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27話 母は子を思う

 結局、話はあれ以上進むことはなかった。ただただ沈黙が続いたため、私達は退室した。

 両親は共に優秀な魔法使いだ。その2人でもお手上げになるほどとなると、相当なことだと更に実感する。


「……サラ、この件についてどう思う?」


 唐突に、お母様にそう訊かれた。思わず、呆気にとられてボーッとしてしまった。

 だが、そのことを何故私に問う?


「何故私に訊くのか、とか思ったかしら? 貴方、多分だけど私が思うより賢いでしょ? 貴方の魔法の特訓していて、分かったわ。言うなら……そうね。外と中の年齢が合っていないような気がする。どういうことかしらね?」


「え、えーと……」


 お母様の察しの良さには毎度驚かされる。

 いや、私が隠すのが下手なだけなのかもしれない。だが、それでもこの結論に達するまでにはかなり早いのではないだろうか?


「それはですね……」


 私は1度死んでいて、魔法もない元の世界からこの異世界に転生したことを説明した。


「それだけじゃないでしょ?」


 と言われた。それだけでは納得していないようだった。


 諦めてこの世界がゲームの中の世界だということと、そのゲームの内容を簡単に説明した。科学が発達していないこの世界ではゲームなんて物は存在しない。だが、説明するとある程度は理解したようだった。


「なるほどね。だから魔法のない世界から来たにも関わらず、この世界の魔法についても理解していたわけね。そして、貴方はその話の中だと悪に染まる、と」


「……」


 すると、お母様はどこか呆れたようなため息をついた。直後に、すぐに笑って私を抱きかかえた。


「安心しなさい。貴方という転生者がいるのだから、その時点で、そのゲームとやらの内容とは異なるわ。この世界もまた、そのゲームとは別の世界。大まかな流れは同じだとしても、その運命は変えられるはずよ」


「……!」


 私は何を危惧していたのだろうか。自分はあのサラではないと思っていたはずなのに。あのサラのようにはならないと思っていたのに。無意識に、自分が悪役令嬢となることを恐れていたのだろうか。


「私のことを、教えた覚えもないのにお母様と呼ぶのもそのせいね」


「サラが言っていたので……」


「貴方もサラでしょう? ……いいえ。私にとってのサラは、貴方以外にはいないわ」


 どうしてこうもお母様は私が欲しい言葉をくれるのだろうか。ゲームのサラがあれほどまでに尊敬し、激愛していたのも頷ける気がした。


 ――それは同時に、あの男の愛も認めることと同義と思うと、少し腹立たしいが。


「唯一、貴方を悪役令嬢に変えるとしたらあいつね。闇魔法持ちと分かった今、貴方の精神を操る可能性も否定はできない」


 そうだ。その線もある。たが、それなら何度も接触してきているのにどうして操らない?


 いや、既に操られている、とか? それなら、お母様が真っ先に気付きそうだが――


「もっとも、既に精神が大人で成熟している上に、貴方の魔力量なら、相当の技術と魔力がないと操ることは無理でしょう。戦った時の感じからして、せいぜい自分の視界内の人間に多少の影響を与える程度でしょうか。幻覚を見せるとか。――それだと、矛盾が生じるようなことも起こしていますが」


 奴は屋敷の人間の意識を奪い、あっさりと侵入していた。あんなこと、そう簡単にはできない。


「協力者とか……?」


「その線が高いわね。でもあれほどの闇魔法の使い手なんて、聞いたこともないわ。それに、あいつ自身も闇魔法を使えているし……そもそもそれほどの使い手なら、直接私を狙えるはず……」


 矛盾だらけで話が進まない。何か糸口を見つけないと、何もできない。


「……お母様、王立図書館へ参りましぇんか?」


「図書館へ?」


 自分の前世の記憶を頼りに、私はそう提案したのだった。

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