表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/52

46話 3つの本

「……お母様」


「貴方がいて、本当に良かった」


 お母様はそう言って笑った。


「前世の記憶があって、そこではこの世界がゲーム……だよね? そんな創作物だって聞いた時は驚いたけど」


 お母様は懐かしそうに目を細めて、空を見上げていた。


「前にも言ったけど、ここはゲームじゃない。例え神がいて、貴方の運命を決めていようと変えてやりなさい」


 お母様は私の手を取り、真っ直ぐ目を見つめて言った。


「主人公は、貴方よ」


「……はいっ」


 私は下唇を噛んだ。

 この溢れる感情を抑えるために。


「多分、私はエドワードの出産後に死んでるはず。そうでしょ」


「……はい」


 エドワードとは、この前生まれた私の弟の名前だ。


 お母様の言う通り、本来は出産とほとんど同時に亡くなっている。それなのに、お母様はそれから2週間ほど経った今も生きている。


「私がいい例よ。貴方のおかげで運命は変わった。本来なら、とっくの昔に身も心もボロボロになっていたでしょうね。こんなに会話もできないはず」


 お母様の言う通りだ。声は弱々しくなっているものの、会話も普通に出来ている。会話出来ているのが、私も不思議でしかない。


「貴方に教えられることは、できるだけ教えたわ。それと、これ」


 そう言うとお母様は分厚い本を2冊と、それより薄い本を1冊、私に差し出した。

 それぞれ、厚い方の表紙の色が赤、緑、薄い方はピンクと、それぞれ違っていた。


「これは?」


「赤い方は私から貴方への指導書よ。私が教え足りなかったことは勿論、復習としても使えるように書いてるわ」


 ……あれでまだ教え足りなかったことがあるというのか。

 お母様の指導の数々を思い返すが、正直に言うとあれで全てなのではないかと思えるほどだった。


「緑は……貴方の世界風に言うと、攻略本かしら?」


「攻略本?」


「そう。貴方が死ぬのを防ぐために書いたものよ。ただし、それは助言程度と思いなさい」


 本を絶対だと思わず、臨機応変に自分で対応しろ、ということだろう。

 ここは私にとってはゲームの世界だったが、今は現実。人生の攻略本など、存在しない。


「最後の本は……まあ、そのうち読みなさい。大したことじゃないから」


 お母様らしくないはぐらかし方に疑問を覚えた。

 一体何が書いてあるのか気になり、本を開こうとした瞬間だった。


「ダメよ! 見ちゃダメ!」


 全力で止められた。顔を真っ赤にし、顔を横に振っている。

 一言で言おう。可愛い。本当にお母様らしくない。


「……こほん。そういうわけだから、しばらくしてから読みなさい。それら全て、誰もいないところで見るように」


 何事もなかったかのように表情は戻り、“そのうち”から“しばらくしてから”に言い方は変化した。


「……赤と緑はルーシーや今後何かしらで貴方の秘密を知ることになる、信頼できる人ならいいわ。もう1冊は誰にも見せないこと。いいわね」


 何かヤバいことでも書いているのだろうか。……それなら、後回しでもいいのかもしれない。


 重要度の高い他の2冊は辞書――いや、それよりも分厚いかと思うほどの内容。こちらを読むのに精一杯になるかもしれない。


「……さて。貴方にお願いしたいことがあるわ」


 改まった様子で、お母様は言った。私も身が引き締まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ