表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/52

50話 謎の少女

「こらっ、ダグラス!」


「うっせえ!」


 あれから1年経った。特に何事もなく、あの男の存在を意識することもなく、無事に成長していた。


「相変わらずね……」


「お嬢様、大丈夫ですか?」


 私は弟、ダグラスによってびしょ濡れになってしまった。物影に隠れて、バケツに入った水をかける機会を伺っていたらしい。

 こういったことは日常茶飯事なせいで、ルーシーも落ち着いている。


「大丈夫よ。それよりも、ダグラスを追いかけなきゃ。どこ行くか分かったもんじゃない」


「あっ、お待ちを!」


 ダグラスは事あるごとに屋敷を抜け出そうとする。その度に多くの人を困らせてしまうのだ。


「ちょっと、どこに……ん?」


 初めて見る小屋だった。

 屋敷は広いし、私も子どもなので全ての場所に行かせてくれるわけではない。そのため、知らない場所はあって当然だ。


「……ここに入っていったわね」


 ダグラスは子どもなせいで考えが甘い。

 地面には子どもの足跡がしっかりと残っている。それに、扉も少し開いている。


「ダグラス! 出てきなさ……あれ?」


 誰もいなかった。

 物置なのか色んなものが置かれて、埃を被っている。


「……分かったけど、変ね」


 明らかに足音の違う箇所がある。恐らく、空洞があるのだろう。

 ダグラスはそこに隠れているはず。だが、何故こんな物置に空洞が?


「あっ、開いた」


 意外とあっさり、床が開いた。

 その先には、階段が続いていた。先は暗いが、確実に何かある。


「ダグラスー?」


 そう問いかけてみるが、返事はなかった。

 私は魔法で火を出し、その光を頼りに先に進んでいった。


「あああああ!」


 突然、叫び声が聞こえた。

 しかも不自然な感じにだ。言うなら、叫び声を加工して途中から流しているような――


「ダグラスなの!?」


「痛いぃぃぃぃぃぃ!」


 その必死の叫びに、私は慌てて階段を降りた。

 降りていくと、空間が見えた。そして、ダグラスの姿も見えた。


「ダグラス! ……!?」


 ダグラスに駆け寄ったと同時に、私は驚愕した。

 目の前にはベッドがあり、そこに女の子が横たわっている。見たところ、今の私の年齢と同じくらいだろうか。


 その上、この周辺の空気も変だ。酸素が少ない……にしては妙な感覚だが、呼吸がしにくい。そして、何故か力も抜けていく。


「誰……?」


 横たわっている女の子を見た。こんな子どもの存在は知らない。聞かされた覚えもない。何故、こんな地下に?


「ダグラス、どこが痛いの?」


「痛いよぉぉ……!」


 それよりも、まずはダグラスだ。痛がっていて返答はなかったが、右腕が痛いらしい。


 その腕に触ると、冷たかった。あまりの冷たさに、左腕も確認のために触った。こちらは普通の暖かさだった。


「何があったの?」


「あいつが……」


 ダグラスが指差したのは、横たわっていた女の子だった。

 この女の子が? 横たわっていて、何もできないはずだが……そう思いながらも、女の子の体に触れようとした。


「いっ……! な、何、今の?」


 触れた瞬間、腕に痛みが走り、慌てて引っ込めた。

 だが、今ので何が起こっていたのかは分かった。


「魔力が……この子に持っていかれてる?」


 確かに、腕から魔力が抜けていく感覚があった。それも、かなりの吸引力だ。


 子どものダグラスの反射神経は良くない。それもあって、魔力をかなり持っていかれた。そして、魔力が抜けたことで腕が冷たくなり、痛がっているのだろう。


「……いいこと思いついた」


 使える。そう思った。

 そのためにはまず、この子を起こさなければならない。


「ダグラス、腕出して」


 ダグラスの腕に触れ、魔力を流す。

 魔力不足によるものだ。これで治るだろう。


「痛く……ない」


「よし。それなら、外に出てルーシーを呼んできて」


「嫌だ」


 こんな時も人の言うことを聞かないんだからっ……!

 ……仕方ないわね。


「私のプリン、あげるから」


「呼んでくる!」


 ダグラスはすぐに階段を駆け上がっていった。

 おやつで釣られるあたり、子どもだ。チョロい。


「さて……と」


 お母様から貰ったネックレスの姿を現させ、触れる。

 このネックレスも使って、私の本気を出す時が来たようだ。


「力試しよっ!」


 そう言って、私は自身の魔力を意図的に暴走させた。


「起きろーっ!」


 ――そう叫んだ後のことは、あまり覚えていない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ