26話 謎は深まるばかり
「……1人で、と言ったはずだが」
「サラが私から離れようとしないので」
「……だ!」
本当にこれでいいのか、という不安を抱えつつ、お母様の足にしがみついて元気良く返事をした。
するとお父様はため息をつき、何かを悩んでいた。少しの間が空いた後、重い口を開いた。
「……仕方ないな。単刀直入に言うぞ。あいつは恐らくまだ生きている」
「といいますと……まさか……!」
誰とは言っていない。だが、お母様も私も一瞬で誰のことか分かった。あの男だ。私達を襲ってきた、私の叔父のことだ。
「捜索したが、どこにもいなかった。ルーシーの暴走状態の攻撃をまともに受けて、生きているとは思えんが……」
お父様の言動からして、私がわざと暴走したことも伏せて、ルーシーが起こしたことにしているのだろう。そして恐らく、ルーシーの謹慎の理由の建前の1つにもなっている。
しかし、あの攻撃を受けて生きている? 殺すつもりはなかったけど、あの攻撃をまともに食らったのだ。常人なら、ただでは済んでいない。少なくとも、しばらくはまともに動けるはずがない。その上、闇魔法では大した防御の術もないはずだ。
——仲間がいるのか?
「しかし……まさか、噂通りに闇魔法を習得していたとは……」
「普通ならあり得ませんわ」
「あいつは私と同じ水属性のはずだ」
2人がそうきっぱりと言った。やはり、私の考えは当たっていた。だが、そのあり得ないことが本当に起こっているのだ。
「属性が変わった……となると、その魂が変容したか別物にでもなっていないとおかしい」
「誰かが別人の魂を入れたとして……そんなのは闇属性の禁忌魔法しかあり得ませんわ。その上、禁忌魔法は高等技術で代償も大きい。代償もほとんどなく、その魔法を扱えるとしたら——」
「魔王しかいない。だが、まだ復活はしていないはずだ」
魔王が既に復活しているというのは、私の視点からしてもあり得ない。復活はゲームの本編中だった。
この世界が本編とはストーリーが違う世界でもない限りそれ以前に実は復活していた、なんてことはないはず。
「そもそも、その場合は肉体側の記憶も引き継ぐのでしょうか?」
「前例がないから何とも言えない」
私の場合、肉体が変わっても魂が同じだからだろう。記憶は引き継がれている。だが、その逆は不明だ。
勿論、その可能性はある。だが、魂が変わってもあいつの記憶があったとして、あそこまでお母様に執着するだろうか?
「魂の変容も聞いたことがないですわ」
「ああ。私も聞いたことがない……が、あくまでも仮定の話だ。もし魂が何かしらの要因で変化すれば、属性が変化する可能性はある。属性は肉体ではなく魂と結び付いている。肉体との相性もあるが——」
つまり、どう考えてもおかしいということだ。そして、私にも分からない。
「……」
沈黙が流れた。これ以上は推測のしようがない。
完全にお手上げである。




