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45話 さいごのプレゼントは――

「ルーシーは戻ってきた?」


「……そういえば、ここ最近見かけてませんね」


 話がある、と言われてお母様の部屋に来ていた。

 出産後2週間ほど経ったがあの男、アーロンが捕まることはなかった。

 そして、お母様はみるみるうちに痩せていった。いや、本来はそうでないとおかしいのかもしれない。


 お母様は生まれつきの病気。とっくの昔に長くないことは本人も分かっている。それなのに、それまでは一見すると普通だったことがむしろ異常なのかもしれない。


「今日戻ってくると聞いていたのだけど……」


「奥様、戻りました」


 そんな話をしていると、ルーシーが現れた。その手には、立派な箱があった。


「おかえり。例の物は?」


「こちらに」


 ルーシーは手にしていた箱の中身をお母様に見せた。しかし、死角になっていて私にはそれが何か見えなかった。


「――うん。流石ね。期待以上よ。ギリギリだけど……」


 自嘲気味に、お母様は笑った。

 そして、私に微笑みかけた。


「サラ」


「はい、お母様」


「いつか――貴方の誕生日にお出かけしたわよね?」


 よく覚えている。襲撃されたりしたものの、楽しかった。今世で初めての外出だった。


「これは、その時注文したものよ」


 ……そういえば、確かに職人に注文していた記憶がある。無茶な注文だったのか、驚いた表情をしていたのを覚えている。


 母の注文の1つは半年以内、だったと思う。半年はもう既に過ぎている。半年以内では無理だったのだろう。


「貴方への最後のプレゼントよ」


「うわ……!」


 言葉を失った。それほど心惹かれるほど、美しいネックレスだった。


 何カラットあるのだろうか。それほどまでに大きな宝石とその周りに散りばめられた様々な色の宝石。

 よく見ると、チェーンの部分にも小さな宝石が散りばめられている。現代でも、こんなに細かいものはなかなかないのではないだろうか。


「この大きい宝石……ダイヤモンドですか?」


「ええ。でも、ただのダイヤモンドじゃないわ」


 得意げに、お母様は続けた。


「ざっくり言うと、魔力石とダイヤモンドの混ざったものよ」


「奥様、そんな物を頼んでいたのですか!?」


 初耳だったらしい。ルーシーは買い物の際にはいなかったのもあるかもしれないが、受け取りを頼まれたのにそれが何か聞かされてもいなかったらしい。


 ルーシーも声を上げるほど驚く物。ゲーム内でそんな物の話は聞いたことがなかった。


「そ、そんなにヤバい?」


「ヤバいどころじゃないですよ……! 年に数回しか取れない言われる物をダイヤモンドで、しかもこんな大きな物を……!」


 ルーシーも困惑するほどの代物、というだけで私もいかに貴重な物か分かった。


「宝石と魔力石が混ざったものは人工的に作ることができていない。天然でも小さいものが多いわ」


「こんな物を一体……?」


「……まあ、普通の魔力石みたいな使い方に加えて、放った魔法をさらに強力にしたり、色々できるわ」


 魔法の増強は魔力石に込められた魔力抜き、ってこと?

 もしそうなら、チートアイテムでは? 国宝級のものでは?


「普通の魔力石よりも超強力よ。詳しい説明は後でルーシーに聞きなさい。説明書も付いているでしょうし」


 ルーシーの方を見ると、震えながら何かぶつぶつと呟いていた。

 うん。やっべえ物なのはよくわかった。チートアイテムだわ。


「それと、手を出して」


 そう言われたので、両手を差し出した。

 その手の上には、これまた綺麗な赤い宝石のついた指輪があった。


 これ、見たことがあるような……?


「ルビーの宝石よ。実家で、私の母から貰ったもの。ずっと身につけていたから、見たことあるでしょ?」


 そうだ。結婚指輪ともう1つ、右手に指輪をつけていた。それは確かにこの指輪だった。


「貴方に似合うと思って」


「お母様の方が似合いますよ」


「成長すれば、もっと似合うわ」


 お母様の目や髪色に似た深紅の赤。私もお母様と同じような目と髪の色だ。

 嬉しくて、ニヤけてしまった。


「……ルーシー」


「はい、奥様」


「本当に、ありがとう。貴方にはいっぱいお世話になったわ」


 そんなお母様の言い方に、私は戸惑った。

 これでは、まるで――


「これからも子ども達を――特に貴方には娘のサラを、お願いするわ」


「奥様……そんな、これからも喜んでお母様をお世話させていただきますよ」


「……貴方に、これをお願いしておくわ」


 そう言って、お母様はベッドの近くの机に置いてあった木箱をルーシーに手渡した。


「これを皆に。貴方の分もあるから、確認しておきなさい」


「……奥様」


 ルーシーの目は既に涙でいっぱいで、今にも溢れそうだった。


「……()()()は、サラと話したいわ」


「……かしこまりました、奥様。最後の命令、承りました」


 ルーシーは扉に向かい、部屋の扉を開けた。

 部屋から出る前に、ルーシーはお母様に向かって頭を下げた。


「……奥様。今まで、ありがとうございました。お世話になりました。感謝してもしきれません」


「こちらこそよ」


 部屋の扉が、閉まった。


 お母様と、2人きり。


「……サラ」


 重い空気の中、お母様が口を開いた。

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