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マリアンのお見合デート

「あのさ、お見合いデートに参加するって、意味わかんないよ。マリアンが不安なら途中まで付いていくのとかは構わないよ?……だけど、一緒にってのはおかしいでしょ?マリアンのお見合いだよね?」


 私が苦言を呈するとマリアンは眉根を寄せた。


 ……マリアンは年の近い男性が苦手だ。

 だから、不安だから途中まで一緒について来て欲しい……というのは、まあ、わかる。

 でも、一緒にお見合いデートをしようは意味不明すぎる。


「うーん。でもさぁ、2人の男の子と同時に見合いデートするとか、私にはなんだか難しい気がして……。だから、ユーフェミアも一緒に行ってくれたら助かるなって思ったんだよね?」


「え?……な……なにそれ……。」


 2人同時にお見合いデート???

 ますます意味不明なんだけど???


「ほら、私……緊張しいじゃない?だからさぁ、1対1でデートとか、ガチガチになっちゃうと思うんだよね?」


「う、うん……。」


「で、それをお父様に話したら、なら2対1ならどうかって……。」


 は???


「1人が無理なら2人なんて、もっと無理じゃない?」


「だよねぇ……。私もそう言ったんだけど、お父様ったらその方がお見合いとかデートって感じも少ないし、ワイワイできて緊張しないんじゃないかって言うの。だから、私とお相手である男の子2人の3人で、聖夜祭に遊びに行ってみたらって……。」


「う、うーん……。まあ、3人なら、おじ様が言うようにデート感はあまりない気はするけど……。でも……それって……???」


 私はそこまで言ってマリアンを見つめると、マリアンが激しく頷いていた。


「多分、ユーフェミアが考えてるのと同じ事を私は危惧してると思う!だから言って?!」


「うん。……それってさ……結局、マリアンがぼっちになっちゃうってオチじゃないのって思うんだけど……?」


「だ、だよね?!やっぱり……そう、思うよね?!」


「うん……悪いけど……。」


 マリアンのお父様は、お見合いという緊張感を無くして、かつ意識してガチガチになりそうなデート感も減らして、お相手と近づけるようにする作戦なのだと思う。


 だけど……。


 たとえデート感がなくても、知らない男の子(しかも2人!)とマリアンは、やっぱり何も話せないんじゃないかなって、思うんだよね?

 

 最初は男の子たちもお見合いだし頑張って話しかけてくれるかも知れない。だけど、マリアンがずーっとロクな返事もできないで、ひたすらアワアワしていたら……男の子たちは、もういいやってなって、2人で話し始めちゃうんじゃないかな?


 悪いけれど、2人で盛り上がる男の子たちの後を、目から光を消したマリアンがトボトボついて行く光景が容易に想像できちゃうんだけど?!


「だから、だよ!!!だからね、ユーフェミアも一緒に来て欲しいの!……パト様の事にかこつけたけど、ホントは……私……ボッチが嫌ぁ!!!ユーフェミアが来てくれたら、心強いの!ね???だから、お願いっ!」


「そ、そう言う事かぁ……。……う、うーーーん。……ま、まあ、泊めて貰ってるし、おじ様がOKなら付き添ってもいいよ?」


「ホント?!……でも、何でお父様の許可がいるの?!」


「いやいや、コレ、一応はマリアンのお見合いでしょ?私なんかが許可なく乱入したらマズいんじゃない???」


 だってさぁ、とりあえず気楽に会うとはいえ、この目的はマリアンのお見合い……つまり、将来の旦那様探しだ。邪魔になっちゃマズイだろう。


 そもそも、彼らは成人のパーティでマリアンに惚れ込み、おじ様の非常に厳しいであろう審査をパスしてお見合いにこぎつけた、超エリート高位貴族……なんだよね?

 そんな家の子たちとお会いするのに、お友達連れなんかで行ったら、失礼だって怒られてしまうかも知れない。


「……分かった。じゃあ、お父様に聞いてみるね?……でも、それでいいよって言ったら、ユーフェミアも一緒に来てくれる???」


「うん、それはもちろん。……だけど、マリアンのお見合いなんだから、ちゃんとマリアンも頑張るんだよ?!」


「う……。そ、それは……分かった……!」


 私がそう言うと、マリアンはコクンと頷いた。




 ◇




 ……。


 えー……。


 私としては、マリアンのお父様は私を連れて行くのはダメって言うのではないか……と、思っていました。


 だって、最初にマリアンとお見合いさせるという事は、おじ様の一押し……つまり、今回お見合いするお相手のどちらかと、できれば話をまとめたい……ってのが本音だよね?


 だけど私が一緒に行ってしまったら、マリアンの事だ……私にベッタリくっ付いて、男性2人とは殆ど話さない事になるかも知れない。

そうしたら、せっかくのお見合いは、ダメになってしまうだろうし、無関係の女の子を連れて来たらお相手は怒るかも……。


 ……。


 なーんて考えていた時期が私にもありました!


 で、す、が!!!……なんと!!!

 おじ様は私が思うよりも……親バカだったのです!!!


 ……。


 おじ様ってばですね、『デートなんかさせて、知らない男と仲良くなっちゃうの、やっぱり心配だから、ユーフェミアちゃんがついて行ってくるの、おじさん嬉しいよ!』……とか、喜んでましたからね?!


 だからさ、これ、お見合い……ですよね?!


 ちょっと心配になるくらいお相手の方と親しくなれたら……むしろ相性バッチリで、ラッキーなのでは……?


 そもそも先方だって、それで大丈夫なの……?


 ……ま……いいけどさぁ……。


 ……。


 そして、聖夜祭の日はやって来た。


 ……。


 パトリックは彼女と聖夜祭に行くのだろな……と思うと、なんだか辛かった。

 そして、私も聖夜祭に付き添いとはいえ行く事になってしまった事も、正直言うとモヤモヤしている。


 まあ、聖夜祭は王都中央公園と呼ばれる、巨大な公園で行われ、たくさんのお店が立ち並び、人出もすごいから、偶然パトリック達に会ってしまうなんて事は、まずないだろうけど……。


 それに、きっと部屋でひとりでフテ寝していても、私はパトリックの事を考えてしまうだろうし、それよりはマリアンのお見合いに付き合ってワチャワチャしてる方が、マシかも知れない……。


 気持ちはどんよりだけど。


 ふと、毎年一緒にパトリックとお揃いで買っていた聖夜祭のオーナメントの事を考える。


 毎年、どんな物にするかモメるんだよね。


 可愛いのにしたい私と、カッコいいのにしたいパトリックで妥協点を探すのはいつも大変で……。


 ……今年のパトリックは……お祭りでどんなものを買うのだろうか?ルシアさんとお揃いにするのだろうか?


 ……ひとつだけ言える事は、もう私とお揃いにはならないと言う事だけだ……。


 私は小さな溜息を漏らすと、お見合いデートに行くための準備をはじめた。




 ◇




 お見合いの待ち合わせ場所であるホテルのレストランにやって来ると、マリアンのお相手たちはもう来ているそうで、ウェイターさんが私たちを奥にある個室に通してくれた。


 どうやら2人は知り合いなのか、親しげに話をしながらお茶を飲んでる。入り口からは顔までは見えないが、2人ともやや大柄な男性で、1人はふんわりした金髪、もう1人はキッチリと撫でつけた茶色の髪だという事だけが目に入って来た。


 ……あ、あれ?


 同年代の男の子って感じじゃないんだ???

 2人とも結構年上???


 マリアンは少し緊張したのか、私のワンピースの袖をキュッと握ってきた。


「マリアン、大丈夫だよ。マリアンのお父様が選んだ方だよ。悪い方たちではないはず……。」


「う、うん……。」


 そして、私たちが部屋に踏み込んでいくと、2人は顔を上げた。


 ……。


 ……え。


「「?!?!」」


「!!!」


 2人が私を見つめて固まる。

 私も動けず、2人を見つめる。


「ユーフェミア???ど、どうしたの?」


 マリアンが不思議そうに私の顔を覗き込んだ。


 え、えっと……。

 こ、これは……どうすべきか……。


 私がオロオロとしていると……金髪の男性が席から立ち上がり、人懐っこい顔で破顔した。


「久しぶりだね、ユウちゃん!」


「ユウ……ちゃん?……ユーフェミア、もしかしてお知り合いの方???」


 ……。

 ええ……まあ……。


「……お、お久しぶりです。アーサー様……それと……トリスタン様……。」


 ……。


 な、なんてこったい!!!


 マリアンのお見合い相手は、まさかの……。

 我が兄さまと同じ、乙女ゲームの余り物……!!!


 火の聖騎士のアーサー・ストレプト様(ふんわり金髪)と、土の聖騎士のトリスタン・バチルス様(撫で付け茶髪)……だったのだ。








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