚したろ?!控えめなのに芯のある、すっごく素敵な女性と。そしたらさぁ、それにものすごーーーく憧れちゃって、学校名に釣られてマリアンちゃんのパーティーに行ったわけよ。で、可憐なドレス姿のマリアンちゃんに惚れ込んじゃってさ……『あの方は私の理想とするレディかも知れません。』とか、クソ真面目な顔して言ってさぁ……。笑うでしょ……?」


 え、ええっ……。


 前世でもいた……。

 女子校=お淑やかな女の子が集う場所的な妄想を持つ人!!!

 しかも、あの婚活ドレスが抜群に効いてるし……!


 お金目当て発言のアーサー様もだけど……。

 それもちょっと……どうなの?!


「や、やめてください……アーサー!……で、……ですが、否定はできません……。私たちはアルカエラ校卒で、共学だったので、周りにはサバサバした物おじしない女性が多かったんですね?……な、なので……いちいち反応が初々しいニコラスの奥様は……衝撃というか……正直、凄ーーーく羨ましかったんです!でも、控え目なのにちゃんと芯もあって……これが真のレディなのだなぁ……と。ああっ!!!これは私の好みの問題で、女性がどうあるべき……とかではないんですよ?!ただ、私は……ああいう女性が側にいてくれたら、すごく幸せだろうなぁと……。」


 力説するトリスタン様を白けた目で見つめると、トリスタン様は私から目を逸らし、真っ赤になって俯いてしまった。


 あのさぁ、どーでもいいけど、2人とも色々とストレート過ぎないかな?もはやポンコツと言えるレベルでは???


 ……あ!


 ポンコツだからこそ、恥ずかしげもなく乙女ゲームの中で砂を吐くようなセリフを言えちゃうのかも……?

 普通なら照れてド・ストレートにあんな事は言えないよね……?


 うん、あるな、ある。

 きっとそうだ……。


「あ、あの、す、すみません!なんか、わ、私。全然レディじゃなくて……。ご、ごめんなさい……ト、トリスタン様をがっかり……させちゃいました……ね。」


 私の後ろに隠れていたマリアンが、顔を出してすまなそうにトリスタン様にそう言うと、トリスタン様の方は慌てて、「い、いえ!マリアンさんは、とてもお可愛いらしい方です!とても素敵だと思いますよ!!!」……と叫んだ。


 そして2人は顔を見合わせ、真っ赤になった。


 ……。


「……あのー、僕もいるんですけど?……ねえ、ユウちゃん、どうやら、あそこ、何か始まっちゃったみたいだね?」


「……そ、そう、ですね。」


 ニコニコとアーサー様にそう言われ、私は頷くしかなかった。









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