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47話 さいごの魔法、咲かせたまえ

前日に投稿したつもりでいましたが、投稿できていなかったので本日投稿いたしました。予定よりズレてしまい、申し訳ありません。

「2人の弟をお願い。エドワードは……多分、魔力を暴走させるわ」


 お母様の言葉は事実だった。

 ゲーム内でのエドワードはサラによる酷い暴言や暴力の末、魔力を暴走させている。だが、私はそんなことはしない。


「魔力が桁違いよ。魔力を周囲に放出まではしてないから気付いたのは私だけだろうけど、体内の魔力は既に貴方と同等よ」


 それはつまり、一般的な魔法使いと同等ということだ。

 特訓も何もしたわけではない、才能。エドワードは天才だったけど、まさかこんな赤ちゃんの頃からだったとは。


「あれをあの小さな体で体内に留めていられるのが不思議なくらいよ」


 それを言うなら、私は? と言いたくなった。

 一応、お母様の指導のせいで私も十分な規格外である。


「成長していくにつれ魔力も増える。でも、貴方みたいに鍛えることはできない。1度暴走させないと、魔力に体が耐えられないわ」


 つまり、将来的に暴走はほぼ確定というわけだ。

 それがいつになるかは分からないが、対策の必要が出てきてしまった。


「ダグラスは……多分、あのまま育ちそうね」


 手のつけられないほどになる、ということだろう。それは成長後の彼の性格から察している。


「それと、あの人のこともお願い」


「……お父様、ですか?」


「そうよ」


 お母様の言いたいことは何となく分かっていた。


「私の代わりにはならないで。でも、喝を入れてあげて。私が死んだ後――まあ、そうなるわ」


 お母様は言葉を濁した。私は知っているからだ。

 お母様の言い方からして、叔父のアーロンの影響を受けようが受けまいが、ゲーム通り発狂するということだろう。


「貴方の前に会ったけど……ね」


 お母様はどこか悲しそうな表情をしていた。というか、悟っていた。


「私がまだ大丈夫そうに見えるからかな……後2、3日もすれば起き上がれなくなるでしょうけど」


 お母様は確かにまだそこまで重病には見えない。いや、出来るだけ平気そうに振る舞っているという方が正しいだろう。


 だけど、2、3日? 私の勘違いだったの? でも、お母様は――


「1ヶ月――は、無理ね。多く見積もって3週間かしら」


「あ、あのお母様」


 困惑する私を他所に、お母様は言葉を続けた。


「まだ動けるうちに、これが間に合って良かったわ」


 そう言って先程のネックレスを取り出し、私の首にかけた。

 ネックレスには重みがあり、とても子どもが身に着けるような物ではないと感じた。


「このネックレスのことは決して誰にも言わないこと。ルーシーにもそう言ってあるわ」


 確かにこんなとんでもないもの、バレたら確実に盗まれる。

 最悪、命まで狙われるかもしれない。


「魔法は施してあるから、ただの宝石に見えるわ。それに、ほら」


 そうお母様が言うと、ネックレスが消えた。重みもない。

 だが、私にはその存在が感覚的に分かる。確かにここにある、と。


「こんな感じに消したり軽くしたりできるわ。流石、王室御用達の一流の職人ね。完璧だわ」


 こんな物を1年もしないで材料を集め、制作するとは……それは、無茶な注文だというのも頷けた。


「秘密なのは、それだけじゃないわ。ルーシーは知ることになるでしょうから、後で聞きなさい」


 そう言って、お母様は再び私の首元に現れたネックレスに触れた。

 そして、深呼吸した。


「ありがとう、サラ」


 その目は少し涙ぐんでいた。だが、お母様はそれを拭い、いつもの凛々しい顔に戻った。


「――契約」


 その瞬間、私のネックレスが発光し、魔法陣が現れた。

 それも1つではない。部屋中に、複数の魔法陣が現れた。


「お、お母様?」


「四大元素の精霊よ。ここに新たなる誕生を許したまえ」


 風が吹き、地面は揺れ、水は渦巻き、火の粉が飛ぶ。

 窓もカーテンも閉まっており、部屋には水や火もどこにもなかったはずなのに。


 それはあまりにも異様な光景だった。


「天地は繋がり、我至らんとす。竜巻現る嵐の如く。大地が憤怒し、怒り声上げようと動せず――」


 古語のような詠唱だった。かなり――いや、長すぎるほどの詠唱だ。


「――我が命、ここに咲かしたまえ」


 動揺し、もはや後半の方は何を言っているのか分からなかった。古語とはいえ、分かる言語のはずなのに、頭で理解できなかった。


 周りの光景がが異様なせいもあるだろうか。長い、長い――10分くらいあったような、詠唱のように感じた。


「呼応せよ――」


 そして、目も開けていられないほどにネックレスが発光した。

 目をしっかり閉じていても、私の目は光を感じるほどだった。まともに開けていたら、失明ものだろう。


「……私はただ、貴方の無事を――」


 掠れた小さな声が、聞こえた。


「……お母様?」


 光が消え、恐る恐る目を開けると全ては元通りになっていた。


 ――ただ1つを除いて。

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